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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1588/1885

第1578話、後退する同盟軍と、一つの決着


 帝都グラン・ディグラートルの戦いは、終局を迎えようとしていた。

 シーパング同盟軍は、表層において真・大帝国軍とクティノスを撃退しつつあった。


「は? 後退?」


 セア・ゲーカスタムを操るグレーニャ・ハルは、思いがけない通信に耳を疑った。


「どういうこと? ラスィア」


 戦艦『バルムンク』からの、帝都突入部隊への通信。ダークエルフのラスィアは告げた。


『クレバスの底に、敵の巨大兵器が出現したの。あと十分ほどで、自爆するみたいだから、突入部隊は攻略を中止し退避するように――というのがジン様からの通達』

「自爆……」


 グレーニャ・ハルは、僚機であるセア・ピュールEにハンドシグナルを送る。


「真・大帝国は占領されるくらいなら、死なば諸共、ということ?」

『それとは少し事情が異なるみたいだけれど、今はそれよりも退避優先』


 通信機の向こうのラスィアはきっぱりと告げた。


『仕切り直しになったとしても、友軍の被害を減らす方を優先。ジン様が対処しているから大丈夫と思いたいけれど、念のためね』

「今から間に合うのかしら?」


 帝都に展開しているシーパング同盟の魔人機、ASが順次、後退を始めている。展開した歩兵も、輸送ヘリによる緊急回収と離脱が行われている。


『ジン様が何もかも上手くやれば、退避は無駄になるかもしれない。でも、万が一には備えないといけない』

「それはそうね。――了解、こちらは退避する歩兵の援護をしつつ、後退するわ。通信終了」


 旗艦との連絡を切り、後退する味方を追いかけようとする勘違い野郎(敵機)を撃ち抜く。

 何もなければ無駄な撤退ではある。だが世の中、絶対ということはないし、ジン・アミウールにも不可能はある。


「それはそれとして――」


 グレーニャ・ハルはモニターの一部を拡大する。そこには禍々しさ悪魔のような機体同士が激しい戦闘を繰り広げている。

 ベルのブラックナイト・ベルゼビュートと、ガルダフトタイプ――ガルダフト・アルトール、ケルヴィス・ディグラートルの戦いだ。


「よくまあ、ああも禍々しいこと」


 高層ビルの一つが上層を切られて落ちていく。半ば飛行したり、都市に降りたりと忙しい。だが2機が通った場所には明らかに破壊が進んでいる。


「あれでは防衛も何もあったものじゃないわね」

『援護が必要そうですか?』


 セア・ピュールE――ペトラCが聞いてきた。ハルは口元を緩める。


「いえ、その必要はないでしょ」


 どう見ても、黒騎士のほうが押しているから。



  ・  ・  ・



 それはまさしく悪魔だった。

 ガルダフト・アルトールの速度に追従し、時に追い越して一撃を放つ。ブラックナイト・ベルゼビュートの動きは、魔神機などのそれを超えていた。

 ケルヴィスはそれを掻い潜り、または防ぐが、攻撃を仕掛けることができなくなりつつあった。

 はっきり言えば、追い詰められていた。


「何故だ……! 何故、勝てない!」


 ケルヴィスは、限界を感じていた。全身の疲労で、今にも意識が飛びそうだ。ガルダフト・アルトールは、ケルヴィスの魔力を吸い、その力を極限まで引き上げた。

 無敵の力を発揮するはずだった。


 だが、相手が悪かった。

 いつから生を受けたか記憶していないほど太古より存在する大魔王。人間のクローン如きでは、優れた才能を持っていようとも、相手ができるはずがなかったのだ。


『まあ、お前さんもよく頑張ったよ』


 ブラックナイト・ベルゼビュートが大剣を振り上げて迫る。ケルヴィスは迎撃しようとするが、すでに腕に力が入らなかった。

 極限まで性能を引き上げた結果、彼の魔力を危険領域まで吸い上げていたのだ。


「オレは、こんなところで――」


 大剣がガルダフトに斬りかかる。装甲も、ケルヴィスの魔力の低下に従い、落ちていた。その刃が機体に刺さる。


「オレは、ディグラートルだぞ!!!」


 偉大なる大皇帝のクローン。


「大帝国を、世界を統一する男に――」

『哀れだな、複製』


 大剣が、アルトールの胴体を分断した。


『そのイカれた願望を抱いて、あの世に逝け。この世で果たすには、お前は役不足だ』


 ブラックナイト・ベルゼビュートは飛び去る。真っ二つになったガルダフト・アルトールはやや遅れて、爆発四散した。

 研究者(おとな)たちの都合に振り回された人形の最期だった。



  ・  ・  ・



 魔法が効かない。じゃあ、魔法以外の艦砲なり兵器で破壊すればいい。

 問題は、シックスフッドの装甲が厚すぎて、攻撃が通らないことだ。


「この硬さは異常だな。こいつの装甲で、真・大帝国は軍艦を作るべきだったんだ」

『そんなことになっていたら、こちらが苦戦するではないか』


 ディーシーが抗議するように言った。


「もちろん皮肉だよ。本心は別さ」


 本当にこのシックスフッドの装甲で戦艦なり巡洋艦を作っていたら、かなりヤバいことになっていただろうな。


「それでディーシー。解析は終わったか?」

『大体は。例のクティノス・エリートどもが守っていた装置は、シックスフッドの胴体深くに格納された。これを破壊するのは、まずその強固な装甲を破らないとお話にならない』

「つまり、とっととやっつけろってことな」


 わかった。じゃあ『ぼくの考えた最強の兵器』ってやつを使おうじゃないか。俺は通信機のスイッチを入れた。


「グレーニャ・エル、エリー、ただちにクレバスから退避しろ」

『は? 逃げるのか、せんせ?』


 エルが声を荒らげる。誰が逃げるか。


「とっておきをぶつける。ここに味方がいると邪魔なんだよ。だから撤退」

『了解です!』

『りょーかい! 期待してんぜ、せんせ!』


 エリーとグレーニャ・エルの機が、一気にクレバスの外へと急上昇に転じる。ディーシーが問うてくる。


『で、どうするつもりなんだ、主よ?』

「まずは、『バルムンク』へ帰還する」


 ただし時間がないので、転移でな。と、モニターに赤いクティノス・エリートが迫ってくるのが見えた。

 そういえばまだ倒してなかったな、お前。


 でも相手をしている暇はないんだ。ということで、短距離転移で、戦艦『バルムンク』の艦載機格納庫前に瞬間移動した。

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