第1564話、そして魔神機は覚醒する
『何故だ!? 何故、当たらない!?』
ケルヴィスのガルダフト・アルトールの攻撃は、レオス・テルモンのドゥエル・ファウストBに当たらない。
魔神機同士の戦い。その能力は操者のポテンシャルも影響する。
『魂のこもらぬ攻撃など!』
近接格闘戦に秀でたドゥエル・ファウスト、その改良型は、中距離でも魔力のこもった拳が飛ぶ、その連打は目にも留まらない。
『魔弾拳! 多重激烈波ッ!!』
途端に、ケルヴィスは機体を防御させて、レオスの攻撃を凌ぐ。強化された腕部はシールド以上に堅強だが、それすら軋ませ、ガルダフト・アルトールを後方へと押し込む。
『旧型魔神機のはずなのに!』
『否! 魔神機に古いも新しいもない!』
スラスターを噴かして風のように、ガルダフト・アルトールに肉薄するドゥエル・ファウスト。その刹那の飛び蹴りに、ケルヴィスは間一髪防いだが、機体が飛ばされ、後ろのビルに激突する。
『魔神機の性能を引き出すのは己の力のみ。外見だけでなく、中身も鍛えねば、強くはなれん!』
『オレを見た目だけと言うかっ!』
ガルダフト・アルトールが飛んだ。マギアスラスターを全開に突撃をかける。
『オレは、クルフ・ディグラートルだ!』
『しょせんは紛い物であろう? 本物のクルフは……!』
アポリト魔法文明時代、十二騎士の同僚だったレオスである。ガルダフト・アルトールの突きを刹那で見切り、アッパーで突き上げる。
『私より強かったぞ!』
アポリト時代は、トップクラスの実力を持つとされた最強組織に名を連ねた。その実力、経験ともに、そこらの雑兵とはわけが違う。
『くそっ、くそおっー!』
『惨めだな、クルフを名乗る操者。……しょせんお前は偽者だということだ』
ドゥエル・ファウストは浮かび上がり、落ちてきたガルダフト・アルトールに渾身の一撃を叩き込んだ。
外装が剥がれかけ、激しく地面に激突するガルダフト・アルトール。
『偽者じゃない……! 偽者じゃない! オレは、偽者じゃない』
うわごとのように呟くケルヴィス。
『オレはクルフ・ディグラートルだ。まったく同じ遺伝子から作られたスーパーな存在なんだ……! 偽者じゃない』
ドクリ、と心臓がなった。自分とは違う何かがのしかかるような、掴み掛かってくるような感覚に、ケルヴィスは目を見開く。
『あぁ、ああ。これはお前か、ガルダフト……。大皇帝の血を求めているのか』
魔神機の精霊コアが力をくれと叫んでいるようだった。何故そう感じたかはわからない。だがこのガルダフトは、オリジナルが大皇帝クルフの専用機。それのコピーの改造機である。クルフ・ディグラートルの血に反応して、より強さを引き出そうとしているのかもしれない。
『いいぞ、ガルダフト。お前にオレの血を啜らせてやる……!』
血管を侵食されているように、何かがきている感覚。そして自分がガルダフト・アルトールになるかのような一体感に満たされていく。
『これか……。オレはようやく魔神機を動かすという境地に至った!』
爆発。その衝撃はガルダフト・アルトールを上空に吹き飛ばした。しかし損傷は、ケルヴィスの魔力ですぐにふさがった。操者の魔力で機体は再生する。これが魔神機の強さの一つ。
反転。彗星のようにガルダフト・アルトールは、ドゥエル・ファウストに向かった。
しかし、レオスはその動きを目で捉えていた。
『爆連撃!』
鞭のようにしなり、目視も難しいほどの連続で繰り出された腕。しかしガルダフト・アルトールはそれを掻い潜り、一撃を叩き込んだ。
今度吹き飛ばされたのは、ドゥエル・ファウストの方だった。その変化に、レオスは驚愕した。
『この速さ……! そして威力!』
ファウストのとっさの防御。その腕部がひび割れた。すぐに魔力を注ぎ込み再生するが、駆け抜けた腕の痛みに、レオスは顔をしかめた。
決して油断をしていたわけではない。窮鼠猫を噛む――そういったものでもないのがわかる。戦いの中で、一段、覚醒した。
死線をくぐると、一皮剥ける者がいる。生死の境に、悟りとも開眼ともいうべき、説明の難しいがそれまでと違う何かに目覚める時がある。
――この男も、そうなのか……!
レオスは警戒を強める。強者の勘が、敵――ガルダフト・アルトールの中身が一段大きくなったのを告げるのだ。
『ならば……! 次で決める!』
向かってくるガルダフト・アルトール。ドゥエル・ファウストは腕の爪を展開。それを回転させた。
『螺旋拳! 砕け!』
ファウストの猛回転する腕は、ガルダフト・アルトールの突き出された拳を砕き、その腕をごっそり破壊し、右胴体の一部を削った。
『仕留め損なったか!』
だが一撃は、胴体のコクピットも近い。もしかしたら操者にも傷を負わせた可能性があった。
『そんなものか……』
ゾクリ、とレオスは背筋が凍った。相手の操者――ケルヴィスの声に凄みが増していた。これはとても負傷した者の声ではない。完全に仕留め損なった。
ガルダフト・アルトールの損傷が、見る間に再生する。いかに魔神機といえど、再生が速すぎた。
だがそれだけでなく、新しい腕部は、一回り太くなった。禍々しい悪魔――ベルさんのブラックナイト・ベルゼビュートの腕のように。
『これが、力だ!』
『!?』
ガルダフト・アルトールの剛腕。目と鼻の先。瞬時に構えを取れたのは、レオスの超反応ゆえ。
両腕が砕けた。防御したそれは、ドゥエル・ファウストの装甲もろとも粉砕してしまったのだ。
ただのパンチだったはずだ。その威力は目を見張るレオス。次の瞬間、ガルダフト・アルトールの蹴りが、無防備なドゥエル・ファウストを吹き飛ばした。
ケルヴィスは歓喜する。
『素晴らしい。これが力! 圧倒的な力!』
気分が良くなったのも束の間、寒々とした、だが別の力を感じた。
『少しは楽しめそうだ……』
漆黒の悪魔が降りてきた。いや、それはシーパング同盟の魔神機。悪魔のようなフォルムは、一度ケルヴィスは戦っている。
『お前は……!』
『久しぶりだな。お前、あの時の小僧か』
ブラックナイト・ベルゼビュートが降臨した。
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