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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1454/1886

第1444話、大帝国の空、シーパング島の空


 ディグラートル・ライン防壁、その裏側をシーパング同盟の魔人機部隊が突っ走る。


 即席の塹壕陣地を作った真・大帝国守備隊。魔人機エアナルのソードライフルが、魔弾を放つが、魔人機の防御障壁は抜けない。


 それならばと障壁貫通できる銃剣や、その他近接武器を振りかざし挑むのだが、障壁貫通弾を使用するシーパング同盟魔人機に、格闘戦を挑む直前を狙い撃たれて倒されてしまう。


 もっとも、大帝国軍も負けてばかりではない。障壁貫通武器である槍を投げやりよろしく発射し、中距離でシーパング機を貫通撃破したりした。


 鋼鉄の機械歩兵同士の戦い――だけでは済まなかった。

 上空をシズネ級ミサイル艇改装のガンシップが通過し、防壁上にいる大帝国軍に向けて、地上掃射をかけた。障壁貫通弾の直撃で、エアナルが四散し、30ミリ機関砲の雨が、帝国兵をミンチに変える。


 空陸立体攻撃は、真・大帝国守備隊を追い詰めていく。

 そしてその攻防の果て、シーパング同盟軍は、南部ディグラートル・ライン防壁を完全に制圧することに成功した。


 まずは玄関をこじ開けた。ここから真・大帝国領内を帝都目指して、進撃していくのだ。


 俺は戦況を確認し、準備していたジャガーノートⅡ級陸上艦を投入した。

 陸上を浮遊装置で、微妙に浮きながら進む陸上の動く城。強固な装甲と防御装備を持つこれら陸上艦は、地上を行く軍の周りを囲み、敵の魔器などの超兵器などから味方を守る。

 敵の生半可な攻撃を許さず、味方への損害を極力減らし進軍する防壁である。

 陸上艦、そして空中行く航空艦で、守りは鉄壁。これら艦艇群に守られながら、シーパング同盟陸上部隊は進む。


「絶景かな、絶景かな」


 ベルさんは陸上艦が複数、陣形を保ち進撃するさまを見て、楽しそうだった。


「これを見たら、攻め手が思いつかねえな。真・大帝国連中もこれには苦労するんじゃねえかね」

「だといいんだけどな」


 手こずってくれなければ、作った意味がない。


「こっちは、ゆっくり帝都方面に進撃だ」


 真・大帝国軍を野戦に引きずり出す。町に隠るなら、帝都以外は無視する。基本方針に変更なし!

 問題は、その真・大帝国軍がどう反応するか、なんだよな。


 一応、彼らにもドーム型移動砲台という陸上兵器がある。こいつは、ジャガノートⅡ型の前の陸上駆逐艦を大破させるだけの火力を持っていた。

 当時のままの性能なら、ジャガノートⅡ型でも御せるんだけどねぇ……。敵もズィーゲンでやった時のことがあって、より強力な陸上兵器を開発しててもおかしくないんだよな。



  ・  ・  ・



 シーパング島にそびえる巨大な世界樹。それを見上げていたノルイは、次の瞬間、ポンと頭に何かが当たった。


「うあ――」

「私の講義は、退屈?」


 でかいお胸が目の前にあり、視線を上げれば、魔術教官であるユナ・ヴェンダートの表情に乏しい顔がそこにあった。


「すみません、教官」


 周りからクスクスと小さな笑いの声が上がる。ノルイは肩をすくめた。


 ここは、シーパング本島にあるアポリトソフォス学校。シーパング島に住む子供たちや、シーパング同盟に属する国からの留学生などを受け入れている学校である。


 ジン・アミウールに出会い、ウィリディス軍に保護されたノルイも、シーパング島に住み、学校に通わせてもらっている。


 ユナ・ヴェンダートは、以前はヴェリラルド王国で高等魔法科の教官を務めていた。しかしジン・アミウールに弟子入りし、最近では魔術と古代文明技術の研究に励んでいるという。そして時々、学校の魔法科授業の非常勤講師としてやってくるのである。


「――本日の講義はここまで。それでは皆さん、私が暇だったら一ヶ月後に」


 終業のチャイムと共に、ユナ教官はそそくさと離れようとするが――


「ユナ教官! お待ちになって!」

「質問よろしいでしょうかー!」


 生徒たちが席を離れて、彼女を取り囲もうとする。ユナは足早に立ち去る――ことができず、振り向いた。


「はい、姫様方――」


 ヴェリラルド王国のフィレイユ姫、そしてリヴィエル王国のアヴリル姫が、ユナの足を止めさせると、早速魔法の話を切り出した。


 この同盟国のお姫様方は、シーパング島に留学していて、ジン・アミウールのポータルを使って自国とシーパング島を行き来しているという。そしてこのアポリトソフォス学校に在籍し、シーパングの知識、数学、科学、魔術など多岐に渡って学んでいる。


 特に二人は魔術に深い関心があるようで、ユナが教鞭を取る時は必ず授業に参加する。なにせユナ・ヴェンダートは、ジンの弟子であり、彼の教えを受け、さらに実戦の経験も豊富な生きた教材だからだ。


 ノルイは、教科書を片付けて、魔法科授業の教室より出ようとする。するとアヴリル姫から声をかけられた。


「ノルイー。悪いけれど、兄様に、帰りはフィレイユ様と一緒に帰ると、伝えていただけますかしら?」

「わかりました」


 伝言を預かり、ノルイは教室を後にする。あの分では、ユナ教官はまた1、2時間は二人の姫に拘束されるに違いない。今の授業が本日最後なので、他の授業がー、ということもない。荷物をまとめて帰る。


 まだ編入して日が浅いが、この学校の空気はノルイは気に入っている。色々なところから来た者たちばかりで、根っからのシーパング島の住民なんていないから、新参者に取り立てて驚いたり珍しがったりはしないのだ。


 大帝国にいた頃も、ほとんど施設暮らしで、学校みたいなものだったから、戸惑いも少なかったのもある。


 ――いや、ここの生徒は、僕らの施設と違って、皆楽しそうだ。


 皆、勉強する意欲に満ちていて、ここまでやる気がある生徒というのは施設にはいなかった。やらなきゃいけない、ではなく、やりたい、というのがヒシヒシと伝わるのだ。


 午後の授業が終われば、後は帰宅するだけ。ノルイは校庭近くの駐車場に視線を走らせれば――


「いたいた――ガニアンさん!」

「やあ、ノルイ君」


 アヴリル姫のお兄さんで、今は王族ではないガニアン元王子が、自家用の魔法車に寄りかかり、読書をしていた。お世話になっているレウ兄さんから紹介され、今では友人のような関係である。


「アヴリルからの伝言かい?」

「まあ、そんなところです」

「そうか。……家まで送るよ。それとも図書館に行くかい?」


 ガニアンは、今日がユナ・ヴェンダートの講義日であることを知っているのだ。授業の終わりを見計らって妹を迎えに来るのが、彼の日課になっている。

 そしてノルイにとっても、午後の暇な時間は、図書館に通っていたりする。


 ガニアンの運転する魔法車の助手席にノルイは乗った。平和な島だった。ジン・アミウールが作った島。迫害されたり追放された人や亜人、エルフなどがいて、争いごともない島だ。走る魔法車から、流れゆく景色を眺め、ノルイは思う。


 ――ケルヴィスたちは、今なにをしているんだろう。


 この空の先、そのどこかに、同じ施設で育ったクローンたちはいる。

 今、シーパング同盟が、真・大帝国に攻め込んでいるという。彼らは、戦っているのだろうか……?

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