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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1258/1944

第1250話、下される鉄槌


 連合国はその日、地獄を見ることになる。


 これまでは西から大帝国は進撃してきた。だから毎回、連合国でも西にあるクーカペンテ国とプロヴィア王国が戦場になることが多く、また東西横に長いニーヴァランカも西部は戦火に見舞われていた。


 が、今回、シーパング同盟の壁を飛び越え、真・大帝国はこれまで直接襲われることが少なかった東部から侵攻してきた。


 真・大帝国軍第二艦隊、第七艦隊が連合国を、第九艦隊が東方辺境領に転移した。


 マルク中将指揮の第二艦隊は、連合国の中枢であるウーラムゴリサ王国へ進撃した。


「長らく我らが大皇帝陛下に歯向かい続けた連合国に、正義の鉄槌を下す時がきたっ!」


 艦隊旗艦『イフラーン』より、マルク中将は魔力拡声器で檄を飛ばす。


「無能で怠惰(たいだ)な豚どもを処分せよ! 大皇帝、万歳!」


 第二艦隊のコルドアⅡ級戦艦10隻が、ウーラムゴリサ王国、王都アルモニアの空にあった。


 40.6センチプラズマカノンが戦艦の主砲から放たれ、それらは豪雨の如く、王都に降り注いだ。


 城壁と建物を容赦なく砕き、そこにいた連合国王都の住民を吹き飛ばし、あるいは蒸発させた。


 艦砲射撃の雨は、無数の建物ひしめくアルモニアの町を耕し、滅ぼしていった。王都の中央にそびえる王城にも、戦艦『イフラーン』の砲門が向けられた。


「粉砕せよ!」


 一撃で、ウーラムゴリサ王がいた天守閣(キープ)が撃ち抜かれて四散した。強固な城壁は、次々と穴が開けられ、崩壊。尖塔も吹っ飛び、飛散した岩の欠片が王都に降り注ぐ。


 しかし住民らは、それよりもプラズマカノンの嵐から逃げるので手一杯だった。だがそれも無駄に終わる。


 そもそも逃げ場など、どこにもなかったのだから。


「提督! 連合国の空中艦艇、出現!」

「来たか」


 旗艦『イフラーン』の司令塔の窓から、マルク中将は双眼鏡を覗き込む。見張り員が報告した。


『戦艦級2、クルーザー4、エスコート4、接近中!』

「ふん、連合国も、空中艦を手に入れていたか」


 小馬鹿にするマルク中将に、参謀長が言った。


「例のファントムアンガーなる連中が支援していましたからな。おそらくシーパングからの貸与艦でしょう」

「我がコルドアⅡの敵ではない!」


 王都アルモニアへの砲撃を中断したマルク中将の第二艦隊、第四戦艦戦隊は、向かってくるウーラムゴリサ王国艦隊と『正面』から向かい合った。


 そう、コルドアⅡ級戦艦は正面に相手を捉えたのだ。


「吹き飛ばせぃ!」


 コルドアⅡ級の40.6センチ連装プラズマカノン14基のうち、10基20門が正面の敵へ指向する。


 その圧倒的火力は、王都を破壊し尽くすのみならず、シーパング国から連合国に送られた艦艇群を、たちまちスクラップに変えた。


 防御シールドを貫通し、艦体装甲を穿(うが)ち、連合国艦艇を爆沈させていく。


 兵器の進歩は非情だ。シーパング国からこれらの艦艇が提供された時に比べて、それぞれの陣営の技術は進化した。


 新式プラズマカノンや、結界水晶防御、その他、様々な技術が投じられた新鋭艦と比べれば、連合国艦艇は旧式化も甚だしい。

 そして機械の性能差は圧倒的であり、それを扱う者の練度にも天と地ほどの差があれば、もはや連合国側に勝ち目などないのだ。



  ・  ・  ・



 ウーラムゴリサ王国、クレマユー大侯爵の居城ブリアール城――


「なんと、王都が、陥落したのか!?」


 クレマユー大侯爵は、ショックのあまり手にした器を落としてしまった。


「へ、陛下は!? 陛下はどうなされたのだ!?」

「お、おそらく破壊される城と運命を共にされたかと……」


 疲れ果てた伝令の報告に、大侯爵は椅子にへたり込んだ。


「そんな、まさか……」


 大帝国が攻めてきた。それも西ではなく東から。まったく想定しない方向から。


「シーパング提供の魔力通信を使った報告では、王国の主要軍事拠点が攻撃を受け、その悉くが制圧されました」

「機械兵器は!? 戦ったのであろう!」

「それが……。大帝国の機械兵器が、我が方を質、技量ともに圧倒しており――」


 なんてことだ……。


 AS、パワードスーツ、戦車、そして空中艦艇。これらは大帝国と互角に戦えるものではなかったのか?


 シーパングのクロワドゥ大公が、そう言っていたのではないか――クレマユーは、シーパング代表との会談を思い起こす。


 強大な大帝国。その侵攻から連合国を守るために、購入し、整備してきた機械兵器群。それなのに……。


 その時、クレマユー大侯爵は、ジョン・クロワドゥの不敵な笑みを思い出した。


『――我らは兵器を売る。貴殿らはその兵器で大帝国と戦う兵士を出す、そういうことだ』


 それに対して、クレマユーは『シーパングにとって連合国が必要だと言うことか』と言った。しかし、クロワドゥ大公は壮絶な顔になった。


『少し違う。大帝国と戦う同志を必要としている。故に我らは、大帝国と戦う意志のないものに兵器は売らない。連合国にはぜひ、やり残したことを完遂してもらいたい』


 脅しにも似た口調だった。


 機械兵器を手に入れて、連合国はそれらを使いこなせよう訓練した。国王は、王国と連合国を守るのを優先と言っていた。それはシーパング国の意向と違う。


 先日、同じ連合国のセイスシルワが吸血鬼帝国に襲われた時、救援に応えたのは連合国ではなく、シーパング国だった。


 この時、ウーラムゴリサ王国は、救援をしなかった。シーパングが出てくるなら我々は必要ないだろうと。貴重な艦艇を割いて、本国を手薄にはできない、と。


 これもシーパング国の考えに添ったものではない。


 思えば、シーパング国との連絡の頻度(ひんど)が落ちていた。口を開けば、『諸君ら連合国はいつ大帝国に向かうのだ?』と聞かれたから。王はそれを煩わしく思っていたから、こちらから連絡も控えるようになった。


 実はシーパングは、連合国から離れていたのではないか……?


「ファントムアンガーは? あの傭兵艦隊はどこだ? 憎い大帝国軍が攻めてきたのだぞ?」

「ファントムアンガー艦隊は、クーカペンテにおり、大帝国と睨み合っております!」

「な……クーカペンテ」


 そうだった。シーパングから、大帝国に支配されているクーカペンテ、プロヴィアを奪回するのに軍を派遣するよう要請があった。


 連合国の答えは、ノーだった。吸血鬼の脅威にさらされていたニーヴァランカはともかく、それ以外の国々も敵の侵攻に備えて防衛を優先した。


 そして、シーパング同盟に解放された両国は、連合国からの脱退を通知して現在に至る。ファントムアンガーも同地に留まっている。


『――我らは、大帝国と戦う意志のないものに兵器は売らない』


 クロワドゥ大公の壮絶な表情と言葉が、クレマユー大侯爵の脳裏にこびり付く。


 ――見放された? いや、見放されていたのか、我々は……。

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