第1341話、集う旧友
シーパング上陸部隊が、鉄血親衛隊のリダラ・リュコスを相手に奮闘している頃、中央塔内部に侵入したウィリディス特殊部隊ソニックセイバーズは、大要塞内の司令部兼制御室を目指していた。
リアナ・フォスター少佐率いる4機のASソードブレイカーは、アンバンサーの防衛兵器をスクラップに変えつつ、なお前進を続けている。
闇に溶け込む漆黒のアーマードソルジャー。その細身で攻撃的なフォルムの機体は、脚部のマギアスラスターで高速移動する。
そして曲がり角に差し掛かる。
「ライザ」
リアナが指示をすると、二番機のライザが前に出た。前腕部に装備したマギアビームシールドを展開して、角に滑り込む。
オレンジ色の光弾が連続して飛んできた。角でアンバンサーの浮遊ビットが待ち構えていたのだ。
しかし攻撃は、すべてライザ機のシールドで防がれる。その後ろから三番機のリサが飛び出し、腕部に仕込まれているレーザーガトリングを連射、浮遊ビットを瞬く間に撃墜した。
『クリア』
通路の敵を一掃したのを確認。リアナ機がサブマシンガンを手に前進し、後続も続く。
特殊部隊員上がりのリアナと、それに鍛えられたシェイプシフター・エリートたちは、障害を排除しつつ、進撃を続けた。
しかし、全高5、6メートルのASで進むのは不可能な領域に到達する。スケルトンをのような姿の敵兵が光弾を撃ってきたが、ソードブレイカーは対人用の12.7ミリ機銃で掃射する。
「ここからは機体を置いて、ライトスーツで行動する」
『了解』
軽量型パワードスーツ、スーツ型の装甲服というべきライトスーツを纏い、リアナたちは、ソードブレイカーから降りた。
特撮ヒーローサイズの軽量バトルスーツは、人間サイズなので、司令部までの通路も余裕で侵入できる。それぞれサブマシンガンとハンドガン、爆弾などを携帯し、特殊部隊員+シェイプシフター・エリートは通路へと飛び込んだ。
ジンから提供されたマップデータを頭を守るヘルメットのフェイスガードの端に表示しつつ、リアナはリサとライザを交互に先導させて、制御室を目指した。
出てくるスケルトン兵は、機械人形だった。転送されたデータにも記載があったが、生身の異星人は本当にいないらしい。
・ ・ ・
「おいおい、ようやく戻ってみれば、すっげぇのがいんじゃん!」
グレーニャ・エルは、修理されたセア・エーアール・カスタムを駆って、アンバンサー大要塞内に突入していた。
シーパング同盟の上陸部隊が、少数ながらリダラ・リュコスに苦戦しているのを見やり、ニヤリとした。
「仕方ねえなぁ、手ぇ貸してやんよ!」
瞬時に加速する風の魔神機。そのGに思わず体が悲鳴を上げるが、すぐに魔神機内の補整機能が働く。これがなければ、風の魔神機を生身の人間がフルに動かすことはできない。かかるGでパイロットを殺す機体となっていただろう。
翼を生やした悪魔のようなシルエットのリダラ・リュコスが、エーアールに気づいた。
「おいおい、あたしを前に棒立ちかよ!」
エルは吼える。ソニックブレードを抜剣。するとリダラ・リュコスは弾かれたように回避機動を取った。
反応が遅れたのは、鉄血親衛隊のエーアールE――グレーニャ・エルのコピーであるエルCと誤認したせいだった。
刹那の反応。しかし――
「遅いんだよ! 今さら逃げたってなァ!」
風の魔神機は、漆黒の悪魔の片腕を両断した。――訂正。胴体を真っ二つにするつもりだったのに、敵は片腕を盾に本体への攻撃を避けた。
クローアームがセア・エーアールカスタムの横腹を裂こうと迫る。このコンマ数秒の間に反撃までするとは、敵のパイロットもやる。
「だが――!」
急速逆進。凄まじい逆加速が、リダラ・リュコスの反撃を躱した。瞬間、グレーニャ・エルは意識が飛びかけた。だが再び進行方向を反転、敵魔人機に肉薄し、ソニックブレードで今度こそ両断した。
「まったく手こずらせやがって……!」
応急手当は応急手当だったのを、体で思い知らされるグレーニャ・エル。傷は治ったはずだが、どうにも体調的には絶不調に感じる。
新たなリダラ・リュコスが向かってくる。2機!
魔法砲を撃ってくるので、回避しつつエアビットを展開。
「行け!」
刃を煌めかせて飛ぶ攻撃端末だが、リダラ・リュコスはそれらを巧みにクローアームで切り裂き、撃墜した。
「こいつらァ!」
恐ろしく腕のいい奴らだ。セア・エーアールカスタムは、両肩のエアリアルバスターを放つ。1機は突然の竜巻を回避したが、もう1機は掠めたようでバランスを崩した。こいつにトドメを刺したいが、おそらく別の1機がそれを許さないだろう。
『ならば、片方は俺が引き受けよう、グレーニャ・エル』
「レオスか!?」
聞き覚えのある声に、エルは驚く。
ドゥエル・ファウストBが飛び込んできて、リダラ・リュコスの1機をさっそく引き受ける。
「おいおい、久しぶりじゃあねえの、レオスよ。大帝国のほうはいいのかい?」
『敵味方識別では、味方になっているはずだが……おかしいな』
その言葉に、グレーニャ・エルは索敵装置の識別表示を一瞥する。味方機を表すブルーになっていた。
「本当だ」
迫ってきたリダラ・リュコスの爪を躱し、ソニックブレードを叩きつける。
「いつ寝返ったんだよ、レオス!」
『元上司が熱心に勧誘してくれたからな。今のクルフよりも、こちらのほうが性に合っていると思ったのでな』
「わかる。最高だよな、先生はさっ!」
1対1なら負けない。グレーニャ・エルは、目の前のリダラ・リュコスを仕留める。レオスもまた、敵機を撃破している。
「そんじゃま、ここらの手練れどもを蹴散らしてやろうぜ!」
『応!』
元アポリトの魔神機乗り同士、かつての敵吸血鬼軍の魔人機と戦う。だが、突然、高速の実弾が迫り、2機は回避した。
「新手か……!?」
『風の魔神機とは、また懐かしいものを使うのね』
通信機から聞こえた女の声。グレーニャ・エルは耳を疑った。
「……はあ?」
嘘だろ、と思った。
「姉貴の声……?」
『あら、その様子からすると、エルなのね。本物の』
聞こえてきた声――グレーニャ・エルの双子の姉、グレーニャ・ハル。スティグメ帝国鉄血親衛隊の長官となった古参吸血鬼だった。
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