表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1227/1943

第1219話、エルフの里、亡命す?


 アポリト浮遊島は、本島と8本の世界樹のある島から構成されていた。


 文明崩壊後、世界を魔力消失が襲い、浮遊島も落下したが、いまは世界に魔力が満ちている。島を浮遊させていたシステムを用いれば、エルフの里周辺は、再び空に浮かぶことができるのだ。


 移動してしまえば、敵が再度発見しない限りは、襲撃されることはない。


 戦いに疲れてしまったのなら、逃げてもよい。だが住み慣れた家や故郷を捨てるのは覚悟がいる。だったら、家や故郷ごと逃げればよい。


 俺のこの考えは、カレン女王はショックを受けた。


「そのような、里ごと移動させるなんて……神の所業では……?」

「ギルロンドがありますよね?」


 エルフの防衛艦隊のために、俺たちが作った浮遊島軍港。それは世界樹上空に浮いている。


「あれと同じです」


 それに、エルフの里近辺がアポリト浮遊島の一部だった話は以前にもしたからね。


 俺はアポリト浮遊島を直接見たことがあるけど、カレン女王はないから、世界樹のある里全体が空に浮かぶなど、簡単には信じられないのだろう。


 自分の住んでいる村が空に浮かびますよ、なんて言われて鵜呑みにする人間がいないのと同じだ。


「世界樹を見捨てられない者、争いから逃げたい者……双方の言い分を取るなら、里ごと移動させるのがベストだと思いますよ」


 もっとも、敵さんも世界樹を移動させたところで、探して追い掛け回すだろうけど。ただうまく、敵の目をすり抜けられれば、里が攻撃されることはない。まあ、根本的な解決にはなっていないんだけど。


「逃げられるのでしょうか……?」


 やはりと言うべきか、カレン女王もそれに気づいている。


「この里が浮遊島として移動できたとして、大帝国や吸血鬼たちは、世界樹を諦めるのでしょうか?」

「探すでしょうね」


 俺は素直に認めた。


「大帝国が新しくなり、スティグメ帝国と互角に戦えるようになった今、戦争はなお激化するでしょう。運がよければ、双方の潰し合いから逃れて、隠れ住むこともできるかもしれません」


 しかし、ここで俺から提案できる手がひとつある。


「実は、私はシーパング国を作りました」


 シーパング同盟軍、その名にもなっている架空国家。しかし島ができ、首都もできた。集落もいくつかあって、軍もある。


「そこに世界に散らばっていた世界樹を5つシーパングに集めました。今のところ、敵に見つかってはいませんが、もし見つかれば敵はやってくるでしょう」


 ただし――


「そこにはシーパング軍が守りについています。もしよければ、エルフの里ごとシーパング島に移動して、保護下に入るという手もあります」

「ジン様の国……」


 カレン女王は呆然とした顔で俺を見つめている。


「すみません、情報量が多くて、整理が追いつかなくて……」

「わかります。信じられないことばかりでしょうから」


 以前、サキリスとエリーがエルフの里の世界樹は移動させないのか、と言っていたけど、エルフ民もシーパングに受け入れてしまうのも手かもしれない。


「シーパング島は、迫害された民や種族も受け入れていますから、もし里を離れたいという者がいれば受け入れができますし、戦争が終わるまでシーパングにいて、終わったら里ごとここに帰ってくる、ということもできます」

「……至れり尽くせりな話に聞こえます」


 女王は祈るように手を組み、目を伏せた。


「ジン様は今のエルフの祖を守った守護神様。あなた様のご提案に飛びつきたい私がいます」


 しかし、とカレン女王は心なしか辛そうな表情を浮かべた。


「何故、ジン様はここまでエルフに慈悲(じひ)をかけてくださるのか……」


 そう言われると、何故なんだろうね。俺としては、エルフと度々交流があって、それなりに世話になったから、かな。そして困っていて、助けを求められたから、でもある。


「まあ、(えん)でしょうね」


 関わっていった中で築いた関係。そこに深い理由などはない。結果としてそうなっただけである。


「ジン様のご提案に従い、エルフの民と里はシーパング国へと亡命致します」


 お、おう……。案として出しはしたが、お早いご決断で。


「民には私から伝えます。つきましては、ジン様。私たちは里を浮遊させる術を知りません。この里を移動させるため、御助力いただけますでしょうか?」

「それはもちろん」


 俺としても、エルフの里が攻められるたびに、部隊を派遣するのが面倒だと感じていた。シーパング島に着てくれれば、そこに駐留しているシーパング艦隊で一緒に守れるから楽になるんだよね。


 ぶっちゃけ、こっちにきて、というのは俺たちの都合だったりする。だから、エルフの里がシーパング島に合流するのは、願ったり叶ったりなんだよな。


「さっそく、里の地下都市から島の制御室を復旧させて、浮上と移動の準備をさせましょう。……民の説得のほうは、大丈夫ですか?」


 いきなり里を動かします、なんて驚かないはずがない。世界樹があればどこでもいい、という人もいれば、古代樹の森より外も含めて、この環境がいいという人もいるだろう。


 里の安全のためとはいえ、突然の移動とエルフ民の亡命は、反発もあるだろう。


「いま、エルフの民は疲れております。いつ敵の手が迫るかわからないご時世。民には一時的処置と伝えますが、この件に関しては、女王としての強権を発動。どれだけ反発があろうとも、移動させます!」


 カレン女王は強気な発言をした。いや、覚悟を決めた顔というべきか。


「民の命を守るための最善と考えます。移動させた後、民が私を糾弾(きゅうだん)するならばそれもよし。それで女王の地位を失おうとも、構いません」

「そこまでのお覚悟ならば、私から言うことは何もありません」


 非常時における強権発動。これまでは臣下と話し合い、そこから結論を出していた女王にしては珍しいが、指導者にはそういう判断も必要になることもあるのだ。

英雄魔術師はのんびり暮らしたい、コミック4巻5月14日発売!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[気になる点] いやいやいやいや!? 「縁」を「緑」とも書くとか言う人を初めて見た衝撃で、その後の話が頭に入ってきませんでしたよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ