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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第一部

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第127話、冒険者たち


 選抜冒険者を乗せた馬車は六台。俺は魔法で擬装した魔法車(サフィロ)を運転して、それについていったわけだが……ぶっちゃけ、馬車が遅すぎてイライラが募った。


 王都を出て南へと移動する馬車の車列は、予定通りなら約一日で目的の地下都市ダンジョンへ到着する。……サフィロなら巡航速度で行っても3、4時間で着くと思うがね。


 そんなわけだから、俺はコアであるサフィロ――ちなみに今回はコピー・コアではなくて本体を載せている――に低速運転させることにした。

 どうせ、ノロノロ運転になるのなら、サフィロに経験を積ませることにしたのだ。直線なら問題ないと言っていた彼女だ。この低速なら、ちょっとやそっとの曲がりくらいどうにかなるだろう。


 で、道中、俺は車内にポータルを出して、青獅子寮と行ったり来たりを繰り返した。休憩がてら、アーリィーに遠征の様子を話したのは序の口。寮の料理人さんの作ってくれたお菓子を持って、同乗するユナとヴィスタに分けたりして時間を過ごした。

 ちなみに、一度、アーリィーがポータルを経由して魔法車(サフィロ)に来て、馬車の様子や景色を眺めた。ヴィスタなどは、初めて会うヴェリラルド王国の王子の姿に驚いていたが、失礼にならない程度に上手く対応していた。



 一方、他の冒険者たちと言えば――


 大剣使いの冒険者、シャッハは自身の銀色の髪を弄びつつ、睨むように後ろの馬車を睨んでいた。正直、やることなくて暇なのだが、その表情は険しい。

 そんなシャッハの表情に同乗していた冒険者たちはあまり気にしないようにしていたが、時々漏れる舌打ちに、我慢できなくなった一人――Aランク冒険者のレグラスがため息をついた。


「おい、シャッハ。舌打ちなんて品のないことはするな」


 24歳。カーマイン男爵家の四男であるレグラスは、銀の甲冑に青いマントをまとい、冒険者であると同時に騎士の位を持っている。


「何が気に入らないんだ? いや、当ててやろう。あのEランクが気になっているのだろう、違うか?」


 Eランク――ジン・トキトモという魔術師。

 シャッハは口もとをゆがめた。


「なんでエルフの弓使いも、あのユナという魔法使いも、あの若造に肩入れするんだ?」


 わけがわからない。シャッハは23歳。銀髪に、幼少の頃から美男子ともてはやされ、こと女性陣からは人気がある。だから、他の冒険者たちの前で、Eランク如きと比べられて下に見られたことが腹立たしくて仕方がなかった。

 分からないと言えば、他の冒険者もジンのことはわからない。だからレグラスも「さあな、俺が知るかよ」と答えるしかなかった。


「面白くない」


 シャッハはフンと鼻を鳴らした。ちら、と後方の車列の向こうに、ひとつだけ他と違うこぢんまりした馬車が見えた。最後尾の馬車には、例のEランクと彼の肩を持つ美女冒険者二人が乗っている。


「変な馬車だな」



  ・  ・  ・



 先頭から五台目の馬車の荷台兼客車に乗っていたのは、三人の女冒険者だった。

 チーム名は『アインホルン』。

 いずれもAランク冒険者で、パーティーを組み、数々の依頼をこなしてきた腕利きだ。


 リーダーはマジックフェンサーのアンフィ。長い金髪に赤い目を持つ美少女。騎士家系の生まれだが、女は騎士にしないという家に反発し冒険者になった過去を持つ。歳は21歳。


 黒く長い髪を持つ剣士、ナギ。東方出身で22歳。刀と呼ばれる片刃の剣を使いこなす。物静かで、パーティーの中では常に冷静な言動が目立つ。


 最後はパーティー最年少の16歳、ブリーゼ。ウサギ耳のついたフード付きの魔術師ローブをまとう、無口系。だがこの歳でAランクになるだけあって、魔術の腕は確かである。


 そのブリーゼが、最後尾を進む、へんてこ馬車をじっと見つめていた。ふだんから、ぼーっとしている彼女だが、その馬車ばかりに注目していることに気づいたアンフィは声をかける。


「何を見てるの?」

「あの馬車」


 ブリーゼは、すっと指差した。


「あれは凄い魔法具。あんなの見たことない」

「は? 魔法具?」


 アンフィも目を凝らすが、どう見ても、普通の……というには少々小型の馬車にしか見えない。


「擬装魔法」


 ブリーゼは告げた。アンフィは驚く。


「え、擬装魔法!? 嘘でしょ」


 魔力で見るものの姿、形を変える高等魔法だ。ブリーゼは「魔力眼」と一言。魔力で歪められたそれも、魔力を通して見ると、その本当の姿が見える――アンフィは魔力眼の魔法を使って見る。

 だが――


「普通の馬車にしか見えない……」


 アンフィが言えば、ブリーゼは残念なものを見る目になった。いや、わたしが悪いの? 文句がでかかるが、先にナギが口を開いた。


「つまり、アンフィのレベルでは見破れないほどの強力な擬装魔法、ということですか? ブリーゼには見えているのですよね?」


 コクリ、と頷き返す少女魔法使い。ナギは眉をひそめた。


「あのジン・トキトモという魔術師……そんな高度な魔法を使いこなしているということでしょうか?」

「ちょっとちょっと、魔法使いなら、もう一人いたでしょう? あの、なんだっけ、おっぱい大きな人!」


 アンフィが声を張り上げれば、ナギは「品がない」と口もとに手をあて、ブリーゼは再度、残念な目を向ける。


「アンフィ、胸、ない……」

「あんたに言われたくないわよ!」


 Aランク冒険者である彼女たちは、その胸のサイズもAという残念っぷりだった。いやナギはBかCは――

 ブリーゼは、胸の話はスルーして最後尾の馬車に目を向けた。


「馬がないのに走る魔法具。とても不思議」


 馬がない? アンフィとナギは顔を見合わせる。


「乗ってみたい」

「なら、次の休憩か帰りにでも、頼んでみたらどうです?」


 ナギが言えば、ブリーゼは何のためらいもなく頷いた。


「そうする」


 基本、周囲に関心が薄いブリーゼにしては、珍しい態度だった。

 魔法使いというのは、自分の使えない魔法に対して好奇心が強い人種である。その点では、ブリーゼも典型的な魔法使いだった。


 やがて、冒険者を乗せた馬車の車列は、砂の平原地帯に差し掛かる。地平線の彼方まで広がる平原は、青空と相まって天と地を二分したような景色が広がっていた。

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