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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第一部

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第119話、ゴーレム+ダンジョンコア


 青獅子寮にある俺の魔法工房。ベルさんと、ダンジョンコアのサフィロの二人(?)に相談する俺。


 サフィロによると、地下およそ三十メートルに魔獣軍の集団を落とし、その上から取り除いた土砂を再度かけたという。範囲内にいたのは魔獣や亜人、およそ一〇〇〇から一五〇〇の間。それが地下三十メートルラインに埋まっている。


 範囲がわかっているので、掘るのはその地下三十メートルラインということになる。それでも広大な広さとなるが、何もないとわかっている土砂を掘らなくていいというだけでかなり楽になる。


 魔獣軍が埋まっている範囲一帯を、サフィロが再びダンジョン化。その地下三十メートルに適当にフロアを作り、あとは魔獣(ガーディアン)やゴーレムで地中を直接掘り進めつつ、回収作業を行う。


『現状、まだ魔獣や亜人の死骸が埋まっているので、ダンジョン化すれば、そこから魔力を充足できます。また、その魔力の流れを観測することである程度の位置を把握できるので、発掘の助けになるかと』

「素晴らしい」


 闇雲に探すよりは、これまた楽になるだろう。俺が言えば、ベルさんは首を捻った。


「魔力を補充できるなら、いっそダンジョンを作る要領でフロアを広げたほうが、掘る量が少なくて済むんじゃねえか?」

『ダンジョン作成における地形移動の際、その中にあるモノも一緒に移動させてしまうため、やるなら地下三十メートルラインより一、二メートル上を階層化するべきでしょう』

「中のものも一緒に移動って……それなら、いっそ三十メートルラインの土砂を全部地上に引っ張り出したほうが、地下深く潜らなくて済むんじゃね?」

『それでは周囲の目に触れてしまいますが、よろしいですか?』


 サフィロは聞いてきた。


『どの道、そこから掘り出す手間自体は、地上と地下、どちらでやってもあまり変わりませんが?』

「人目につくのはよくないな」


 掘れば武具や魔石が出るものを地上に引っ張り出せば、手を出す輩は出るだろう。それにどうやって地下の土砂を地上に持ってきたのか、なんて余計な詮索を生む。これ以上、面倒な言い訳考えるのはヤダぞ、俺は。


「地下でやろう」

「そうしよう」


 次に、実際にどうやって土を掘るかであるが――


「ちょっとやり方を考えないといけないな。これまでのゴーレムでの掘り方では、発掘した武器や防具、魔石を砕いてしまう可能性がある」


 ミスリル銀を掘るために、ゴーレムをガンガンに使っていた俺である。採掘用に手先を変えて作り出したゴーレムは固い土や岩も砕く。ミスリル鉱石はその硬度から、ストーンゴーレム程度では割れない。だから構わず掘らせたのだが、今回はそうはいかない。


「そんなわけで、サフィロに確認したいのだが、君をゴーレムのコアとして用いた場合、かなり細かな作業もこなせるようになるのではないか?」


 できるかどうかの確認が必要というのは、それである。

 先日、魔法車を走らせることができるかと聞いた時、『直線を走らせる程度なら』と答えた。ほかはデータが不足しているから無理と言っていたが、裏を返せば学習すれば可能ということだ。魔法車が運転できるのなら、ゴーレムを自分の手足として動かすことができるのではないか、と俺は考えたのだ。


『可能か不可能かと問われたら、可能です』


 おお、大丈夫か。ならある程度、ゴーレムが大雑把に掘った後、回収物を壊さないように注意しながら繊細な作業ができるということになる。


「でもよ、サフィロは一つしかいないぜ、ジン?」


 ベルさんは鼻を鳴らした。


「サフィロコアのゴーレム一体に全部やらせたら、どれだけ時間がかかると思う?」

『その件につきましては、解決策を提案できます』

「本当か、サフィロ?」

『はい、マスター。少々魔力を消費しますが、コピー・コアを用いれば、数の問題は解決します』

「コピーコアだ? なんだいそりゃ?」

『ダンジョンコアの複製体です。本来は拡大したダンジョンの監視および制御ユニットであり、時にダミーとして外敵の注意を引くなどを目的としたものです。本体ほどの能力はありませんが、ある程度の機能を持たせることが可能です』

「つまり、ゴーレムのコアを、そのコピー・コアが務めれば、かなり精巧な命令や作業をこなせるゴーレムを作り出せるということだ。それも複数」


 俺は手を叩いた。いいねいいね。ゴーレムの数が増えれば回収ペースも上げられるし、回収作業をコピー・コアに代理させながら、サフィロ本体は魔法車のエンジンコアに戻すこともできるってことだろう。


「よし、それでいこう。そうとなれば、コピー・コアを搭載するゴーレムを考えないとなぁ……!」


 俺は机に向かうと、羊皮紙を置き、羽根筆とインクを出した。

 机の上のベルさんが、ペタンと尻尾を倒した。サフィロは不思議そうな声を出した。


『マスターはどうされたのでしょうか?』

「さあな。何か、創作欲を刺激したのかもしれん。魔法車もそうだが、あいつはあれでゴーレムについても色々やってきたからな。……なんだっけか。ろぼ……ろぼっと、だか何だかってやつとか」


 ベルさんとサフィロを他所に、俺は羽根筆を走らせる。以前から、漠然と考えていたことがある。

 それは日本の男子なら一度は夢想したことがあるだろう代物――すなわち、『人型戦闘兵器』思想である。……もちろん、異論は認める。



  ・  ・  ・



 ゴーレムとは、元々はユダヤの伝承に登場する泥人形だったと記憶している。まあ、俺の中では、ファンタジー系のゲームに登場するものを連想するがね。


 素材は泥、岩、鉄、その他魔法金属などなど。この世界でも、まあそういうものらしい。

作った主人の命令を忠実に実行するが、基本的に頭はよくない。単純な作業をこなす程度しかできないので、繊細な行動や細かな命令は対応できないのだ。


 元祖『脳筋』キャラ――この場合はキャラではないか。ゲームの仕様によっては、攻撃力より素材ゆえの耐久力の高さが売りだったりする。戦わせるにしても、壁役だったり、パワーを活かした破壊だったりする。その代わり、動きは鈍く、また先にも言ったように判断力はイマイチだ。


 俺も、ゴーレムを創造魔法で作り出すも、頭のよさについては正直お手上げだった。魔法文字を刻むなんてのは容量的に不可。むしろ今の状態でも頭の悪いなりに単純命令をこなせるだけ、実はとても凄いことなのだと言わざるを得ないのが現状だ。……コンピューターとかAI技術ってのが、いかに優秀か思い知らされる。


 この世界の人間は、ゴーレムの頭の悪さについて不満はあれど、そういうものだと思い改善する努力はあまりしなかった。だが、もとの世界でロボットモノなどに触れている俺としては、どうしても未練があった。


 が、ここにきて、そのゴーレムの欠点を補う方法が見つかったのだ。

 ダンジョンコアを、ゴーレムのコアにする。特にサフィロのような人工コアは、古代機械文明の遺産ではあるが、言ってみれば人工知能みたいなもので、ゴーレムなどより遙かに頭がいい。

 自律兵器としてのゴーレムの進化。いや、兵器に留まらず工業やその他作業にも用いることができる。……一気に夢が広がるな!


 というわけで、俺は暗くなるまで作業に没頭した。


 なお、夕食に呼ばれ、アーリィーに何をやっていたかを問われたので、新型のゴーレムを考えていた、といったら、いまいち理解してもらえなかった。……ふーん、アーリィーは女の子だもんね。そうだよな、うん仕方ないな。


「男の子にしかわからない夢さ」

「う……わ、わかるもん! ボ、ボクも男の子だからね!」


 メイドたちの手前、そっぽを向きながらそんなことを言うアーリィーだった。

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