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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1231/1942

第1223話、見守る者


 シェード将軍と、旧・大帝国海軍のアノルジ元帥が交渉をした――


 エルフの里にいる俺のもとに、旧・大帝国軍との交渉の報告が届いた。超戦艦『レーヴァテイン』のベルさんからの通信を、俺は受けた。


『やりたい、と言うからやらせたが、問題はあるか?』

「いや、ない」


 俺は肩をすくめる。


「旧・大帝国の勢力を加えられたら、大帝国解放軍はよりそれらしくなる」


 敵はディグラートルであり、その帝国臣民もまた皇帝の被害者である、と他国民へのアピールの材料となるだろう。


 これまでの大帝国の悪行を考えると、戦後の大帝国民への必要以上の復讐が横行するだろうことは想像に難くない。虐殺とか胸くそを、味方陣営から出したくないわけだ。


 もっとも、個々の復讐を抑えることなど不可能ではあるのだが。


 実際、大帝国によって、すでに多くの国が被害を受け、その恨みもさぞ深いだろうし。


 だが、それもできるだけ抑える努力はすべきだろう。


「まあ、そもそも旧大帝国の残党が、解放軍に参加すると決まったわけじゃないけど」

『しかし、連中に行き場はないだろう』


 ベルさんは鼻をならす。


『兵器を捨て、何もかも捨てて逃げるか、解放軍に参加して新体制と戦うか。その二択しかあるまい』

「自力で補給や整備が受けられないのでは……そうなるか」


 大帝国内で秘密基地でも作り、そこで独自に抵抗運動をするという手もあるが。もしよその国でそれをやったら場合によっては、その国からしたら盗賊みたいなもので、容認できないし……。


 そう考えるなら、解放軍を同志と認めて共闘するのが、一番の近道だと思う。最悪、真・大帝国への抵抗の駒として、共闘はなくとも物資援助はするかもしれない。敵の敵は味方よ。


 問題は、終わった後になるが……。


「今、戦後のことを考えるのは時期尚早かな」

『混迷を深めている。まだまだ先は長いんじゃねえかね?』


 ベルさんは言った。


 ウィリディス=シーパング陣営、真・ディグラートル大帝国、スティグメ吸血鬼帝国。1対1ではないのが面倒なんだよな。


「シェード将軍の交渉の結果を待とうじゃないか。ベルさん、そっちはどれくらい大帝国にいる?」

『交渉が終わったら、早々に戻るさ。それとも、そっちは援軍が必要か?』

「エルフの里を移動させられれば、敵を全滅させる必要はない」


 現在、ディーツー主導で、エルフの里を含む浮遊島の浮上準備が進められている。浮遊島の制御室を復旧させ、浮遊システムの確認作業が行われている。


 何せ9900年前の代物だからな。


「やってくる敵は撃滅する。願わくば、ゆっくり来てくれれば、そいつらをまとめて罠にかけてやることもできるんだがね」

『まーた、何か企んでいるな?』

「なに、せっかく来てくれるのだから、歓迎してあげようって話だよ」


 無駄足を踏ませて悔しがらせてもいいが、一網打尽にできる状況なら、平らげたほうが効率がいいだろう。



  ・  ・  ・



 スティグメ帝国第五艦隊から送られた巡航艦隊が、壊滅した第六艦隊の生存者を回収にきた。


 鬼神機パルテノスに乗るデェーヴァは、十数機の魔人機と、生存者を乗せた脱出艇と共に、迎えのドラコーン級ヘビークルーザーへと着艦した。


 機体を降りたデェーヴァは、迎えの士官と共にヘビークルーザーの艦橋へと上がった。


「将軍閣下、『ガレーネー』へようこそ。艦長のコーメーです」

「迎えをご苦労」


 デェーヴァはクルーザー艦長に頷く。


「先遣隊のようだけど、数が少ないわね」

「艦隊でも一番足の速いのを出しました」


 そんなに早く救援に駆けつけてくるとは思っていなかったから、デェーヴァは微かに驚いていた。


「第六艦隊の生存者を回収後、速やかに反転し、艦隊に合流いたします」

「ん? ここで本隊を待つのではないの? 直に後続が追いつくでしょう?」

「は、ウィクトル閣下は、できるだけ早く敵情を知りたいようで……」

「なるほど」


 生存者から敵がどんなものか、情報を仕入れておきたいということだろう。第五将のウィクトルは獅子(しし)顔で勇ましい外見だが、慎重派でもあるのだ。


 エルフの里への進撃を阻んだ敵艦隊。こちらの想定した地点より遠い場所で奇襲を仕掛けてきた。


 戦闘は明日だ、と気を抜いていた将兵の心の(すき)をついた襲撃。しかも転移を使ってくるという恐るべき戦法を取りつつ、艦艇の性能も高いという非常に厄介な敵であった。


 ――あの時、合流すべく下がっていれば、もしかしたら、艦隊を失わずに済んだかもしれない……。


 たられば、の話をしても仕方がないことではあるが、デェーヴァも後悔しないわけにもいかなかった。


 反転するヘビークルーザー『ガレーネー』。僚艦の2隻のクルーザー、4隻のフリゲートもそれに倣う。


 彼らは気づいていなかった。見えない凶器が潜んでいることに。



  ・  ・  ・



『敵艦、反転。離脱に移る模様』

「逃がすな。雷撃戦、始め! 一番から四番、発射!」

『てぇー!』


 エルフ救援艦隊に所属する、ヴォーテクス級ステルスクルーザー『ヴォーテクス』は、ステルス航行状態から、対艦用ステルス魚雷を発射した。


 うっすらと煙を引きながら、見えないミサイルが、スティグメ帝国の巡航艦隊へと飛翔する。


 さらに横列に展開している8隻の暁級ステルスフリゲートからも、同様に4発ずつステルス魚雷が放たれた。


 ほとんど無防備だった。スティグメ帝国艦艇も警戒はしていたが、姿の見えない魚雷が近距離から現れ、目視発見の余裕もなく攻撃を受けたのである。


 たちまち7隻の帝国艦は艦尾を吹き飛ばされ、または轟沈した。


 スティグメ帝国第六艦隊殲滅(せんめつ)後、ジンが残敵掃討に時間を掛けるの嫌い、集まったところを叩くべく残していた、バルムンク艦隊直属の潜空艦戦隊の奇襲攻撃は成功に終わった。

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