表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1554/1886

第1544話、爆弾という置き土産を配る


 ドラゴン型怪獣は、非常にタフだった。

 俺のタイラントSとクルフのガルタフト・ドルンで、色々試してはいるが、実にしぶとい奴だ。さすが、ワームヘッドモンスターの細胞を移植されているだけのことはある。


「これで動きが早ければな……」

『気のせいですかね』


 クルフの声が通信機から入る。


『こいつ、少し動きがよくなっていませんか?』

「操縦されている感はなくなったな」


 これまでは何者か――ジャナッハとかノイマンだろうが――に操作されていた怪獣だが、挙動が自然になった気がする。反応がよくなっている。自分で考えて行動している感じだ。


「野生を取り戻したかな?」

『それでも、鈍いことには変わらないんですがね』


 タイラントSやガルタフト・ドルンの動きには、ついてこれていない。


「大方、ベルさんが――」

『おう、呼んだか?』


 ベルさんからの通信が届く。


『こっちは始末を終えた。施設内は全滅させたぞ』


 じゃあ、ジャナッハとノイマン博士も……聞くまでもないか。残っているなら、そう言うだろうし。


『あれ、そっちは終わってねぇの?』

「怪獣が元気でね」

『じゃ、こっちで止めるぜ。感謝しろよ』


 ドラゴン型怪獣が動きを止めた。躾けられた犬みたいに大人しくなる。


『実に従順ですね』

「制御装置があるんだ。それを押さえられたらこんなものだよ」


 致命的な欠点。それはこの怪獣が制御ができること。パイロットが乗り込むわけではなく、遠隔操縦だから、そこをやられたら、おしまいである。


「で、もう本当にジャナッハ・クローンは残っていない?」

『この施設にはいないぜ』


 と、ベルさん。


『もうすでに逃げているならともかく、そうでなければ全滅だろ』


 それはそう。ただそれについては、今すぐどうこう判断は難しい。すでにクローンが逃げられていたら、ここで見つけられるのは痕跡だけだろうし。後はシェイプシフター諜報部が他の施設を含めて調査するしかないだろう。

 ジャナッハがあれで用心深く、自分のコピーを作っていた。保険の保険とか、かけてそうだよな。


「ここでの目的は達成した」


 確認されたジャナッハ・クローンの始末は完了だ。今できることはやった。


「この研究所にあって、使えそうなものは接収したら、帰るか」


 帝都決戦における危険要素は排除できた。すでに軍に納入された分は仕方ないにしろ、俺たちがぶっ潰した分は、決戦には参加できない。それだけでも戦果と言える。



  ・  ・  ・



 ジャナッハ・クローンの秘密研究所の調査と処理を済ませた。転移魔法陣で、帝都の魔導研究所へ戻る方法も見つけたので、所長オフィスへと戻る。……まあ、俺たちは転移できるから、方法が見つからなくても帰れたけど。


「とりあえず、研究所にダメージを与えておく」


 魔法軍開発団の本丸が吹き飛べば、真・大帝国兵に衝撃を与えられるだろう。決戦前にその士気を挫く。

 末端の青エルフ・クローンたちは動揺しないだろうが、彼らを操っている将校らには、頼みのジャナッハがいないだけで、大なり小なりショックだろうな。


「具体的にはどうやるんだ?」


 ベルさんが質問した。


「研究員を皆殺しにするのか?」

「時限爆弾を使って、施設を吹き飛ばす」


 オーソドックスではある。定番中の定番だ。魔導研究所に爆弾を仕掛けて、時間がくればドカーンだ。


「ここで暴れると、外部からどんどん増援が来て、こっちが身動きとれなくなるからな」


 ここは真・大帝国の帝都だってことを忘れてはいけない。この国が誇る魔導研究所が襲撃を受けたとなれば、帝都中の兵士が集まってくるんじゃないだろうか。


「さすがに帝都中はないだろう。なあ、クルフ」

「ええ、さすがに帝都中は盛りすぎです」


 クルフは澄ました顔で言うのだ。


「他にも守らねばならない施設も多いですし」


 真面目か。その辺りは雰囲気で察してくれよ。ベルさんがニヤリとした。


「ここで暴れて敵が集まってくるって言うなら、そこをまとめて一網打尽にする手もあるぜ?」

「ベルさん……。さすがに一網打尽は盛りすぎだ」

「ええ、全兵士が集まるわけではないので、一網打尽は無理ですよ」

「真面目か! 言葉のあやだよ」


 言いたいことはわかるけどね。敵を集めてまとめてやっつけるのは、シーパング同盟軍の十八番だからな。


 ストレージからタイマー付き爆弾を取り出す。研究所の見取り図を思い出し、効率的に仕掛ける。

 ベルさんに言わせれば、研究員もろとも始末したいんだろうけど、研究所施設が使えないだけで決戦までの猶予を考えれば、施設メインの破壊で充分だ。


 これは真・大帝国上層部を動揺させられればいいわけで、帝都決戦の際に研究員たちがその開発品を利用できなければよい。


 真・大帝国親衛軍の将校らしく振る舞い、研究員たちを観察しながら、俺たちは爆弾を仕掛けていった。ベルさんとクルフは上手くやっているかな?


 初見見つけにくい場所に、爆弾を取り付ける。さすがに起爆前に見つかって、解体されても困る。

 研究員は二の次ではあったが、タイミングによってはガッツリ巻き込まれるんだよな。何も知らず、シーパング同盟軍を殺す兵器の開発に没頭している。……うん、やられる前にやれだこれは。

 一通り設置が終わると、俺たちはエレベーターホールで集合した。


「首尾は?」

「問題ない」

「何もかも順調ですよ」


 頼もしいお言葉。では、我々はドロンさせてもらおう。エレベーターに乗り、魔導研究所から上層へ移動。――と見せかけて、エレベーター内で転移して、外に出た。


 もう少し帝都観光をしていきたい気持ちもあるが、研究所で爆弾が爆発すれば、帝都も厳戒態勢に入ることだろう。観光どころではなくなるから、逃げるが勝ちだ。

英雄魔術師@コミック、第8巻2月15日発売! ご予約よろしくです!

1~7巻、発売中! コロナEXなどでも連載中。どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ