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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1572/1886

第1562話、Fの襲来


「大将閣下! 本気なのですか!?」


 帝都北方、トコル地下拠点の所長であるガララン大佐は、統合作戦司令部からの連絡に声を張り上げた。


「F兵器は未完成な代物です! 大体、ジャナッハ様とは連絡が取れず、まだ調整が完璧にできておりません!」

『それは昨日聞いたわ』


 通信機の向こうで、エラ・キャハ大将は言った。


『そちらからでも確認しているでしょう? もはや帝都内に敵が踏み込んできている状況よ! 神聖なる大皇帝陛下の町に、敵が! 手段を選べる段階ではないわ!』

「しかし! 無理に投入すれば、味方も襲われますよ!?」

『それは些細な問題に過ぎない。そもそも帝都の空にいるのは、同盟軍の艦隊。味方より先に敵に襲いかかれば問題ないわ』


 エラ・キャハは言い切る。


『味方を襲うくらい、敵を叩きのめす兵器ならばなおのこと歓迎だわ。いい? F兵器を過信しないことよ。どうせあなたちが心配する事態は起きないし、その前に全部やられるわ。わかったら、F兵器、全部出しなさい! これは命令よ!』

「承知しました」


 ガララン大佐は、渋々了承した。通信機からエラ・キャハの声は続く。


『こちらは使えるものは全部出した。私も出るわ。後がない。これは決戦なのよ! トコル基地も、F兵器を出した後、戦闘部隊を編成、帝都へ増援として来ること! 以上、統合作戦司令部からの命令!』 


 通話は切れた。

 ガラランは深々と息を吐き出し、呼吸を整える。末期だな、と思った。真・大帝国もいよいよ終わりか。


「F兵器をすべて出せ。基地から出した後は、南下させつつ戦闘モードで帝都に向かわせろ」


 命令は実行される。副司令であるロックフェリー中佐は問うた。


「……よろしいのですか? 誘導くらいしか制御できない状態での戦場への投入は――」

「統合作戦司令部からの命令だ。どうせ敵にぶつかったら、やられるだろうから心配無用とのことだ」


 ガラランは憮然とした調子で言う。


「ミサイル兵器よりは多少マシという扱いなんだろう」

「注ぎ込まれた研究予算と維持費がべらぼうに高いのに、使い捨て同然の扱いとは……」


 副司令が呆れを露わにするが、ガラランは咎めなかった。


「それだけ追い詰められているということだ。エラ・キャハ大将自ら出撃しなければならないほど切迫しているとさ。……Fを出し終わったら、こちらからも帝都に増援を送れと言ってきた」

「間に合いますからね、今更。Fならともかく、そんな切迫している状態なら、基地からの部隊が到着する前に、戦いは終わってしまうのでは」

「ふん。わしからすれば、そもそもこの基地の戦力のほうが怪しいがな」


 警備中隊と作業員、研究員ばかり。魔人機が数機あるが、それが何の足しになるというのか。まだF兵器の方が有効に、敵に被害を与えられるだろう。


「とにかく、命令とあれば遂行するのが軍人だ。たとえ手遅れ感があっても、やれと言われたらやるしかない」


 かくて、トコル地下拠点の地上大型のゲートが開き、F兵器――超巨大飛竜が次々に飛び出した。

 翼の端から端まで百メートルを超えるその巨体。大陸西方諸国に伝わる伝説級の化け物――フォルミードーが集団で飛び上がった。



  ・  ・  ・



「フォルミードー?」


 戦艦『バルムンク』の艦橋にいた俺は、その知らせに眉をひそめた。


『第102警戒中隊より、帝都北方より飛来する超巨大飛竜を10体、確認』


 シェイプシフター通信兵が報告した。

 まったく、ジャナッハ・クローンが得意げに語っていたっけ。ただ怪獣より複雑な制御装置が必要で、かつ調整中とも言っていた。

 クローンたちを葬ったから、調整する者がいなくなって出てこないと思ったが、どこかの真面目野郎が完成させて投入したか、帝都の危機に未完成のまま投入したか……。


「この期に及んで面倒の種を増やしてくれたもんだ」


 前回、野生のフォルミードーをやっつけた時は、まだ航空艦隊もなく、戦闘機だけで相手したが、まあ手こずったよな。航空機搭載のミサイルでは、表面を軽く抉る程度しかできないほど硬かった。

 今では、それらミサイルにしても威力も上がっているし、高性能な兵器がある。前よりは御しやすい……といいなぁ。


「迎撃指示。第七艦隊から、戦艦を回せ」

『了解』


 SS通信兵は、早速俺からの指示を第七艦隊――シーパング本国艦隊に伝える。

 するとアイオワ級――ドレッドノートⅡ改戦艦の『ウィスコンシン』『ニュージャージー』が戦列を離れ、北方へと艦首を向けた。

 こっちでも保険を用意しておくか。俺は自分の分身体を作る。


「というわけで、備えておいてくれ」

「了解」


 作った分身君は、手をヒラヒラさせて、エレベーターへ移動した。その格好はパイロットスーツ姿。要するに本体は、今のところ艦橋にいるってことで。


 さて、飛来する超巨大飛行物体であるフォルミードー10体は、着実に帝都へ向かっている。

 現在、俺たちシーパング同盟軍は、半包囲の形で展開しているが、普通に考えれば、フォルミードーは、こちらの航空艦隊に手を出してくる。


 迎撃戦力を整えつつ、まずは先制だ。ジャナッハ・クローンの話では、フォルミードーはクローンであり、新たな能力を獲得したわけではない。


『ウィスコンシン』『ニュージャージー』が、帝都に近づきつつある飛竜の集団めがけて、魔導放射砲を発射した。

 バニシング・レイは、オリジナル・フォルミードーにトドメを刺した。その猛烈なる怒りは、複数のフォルミードーを飲み込み――


「……まあ、避けるよな」


 数体のフォルミードーが上昇や下降で、極大魔法の光、その射線から逃れた。


『フォルミードー四体消滅。一体、墜落中』


 戦術モニターに映し出されているそれを、シェイプシフターオペレーターが報告した。俺も見ていたけどね。


「落ちた奴も撃墜でいいだろう」


 何せ体半分が蒸発しちゃっているからね。ありゃあ死んだだろう。生きていたとしても、二度と飛べないから、帝都にも来れない。


「あと半分か」


 長距離からの先制で、半分を撃破。残り半分。『ウィスコンシン』『ニュージャージー』と、その周りの巡洋艦がプラズマカノンによる砲撃と、対艦ミサイル攻撃を開始する。バニシング・レイほどではないが、オリジナルを墜落させたミサイルより威力は高い。

 どこまで耐えるか?

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