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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1189/1886

第1181話、ファーストステップ


 プロヴィア王国北にあるアンノウン・リージョン。地下世界の入り口である大地の大穴は、ここでは渓谷状になっている。


 大地の裂け目とも言われ、底なしの大峡谷は人々に畏怖(いふ)を与えていた。


 現在、この地下世界の入り口は、スティグメ帝国の艦隊が支配している。


 俺たちシーパング同盟のウィリディス軍は、ここを制圧し、地下世界攻略の第一歩を踏み出そうとしていた。


 超戦艦『バルムンク』の司令艦橋に俺はいた。専用席から参加艦隊指揮官のホログラフィックと対面しつつ、最終確認を行う。


「今回のファーストステップ作戦は、スティグメ帝国の地下領域のひとつを制圧することにある」


 現在確認されている9つの地下大都市空間。そのうち、出入り口が繋がっている大都市空間は、プロヴィア北と、ヴェリラルド王国トキトモ領の二つのみ。後は戦力の分散配置を避けるために塞いでやった。


「まずひとつ。吸血鬼の大都市空間を制圧できなければ、以後のスティグメ帝国本土攻撃も覚束(おぼつか)ない。吸血鬼帝国打倒のための、まさしく第一歩だ」


 だが、敵さんも、黙ってこちらを通してはくれない。


「偵察情報によれば、大峡谷侵入口には、敵艦隊が防備を固めている」


 戦艦は5隻のみだが、クルーザーが40隻、フリゲートが100隻近く存在しており、さらに地上に航空機用の基地も作られている。隻数だけなら、こちらの第7、第8艦隊を合わせた数より多い。


「まずはこれらを排除しなくては、地下への侵入もままならない」


 作戦はこうだ。


 シーパング艦隊こと第7艦隊、シェード艦隊こと第8艦隊が、正面より進撃し、敵艦隊を吸引、攻撃。

 侵入口に艦艇が残っているようなら俺のバルムンク艦隊、ベルさんのレーヴァテイン艦隊、青の艦隊が側面攻撃する形で攻撃し、必要なら正面艦隊と合同で包囲撃滅(げきめつ)する。


 シャドウフリートは、大峡谷侵入口周辺の敵航空拠点を空爆する。


 アーリィーの第3艦隊は、第7、第8艦隊のエアカバーをしつつ、状況によって敵艦隊や敵地上拠点への攻撃を行う。


 敵艦隊と航空基地さえ片付けたら、特別攻撃隊が攻撃を開始する。魔力消失装置を用いた攻撃により、大都市空間の吸血鬼を電撃的に殲滅する。魔力消失装置が使えるまで、激しい抵抗を受けるだろうが、スーパーロボットやそれに類する兵器の性能とパイロットの腕を信じて、ゴリ押しである。


「正面艦隊の指揮は、シェード将軍に任せる。セプテム提督、第7艦隊は、第8艦隊の指揮下に入れ」

『承知しました閣下』


 シェイプシフター提督であるセプテムのホログラフィックが首肯した。


 先のプロヴィア王国奪回作戦の主力となった第7、第8艦隊は、航空機を多少損耗(そんもう)したものの、艦艇の被害は皆無だった。


 そして今回、第7艦隊は、以前のセイスシルワ救援の際に損傷し、ドック入りしていた艦艇群が戦線に復帰している。


 戦艦『マサチューセッツ』『テネシー』『ネヴァダ』の復帰により、第7艦隊は戦艦が9隻となり、さらに数が少なくなっていた護衛艦も新たな増産分が合流していた。


 小型艦艇の補充は、第8艦隊も同様である。


 今回、正面を担当する両艦隊は、第7艦隊が戦艦9、空母9、軽巡8、護衛艦20。


 第8艦隊が、戦艦4、巡洋戦艦2、空母3、軽空母3、重巡4、高速巡1、コルベット5、フリゲート21、強襲(きょうしゅう)揚陸艦(ようりくかん)3となっている。


「シェード君、頼んだよ」

『はい、閣下。……よろしいでしょうか?』

「構わないよ、将軍」


 シェードから、今回の作戦は前哨戦であり、艦隊戦力の消耗は極力避けるべきであるという進言が出た。故に使えるものはドンドン使って短期決戦が望ましい、と。


「よろしい。その判断も含め、君の好きなようにやってくれ」

『ありがとうございます、閣下』


 艦隊間の動きについて最終確認の後、いよいよファーストステップ作戦は開始された。


 ウィリディス軍の大作戦。しかしこの時、スティグメ帝国もまた大作戦を発動していた。



  ・  ・  ・



 シェード将軍率いる第7、第8艦隊の連合艦隊は、一路、プロヴィア王国北アンノウン・リージョンへと進撃していた。


 後方、遥か彼方には、アーリィーの空母機動艦隊。目的地付近にはステルス行動のバルムンク艦隊、レーヴァテイン艦隊などが動いている。


 一方、スティグメ帝国守備艦隊は――


「動きませんな」


 旗艦『オニクス』の艦橋。ルンガー艦長は偵察機の報告に眉をひそめた。


「すでに敵の索敵圏内に入ったと思われますが……」

「無闇に飛び出して、伏兵(ふくへい)がガラ空きとなった入り口に侵入するのを警戒しているのだろう」


 先のプロヴィア王国を守備していた敵艦隊のように、猪突猛進の指揮官ではないということだ。


「艦隊はこのままでよろしいですか?」

「変更なし。こちらは堂々と進撃する!」


 シェード艦隊は、さらに目標との距離を詰めた。


 艦隊からアンノウン・リージョンが目視できる範囲に接近するまで、交戦は起こらなかった。


 嵐の前の静けさ。いずれ生起するだろう決戦に、皆の緊張が高まる。


 無数の黒い点は、スティグメ帝国軍の空中艦艇。そしてそれは敵にも、シェード艦隊が同じように見えただろう。


「敵艦隊、迎撃態勢に移行しつつあり!」


 さすがに敵を前にして、何もしないわけがなかった。スティグメ帝国艦隊は、その全力を以って、連合艦隊に向かってきた。


 複数の横列を上下に幾重に重ねた壁――ウォール隊形を形成し正面からの撃ち合いに持ち込む算段だ。


「先制攻撃を掛ける」


 シェードは短く命じた。


「第8艦隊戦艦群、横列に展開。魔導放射砲、発射用意!」


 マールカル級戦艦、アルタール級巡洋戦艦ら5隻が、横一列に展開する。


「発射!」


 豪砲炸裂。極大魔法の一撃が一斉に放たれ、光は、スティグメ帝国艦隊を襲った。戦艦も、クルーザーも、フリゲートも区別なく、光に飲み込み、そして塵へと化す。


 その一撃はスティグメ艦隊の約9割を蒸発(じょうはつ)させた。


「恐るべき威力ですな」


 ルンガー艦長は苦笑した。


「我々だけで何とかなってしまいそうです」

「今回の作戦は、序の口だ」


 シェードは頷いた。


「閣下にも進言したが、できるだけ損害なく済ませるのが今後の作戦展開にも大きく影響する」


 クーカペンテ解放、そしてプロヴィア解放と艦隊は連戦である。勝ってはいるが損害も出ている。今後も戦い続けるならば、やはり被害は抑える必要があるのだ。


「それに、艦隊戦は前座だ。敵都市の攻略が本番なのだ」

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