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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1234/1941

第1226話、キル・ゾーン


 超戦艦『バルムンク』の艦橋に俺はいた。観測ポッドと哨戒機からの報告により、戦術モニターは刻々と戦況の推移を表示していた。


「魔力観測不能の領域が発生」


 オペレーター席のラスィアが告げた。


「セア・ヒュドールがMVMを作動させた模様。……これで敵のルートのひとつが(つぶ)れましたね」


 魔力消失空間のゾーンに入り込んだ吸血鬼は命を失う。毒霧の中に飛び込むようなものだ。魔力がない空間は、人体には影響がないが、体の大部分が魔力で出来ている吸血鬼には猛毒に等しい。


「今のところ、外周の防衛ラインは、うまく敵を減らしている」


 俺の期待どおり、魔神機とスーパーロボットは、小型で数の多い敵魔人機や航空機を攻撃し、その戦力を減少させている。


 だが、完全にシャットアウトは無理というもので、スティグメ帝国の侵攻部隊は外周の防衛線を抜けて、エルフ・テリトリーへと迫っている。


「敵先頭集団、まもなく第一防衛ラインに到達します」


 エルフの魔人機リダラ・エゼルを中心とした第1大隊がウィリディス軍ASS大隊と共に展開している。


 さあ、ここは阻止してくれよ……。



  ・  ・  ・



 スティグメ帝国魔人機部隊は、セア・エーアールやティフォーネの迎撃をくぐり抜け、世界樹を目指して飛んでいた。


 木の上をかすめる低空飛行だ。


『敵に魔神機があるなど聞いていないぞ……』


 不運にも出くわした部隊には気の毒ではあるが、敵機は少数だったから、うまく抜けられた部隊もあった。


『各機、警戒せよ。エルフどもは、地上の勢力の中では有数の戦力――』


 吸血鬼指揮官の言葉はそこで途切れた。


 突然飛来した高速弾が、魔人機ヴァンピールの胴体を貫通、指揮官の命を奪ったからだ。


 崩れるように墜落して、地表の森に消えるヴァンピール。


『せ、戦闘隊長!?』


 動揺する吸血鬼パイロット。だが彼も、指揮官の後に続くことになる。木々からさほど離れていない超低空飛行していたヴァンピールが、次々にハンマーでぶん殴られたように、悶え、撃墜される。


『何だ?』

『攻撃だ!』

『敵はどこだ……!?』

『狙撃だよ! 遠距離から撃たれて――』


 1機、また1機と、空中分解を引き起こして脱落していく魔人機。吸血鬼パイロットたちの混乱が大きくなる。


『ふざけるな。この高度だぞ。狙撃なんかできるわけが……』

『だがやられてる! げんじ――』


 また1機が爆発した。


『どこから撃ってる!?』

『正面だろうが!』

『敵は? 敵はどこに、うわっ!?』


 完全に捕捉(ほそく)されていた。ただでさえ狙いにくい高さを選んで飛んでいるのだ。そこへ正確無比な射撃を叩きこまれている。


 あり得ない。まるで射的の的である。


 堪えられず、高度を上げて自由に回避できる空間を確保しようとしたヴァンピールもあったが、立ち所に狙い撃ちにされて翼をもがれた。


『これは、いったい……!?』


 吸血鬼たちは、エルフに対する認識が甘かった。


 かつての魔法文明時代の奴隷階級だったエルフが、数千年のあいだに射撃に関して特化した能力を持つに至ったことを、彼らは知らなかったのだ。



  ・  ・  ・



 エルフは弓の名手だ。この世界でも、森に住むエルフたちは弓に長けていた。


 遮蔽(しゃへい)が多そうな森の中で遠距離から撃つなど、少し考えれば使い勝手が悪そうな気がするが、エルフはそんな環境だからこその射撃術を手に入れた。


 不安定な木の枝の上から、枝の間を抜けて獲物を撃ち抜くのが普通とかいう、おかしな能力を得たのだ。


 もっとも彼らの住む古代樹の森は案外広くて、弓矢の扱いに何ら支障はなかった環境だからこそ、弓を普通に使い、やがて、通常の森の中でも狙撃をやらかす化け物になっていったわけだが。


 ともあれ、弓に長けたエルフが武器を銃に切り替え、それに順応するのにさほど時間はかからなかった。


 パワードスーツに始まり、魔人機を扱うようになった彼らエルフだが、操縦に慣れるより早く、銃の扱いに慣れた。


 かくて、エルフの魔人機大隊が編成された。その機体の半数が遠距離狙撃ライフル対応型という、スナイパー重視の構成となった。


 リダラ・エゼルは、エルフの里の地下施設で、ディーツーが整備したリダラタイプ魔人機である。


 エルフに与えられたリダラ・グラスの外観をベースにしつつも、中身は強化改造型リダラであり、現代仕様とも遜色(そんしょく)のない機体だ。


『ヴィスタ、お前、何機やった?』

『……6機』


 僚機(りょうき)に答えつつ、ヴィスタは狙撃銃の引き金を引く。リダラ・エゼルが保持するTSR-7狙撃銃から57ミリ弾が放たれた。


 ジン・アミウールのもたらした魔人機と銃器。魔法弓ギル・クを握っていた彼女も、今や里の防衛のため、魔人機搭乗に志願し、外敵と戦っている。


『7機目』


 淡々とヴィスタは呟く。


 弾道がほぼ直進する魔法弓で慣れたヴィスタの、銃への適合は早かった。ジンのウィリディス軍から教育士官として派遣されたリアナ・フォスターという人間の皮を被ったエルフに狙撃ライフルの扱いを学び、エルフ大隊でもトップの成績を残している。


『針の穴を通す神業エルフだな、ヴィスタ』

『お前も口を動かす前に手を動かせ』


 僚機を注意する。しかしモニターにも魔力センサーにも、敵機の反応がなくなる。


『目は動かしているよ。……よし、こっちにきた敵は全滅だ』


 エルフ魔人機大隊の各狙撃分隊がそれぞれの持ち場から、長距離狙撃を実施した結果、敵先発部隊は、クモの巣に絡めとられるように撃破されたのだった。

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