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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第1225話、攻撃側のジレンマ


 スティグメ帝国の艦隊より、魔人機が発進した。


 主力となる魔人機ヴァンピールは飛行が可能な機体だ。対地攻撃用軽爆撃機のブラックバットの部隊と共に、世界樹目指して低空を飛行する。


 地上を歩けば、夜のうちに目標に到達できない。それゆえの地形に沿った飛行での接近だった。


 ……しかし、その動きはウィリディス軍の偵察機によって観測されている。


『各機、警戒せよ。正面より高速移動物体が急速接近中!』


 吸血鬼パイロットたちに緊張が走る。目的のエルフの里までまだまだ先だ。それにも関わらず、もう敵が現れたのか、と。


 それは大型の航空機だった。しかし戦闘機と呼ぶにはいささか不格好で大きい。



 現れたのは、ウィリディス軍戦闘空母『ウィラート』から発進したガンファルコンだった。


 マッドハンターのバーバリアンⅡとドッキングした状態で、スティグメ帝国魔人機部隊に一気に突入した。


『クリエイトミサイル、食らえ!』


 ガンファルコンのミサイルポッドが一斉に小型ミサイルを敵中にばらまく。通り魔である。すれ違いざまのミサイルが、数機のヴァンピール、ブラックバットを絡め取り、火球に変えた。


『グレーニャ・エル!』

「任せな!」


 ガンファルコンの上面に乗ってきた風の魔神機セア・エーアールが離れた。


「疾風のお通りだぜ!」


 グレーニャ・エルは、ガンファルコンの一撃で混乱した吸血鬼魔人機に飛び込み、ソニックブレードで切り裂いていく。


 さらにエアビットを展開。同時に複数の敵機を切断、撃破する。


「ここはアタシの独壇場(どくだんじょう)だぜ!」


 ガンファルコンは戦場から離脱している。このまま突き進み、単独で敵艦隊に一撃を与えるのだ。

 グレーニャ・エルの役目は、進撃途中の敵魔人機部隊を攻撃し、その数を減らすことにある。


「まったく、センセは面白いよなァ!」


 何故なら、好き勝手にやらせてくれるから。しかも敵を好きなだけ倒していいという。


「最高だ!」


 狂犬エルは、向かってくる敵魔人機を見やり歯を剥き出した。


 風に追いつけるものか。セア・エーアールのスピードにヴァンピールはまるで追いつけない。こうも易々と肉薄を許して、両断を許す!


 グレーニャ・エルの視界の端に、上空から飛来した紅蓮の光が、敵機を()ぎ払うのが見えた。


「へへ、こっちを無視しようってか? そんなんだから撃たれるんだぜ」



 スーパーロボット、ティフォーネが高みから眼下を見下ろしている。そのコクピットには、エルダーエルフのニムが操縦桿を握っている。


「我らが里に踏み入れようとする悪鬼ども……消えろ!」


 マギアブラストライフルが、紅蓮の束を吐き出した。低空を進んでいる魔人機を炎で焼き払うように蒸発させていく。


「次弾装填(そうてん)!」


 シードリアクターを積んでいないティフォーネには、強力過ぎるマギアブラストライフルを素で連射はできない。魔力パックを交換、装填することで次の発砲が可能となるのだ。


 しかしニムは、魔力パックの交換作業の合間にクリエイトミサイルポッドを起動させ、それを投網のように放った。


 上空から複数のミサイルが降り注ぎ、ブラックバットの編隊を撃墜していく。


 魔力センサーが上空のティフォーネを撃墜しようと高度を上げるヴァンピール数機を捉える。


「基本ですね。狙撃手を放置しておけば、一方的に狙われますから」


 でも――装填の終わったマギアブラストライフルを向ける。


「迎撃コースが一直線になるんです。つまり――」


 紅蓮の光が、高度を上げたヴァンピールをまとめて溶かし爆発させた。


「わざわざ狙われにきて、お疲れさま」


 ニムとティフォーネの役目は、グレーニャ・エルのセア・エーアールと同じだ。


 エルフの里に進撃する敵の戦力を削る。


 エルフテリトリーの遥か手前だ。威力の高過ぎる武器故、従来の防衛ラインからかなり前進している。 味方が多いとかえって使いづらいからだ。


 普通なら、少数機は袋叩きにあうものだが、ジンはそうはならないと予測していた。


 何故なら、敵の目的がエルフの里の攻略であるからだ。厄介な強敵にこだわり、いたずらに損害を増やすより、無視か迂回したほうがよい。


 もちろん、撃墜すべく戦力を振り向けるだろうが、その数は多くはない。迎撃が少数故に、数を多く割り振って、エルフの里へ行く戦力を減らしては本末転倒だからだ。


 だが、エーアールにしろティフォーネにしろ、本気で撃墜しようとするなら、エース機をぶつけるか、数で対処するしかない。


 そこにジレンマが発生する。


 目的であるエルフの里へ部隊を送りたいが、道中で戦力を削られる。あまり数を割けないからと小出しにしたらそれを叩かれ、さらに被害が拡大する。

 昔から戦力の小出しはいけないと言われるが、状況が小出しにせざるを得ないのである。


 要するに、ウィリディス側がやっているのは、敵戦力の集中をさせないことなのだ。



  ・  ・  ・



「MVM、起動」


 所変わって、セア・ヒュドール改の魔力消失装置が作動する。


 エルフの里の遥か前方にて、待ち伏せする水の魔神機。ここならばエルフ・テリトリーの外なので自然環境に多少変化を与えても、文句を言うエルフはいない。


 エーアールやティフォーネが戦っている場所とも離れている。つまるところ、正面の防衛網を嫌い、迂回してきた敵を警戒しているのである。


 必然的に来ない可能性もあるルートだから、エルフ軍の守りも手薄なのだが、そこを敢えてついてくる敵にも備えているのである。


 そしてセア・ヒュドールのコクピットで待機していたアレティは、風の魔神機とスーパーロボットを避けた敵部隊を発見したのである。


 護衛についているASS-1シェイプシフターは、魔力の有無は関係ない。MVMを使い放題だった。


 林に潜んだまま魔力消失空間を広げたセア・ヒュドールによって、スティグメ帝国魔人機部隊は、見えない死の糸に絡めとられて墜落、果てるのであった。

英雄魔術師@コミック4巻、5月14日発売! どうぞよろしくです。

コロナEXにて、コミック版連載中。最新話は4月11日更新予定!

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