第1335話、無敵の装甲にも抜け道はある
大将同士の決闘と洒落込みたいが、3人というのはどうもまとまりが悪い。
俺はタイラントSを操り、クルフ・ディグラートルのスーパーロボット『ジェイルー』と剣を交える。
……何故、名前を知っているかって? クルフの奴がそう言ったからだ。
同時に――
『このセア・ウラノスから逃げられないわよ!』
スティグメも自身の女神型鬼神機の名前をスピーカーで名乗ってくれる。と、そんなのんびりとはしていられないがな!
ビット兵器を展開するセア・ウラノス。それが俺と、ディグラートルのジェイルーを同時に攻撃してくる。
俺は機体を素早く後退させ、ジェイルーは、フライングカッターを射出して、ビットの迎撃を行う。
このまま二機で潰し合えば……なんて期待したが、セア・ウラノスは、俺のタイラントの方へ光刃を光らせて突っ込んできた。
目の敵にしてくれちゃってまあ。
腰部マルチウェポン変換――ワイヤーショットクロー射出! タイラントの腰部アーマーが魔力変形し、爪付きのワイヤーが左右一本ずつ放たれる。魔神機系の障壁も貫通するぞ!
セア・ウラノスは、両腕固定の光刃でワイヤークローを弾いた。ブァイナ装甲だから、直撃を食らってもノーダメのはずなんだけど、やっぱり絡まって制限されるのを嫌がったんだろうな。
その隙は逃がさない!
Tトライブで加速。瞬時に俺のタイラントSは、ウラノスに肉薄。ブァイナブレードを叩きつける。
セア・ウラノスは両腕でクロスガード。ブァイナブレードを受け止めた。――でも、そいつを待ってた!
「解体!」
ブァイナブレードに仕込んだ解体魔法を発動。刃に触れたセア・ウラノスの両腕が、パーツごとに分解され、即時バラバラになる。
『なにぃっ!?』
「ブァイナ装甲なら、どんな攻撃も無効化できるって踏んだのか?」
俺は追い打ちをかけるが、スティグメは慌ててセア・ウラノスを後退させた。
『馬鹿なっ! ブァイナ装甲が砕けたっ!?』
「俺もブァイナ装甲の頑丈さは知っているからね」
Tトライブで追撃、距離を詰める。
「だから敵がそれを使ってきたら、どう突破するかも考えたわけだ!」
一太刀。しかしセア・ウラノスは咄嗟に右脚で蹴りを入れ――否、脚を突き出すことでその脚を身代わりにした。ブレードに触れたセア・ウラノスの右脚は、解体魔法でバラバラになったが、本体は生きながらえている。
だがこのまま……。視界の角で、敵がビットを射出した。さらにコクピットに後方警戒の警告音。俺は瞬時に右へタイラントをスライド回避。
「クルフめ……!」
ジェイルーが、俺とスティグメをまとめて吹き飛ばそうとマギアブラスターを撃ち込んだ。奴の撃った赤い熱線が、セア・ウラノスのビットをまとめて蒸発させた。
しかし今の横槍のせいで、スティグメに立ち直りの時間を与えてしまった。せっかく解体した両腕と右脚が、魔力再生で復元されたのだ。
魔神機にも魔力による自己再生機能があるし、鬼神機にも装備されているんだろう。
「ふざけやがって……!」
ジェイルーが、瞬間移動でタイラントSの背後に現れた。この真似っこ野郎! 鋼牙ブレードの一閃を短距離転移で回避。そのままジェイルーの後ろをとって、その背中を蹴り飛ばす。
が、大して効いていないのはわかる。さすがスーパーロボット。どだい向こうは15メートル級。こっちはその三分の一程度だもんな。踏み台にはさせてもらったけど!
「邪魔すんなよな、クルフ!」
と、ジェイルーの陰に、セア・ウラノスが入り込む。まるで俺からの視線を躱そうとしているみたいに。
『小賢しい!』
そうやって回り込もうとするセア・ウラノスに、ジェイルーはブレードを振るう。スティグメの魂胆は、自分をタゲから外して、俺とディグラートルを戦わせようってことなんだろうが、そいつは逆効果ってもんだ。
ジェイルーは、セア・ウラノスに攻撃を仕掛ける。……うん。
「あー、俺は邪魔しないよ、クルフ」
決定的な機会が来るか、仕掛けられない限り、手出しは控えさせてもらおう。
・ ・ ・
『つーか、いい加減くだばれよなぁ、おめえはよぉ!』
スティグメ帝国の風の鬼神機、セア・エーアールEのエルCは口汚く罵った。
エルのコピーである吸血鬼の前にいるのは、シーパング同盟のスーパーロボット、アドウェルサ。
10メートルにも達する大型かつ重装な機体はしかし、セア・エーアールEの猛攻で傷つき、とうとう倒れ込んだ。
『ようやく大人しくなったか。手こずらせやがって、木偶の坊が!』
エルCは吐き捨てる。アドウェルサは両腕、両脚を失った。だがそれ意外の装甲は、まったくの無傷であり、それがエルCを苛立たせた。
結局、ブァイナ装甲には傷ひとつつけられなかったのだ。だが、それ以外の関節や、スラスター部分などの非装甲部分を損傷させることで、ようやく動きが止まったのだ。
『どうせ、コクピットも外からじゃぶち破れないんだろ? ハッチを開いてパイロットをブチっと潰してやんよ! アハハっ』
アドウェルサのコクピットにいたレウは、エルCの残忍な言い回しに心臓を穿かれたような痛みを感じる。ここまで、か。
ちら、とサイドモニターを見やる。妹たちの乗る女神機――セア・ヒュドール改とセア・ゲーが、こちらも四肢を失い倒れていた。周りにいるのは黒いリダラ・タイプが数機。
アレティとセラスは奮戦したが、あの異常に速い量産タイプ魔人機に圧倒されてしまったのだ。まだ生きているようだが、時間の問題だろう。
――ここまでなのか……。
レウは最後を予感した。
だが、天は彼らを見放さなかった。
『なーんか、三下っぽいんだよな、お前』
『あ?』
ふって聞こえた女の声に、セア・エーアールEが頭を上げ、そして瞬時に飛び退いた。
『悪役ぶり全開じゃねーの。アタシは嫌いじゃないぜ、そういうの』
倒れているアドウェルサの前に、新たな機体が立った。深紅のその機体――シーパング同盟の識別データに該当機体が出る。
――ナチャーロ魔法文明製、上級魔鎧機。
『電光ヴルカーン』
深紅の魔鎧機ヴルカーン――異世界魔獣戦士リーレが、颯爽と現れた。
英雄魔術師@コミック、コロナEXにて最新話、更新されております。こちらもよろしくです。




