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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第1436話、転移ミサイルと潜伏ミサイル


 それは突然、現れた。

 本国防衛旗艦『ネアヴニィー』の索敵士官が叫ぶ。


「魔力反応、複数、いや多数出現!」

「敵か!?」


 シーパング同盟は、転移魔法による艦隊移動もやってくる。航空機を発進させる前に艦隊ごと乗り込んできたか。


「いえ、反応は多いですが、艦艇ではありません。もっと小さい……航空機、いやミサイル!」

「何だと!?」


 突然送り込まれたのは、多数のミサイルだった。それらは真・大帝国本国艦隊の至近距離に現れ、襲いかかってきた。


「対空戦闘! 対空銃座、迎撃せよ!」


 艦長が叫び、ゲアルヘーム大将の命令が、旗艦『ネアヴニィー』から艦隊各艦に発令された。

 しかし、その時にはすでに敵ミサイルは艦隊に突っ込み、手近な艦艇に激突、爆発した。


『駆逐艦「ヤーコブ」轟沈!』

『巡洋艦「ヨーゲンバーグ」被弾、炎上中!』

「提督、敵のミサイル兵器は、結界水晶防御を貫通してきています!」


 一撃で艦隊を殲滅しかねない掃射魔法に対しては阻止できる結界水晶防御が、対策された武器には意味をなさない。


『第二波ミサイル接近!』


 転移によって次々にミサイルが送り込まれてくる。ゲアルヘームは眉をひそめた。


「どういうことだ? どうしてこんな矢継ぎ早に攻撃が飛んでくる!?」


 攻撃はおそらくシーパング同盟だろう。ジン・アミウールは転移魔法を使い、艦隊をも転移させる。だがこの規模の転移は、そうそう連続して使用できないはずだ。消費する魔力もそうだが、回数を分けて連続して転移させ続ける操作も難しいはずなのだ。

 そもそも高速飛翔しているミサイルをその都度転移するなど、人間が反応できるのだろうか?



  ・  ・  ・



「いやはや、転移装置って便利だよね」


 俺は旗艦『バルムンク』にいて、艦隊のヴァーグ級ミサイルクルーザーや球磨型重雷装巡洋艦などのミサイル担当艦艇が、次々にミサイルを転移させていくのを眺めていた。


 今回は、俺、転移させていないからね。


 種明かしはこうだ。

 真・大帝国軍の基地であるテメラリオ駐屯地から奪った転送装置――ノベルシオン軍を王都に送ったあれだ。これを幾つかのウィリディス艦艇に装備させた。転送距離については、試し撃ちでその範囲を計測し、ある程度割り出せるようになっていたから、発射したミサイルを転送ビームの範囲に撃ち込み、特定座標に放り込んだのだ。


 結果、敵がこちらを捕捉できる遥か遠距離から、一方的にミサイルを放っているわけだ。

 真・大帝国艦隊は、転移してくるミサイル相手に対空戦闘を展開して、空母や戦艦の防空をやりながら、時に無駄な回避運動をとったりしている。


「どんなものかな?」


 俺が尋ねると、ラスィアはコンソールに向いたまま答えた。


「敵空母は3、いえ4隻を撃沈破していますね。ですが、より前にいる戦艦や護衛艦に吸い込まれている感じです」

「実際、出たとこ勝負みたいなものだからな」


 ミサイルを転移させた後、センサーが捉えた艦に誘導、突っ込むようになっている。放った直後は、まだノーロックだから、転移先でまず『目に入った』奴を狙うのだ。

 それが空母ならいいのだが、戦艦や巡洋艦だった場合、そのまま突っ込んでしまう。


「ある程度、転移座標は操作できるとはいえ、まだ正確に狙いたい奴を狙えないな」

「今後の課題ですね」

「まあ、次があればな」


 レイヴン偵察戦闘機隊が、ステルス状態で敵艦隊を監視。俺たちにその配置や戦果をリアルタイムで送ってくれている。これを見ていると、こっちから標的を指定できたら確実なのに、と思う。


「じゃ、そろそろ仕上げにかかろうか。シャドウフリート潜空艦隊、襲撃開始。目標、敵空母!」



  ・  ・  ・



 この時、真・大帝国本国艦隊の右舷後方に、シーパング同盟の別動隊が潜んでいた。


 超戦艦『レーヴァテイン』と、ステルス艦に改装された彼の艦隊。シャドウフリートのオーシャン級ステルスフリゲートや、ヴォーテクス級ステルスクルーザーに率いられた暁級ステルスエスコートが、じっと息を殺し見張っていたのだ。


『バルムンクより攻撃開始の合図です!』

「ようし、全艦へ。敵空母へミサイル攻撃開始! ケツを吹っ飛ばせ!」


 レイヴン偵察戦闘機からの中継で指令を受けた魔王ベルに率いられた艦隊が、ステルス状態で行動を開始した。

 放たれる対艦大型ミサイル。これらは正面からのミサイル攻撃に気をとられている真・大帝国艦隊の後方に襲いかかった。


 その一斉攻撃に、敵ファラガ空母が艦尾にミサイルを突っ込まれて爆発した。全長272メートルの大型空母は、搭載する艦載機を道連れに炎に包まれ、誘爆しながら落ちていく。

 十数隻を撃沈。残り半分。


「第二撃、用意。残る空母を一掃だっ!」


 まだ敵は反応していない。空母がいきなり半減し、報告を受けて困惑している頃だろう。この機を逃がさない。


『次弾、準備よし!』

『照準よーし!』

「撃てぇい!」


 残る空母17隻の後ろへするすると伸びていく対艦大型ミサイル。何隻からの対空機銃が反応し、弾幕を張ろうとしたが、もう遅かった。

 容赦なくファラガ級空母に攻撃が命中。乗員である青エルフクローン兵を爆炎に包まれ、艦全体を焼いていく。


「これで、ジンが警戒していた自爆体当たりはできないぞっと」


 抱えていた艦載機の大半が、出撃することなく破壊された。


「目標撃破! ズラかるぞ!」


 長居は無用。『レーヴァテイン』率いるステルス艦隊は、空母喪失で狼狽えているだろう敵の隙をついて離脱行動にかかる。


 超戦艦『レーヴァテイン』はともかく、オーシャン級や暁級は見つかって攻撃されたら強くない。撃ったら離脱する、隠れるなどして、同じ場所に留まらないのがセオリーなのだ。

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