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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1287/1885

第1279話、大帝国第十六艦隊


 スティグメ帝国の魔人機――ドゥエル・ペンテ、ヴァンピールⅢが、サジタリウス浮遊島軍港に上陸する。


 四脚無人戦車が地面を踏みしめ、基地施設へと殺到。対して大帝国も魔人機エアナルや戦車を用いて迎え撃つ。


 しかしスティグメ帝国側も数を投入してきたためか、防衛側の大帝国をじわじわと押し込み、制圧範囲を広げていく。


 スティグメ帝国浮遊城グランドパレス。メトレィ・スティグメは、サジタリウス浮遊島を攻略する自軍の様子を眺めていた。


「温いわね」


 思わず出た言葉に、ハル長官も淡々と言った。


「どうも大帝国側の抵抗が弱く感じます」

「奴らは転移魔法で艦隊を送り込む技術を持っている」


 皇帝玉座の肘掛けに肘をつく。


「もっと艦隊を送り込んで抵抗すると思っていたのだけれど、どういうことかしらね。シーパングにやられ過ぎたのかしら?」


 ディグラートル大帝国が、シーパング同盟と戦っているのは知っている。スティグメ帝国も手痛い損害を受けているが、大帝国もまた同じだという。


「完全に制圧するまで、私たちはここで待機。まさかとは思うけれど、こちらを引き込んで自爆する手を使ってくるかもしれない」

「自爆、ですか……」


 ハル長官は表情ひとつ変えずに返した。


「あの大浮遊島を、そう簡単に捨てられましょうか?」

「まさか、という手も警戒すべきではなくて? 相手の想定外を突くのは立派な戦術よ」


 その時、司令塔内の魔眼鏡に警告が走った。


「転移反応。敵とおぼしき艦隊反応、出現!」

「噂をすれば、大帝国は増援を送ってきたようですね」

「あら、シーパングかもしれないわよ?」


 ふたつの帝国が潰し合っている隙をついて、シーパング同盟が介入してくる可能性。


 はたして現れたのは――


「グランドパレス後方。大帝国艦隊、出現!」

「大帝国だったわね」


 スティグメ皇帝が肩をすくめれば、ハルは微かに眉をひそめた。


「しかし、浮遊島の後方とは……。挟み撃ちのつもりでしょうか?」

「帝都守備艦隊で何とかなるかしら?」

「出現した艦艇数からすれば、おそらくは。念のため、キュクロスを2基、後方に回します」

「そうしてちょうだい。これはまだ手始めかもしれない」


 この転移の増援が最初で最後という保証はない。第一陣に過ぎず、こちらがサジタリウスに集中している間に、敵が帝都グランドパレスへ逆集中攻撃を仕掛けてくる可能性もあるのだから。



  ・  ・  ・



 浮遊城の後ろに現れたのは、真・大帝国軍第十六艦隊だった。


 30隻のアラガン級改造クルーザーと、輸送船15隻で構成された中規模艦隊である。


 艦隊司令官は、青肌ダークエルフのボース准将。彼は旗艦『ポルタハ』より、艦隊全艦に指令した。


「クルーザー全艦、対艦衝撃槍、発射! そののち輸送船団、突撃を開始。クルーザー群は輸送船を死守せよ! 大帝国、万歳! 大皇帝陛下、万歳!!」


 アラガン級改造クルーザーは、新型標準型クルーザーであるアラガン級に、対艦衝撃槍を懸架できるように改造した艦だ。


 全長190メートルの艦体の下面に、全長80メートルの槍型突撃艦を三発、吊り下げられるようにした。


 そしてこの運ばれてきた対艦衝撃槍は、ボース艦隊司令官の命令を受け、それぞれのクルーザーから切り離された。


 推進口からマギアスラスターの光を溢れさせながら、槍型突撃艦が進んでいく。全長80メートルといえば、長さだけなら主力駆逐艦のファウリー級が85メートルなのでそれと大差がない。


 スティグメ帝国の索敵装置では、出現した大帝国の艦艇が突然4倍近くに増えたように見えただろう。45隻の艦隊が、135隻になったのだ。


 90隻の対艦衝撃槍は、浮遊城に向けて突撃を敢行した。槍のような外観の突撃艦は、駆逐艦に比べても船体が細く、正面からだとかなり見づらく、捉え難い。


 浮遊城を守備するスティグメ帝国艦は、急接近する対艦衝撃槍に三角砲による迎撃を開始する。


 しかし結界水晶防御を展開する突撃艦には、光線は通用しない。ただひたすらに目標である浮遊城へと向かっていく。


 スティグメ帝国のアスタコス級駆逐艦が前進し、艦首の大三角砲を浴びせるがまったく歯がたたない。


 大帝国の対艦衝撃槍は、結界水晶防御を通過することは、スティグメ帝国は嫌というほど認識している。このままではスティグメ皇帝のいる浮遊城にぶつかり被害を与えることは明白だった。


 そうとなれば、皇帝の居城を守護する護衛艦隊は、自艦を激突させてでも対艦衝撃槍の阻止に動いた。


 常時結界水晶防御の張られた拠点に出入りするために、結界通過装甲で覆われているスティグメ帝国艦である。攻撃は通用しなくても、体当たりならば対艦衝撃槍を破壊できる。


 かくて、スティグメ帝国のガレオス級クルーザーやアスタコス級駆逐艦は、我が身を盾に、大帝国の突撃艦に次々に突進、すれ違いなどさせじと激突して爆発、四散した。


 だが対艦衝撃槍のほうも、浮遊城へ向かうために、妨害してくるスティグメ帝国艦の突撃をかいくぐり、回避しながら矢のように突き進んだ。


 一方、大帝国第十六艦隊のクルーザーと輸送艦は、吸血鬼たちが対艦衝撃槍の阻止に躍起になっている間に距離を詰めていた。


 そして対艦衝撃槍の突入を援護すべく、アラガン級改造クルーザーは砲撃を開始。体当たりを阻止しようとするスティグメ帝国艦のそれをまた阻もうとした。


「輸送船団へ。対艦衝撃槍、第二陣を発射!」


 ボース准将の命令を受けて、輸送艦の船体下部に懸架していた対艦衝撃槍が60隻、追加で放たれた。


 何としても突撃艦を浮遊城にぶつけたい真・大帝国艦隊。それを断固防ぎたいスティグメ帝国護衛艦隊。艦艇同士がぶつかり合う文字通り乱戦で、双方次々に艦が爆発、または墜落していく


 スティグメ帝国軍は戦闘機を出して、これを突撃艦にぶつけることで大帝国の突撃を迎え撃つ。しかし、とうとう対艦衝撃槍は、浮遊城を構成する岩盤に、都市に、突き刺さった。


 カルカトリクスP-1が装填された弾頭が環境破壊兵器を解き放つ。浮遊城に禍々しさ魔の植物が侵食し、その範囲を広げていく。


 浮遊城が、犯されていく――

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