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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第1112話、シェードとの面談


「こうして直接会うのは初めてですね。初めまして、ジン・アミウールです」

「マクティーラ・シェードです」


 戦艦『バルムンク』の艦長室の隣にある会議室。俺は、大帝国のシェード将軍と挨拶(あいさつ)を交わした。


「救助していただき、ありがとうございます……と言うべきでしょうか?」

「いえ、恩を着せるつもりはありません。我々が勝手にしたことですから」


 シェードが困惑するのも無理もない。大帝国内の内輪揉めで拘束されたシェードを、敵対こそすれ助けるなど普通はあり得ない。


 そもそも頼んでもいないのだ。何か目的があるに違いない、と俺たちを警戒するのも当然である。


 室内にはエルダーエルフのニム、魔法人形の子供たちを代表してレウが、ウィリディス側にいて、シェード側には彼の副官であるセラスと、どういう経緯があったかは知らないが同行しているルンガー艦長がいる。


 なお、オブザーバーという形でグレーニャ・エルもいた。


「ジン・アミウール殿、勝手にしたこととおっしゃるが、理由を聞いても?」

「お気を悪くしないでいただきたいが、本音を言えば、目的はそちらのセラス嬢です。失礼ながら将軍、あなたはついでだ」

「ほぅ」


 シェードは皮肉げに口元を(ゆが)めた。百戦錬磨の猛将をついで呼ばわりはさすがに気を悪くしたかな?


「つまりは、魔神機の操縦者を大帝国から奪うつもりだった、と」

「それこそついでです。理由をあげればもっと個人的な理由ですよ」

「個人的な……?」


 ピクリとシェードは眉をひそめる。俺は紅茶のカップを手にとった。


「娘を助けたいと思うのが、親というものでしょう?」

「親……?」


 思いがけない言葉だったのだろう。シェードは呆気にとられた。自分の話をしている、と思っていたセラスもまた同様だ。


「血の繋がりはありません。そちらにいる彼、レウも私の子です。……彼女と同じで」


 俺はセラスへと視線を向けた。


「セラスは記憶を失っているとか? わかる範囲でお答えしますが、よろしいか?」

「彼女の過去を知っている!?」


 動揺(どうよう)している。シェードにとっては、セラスは個人的な副官以上の感情を抱いているのだろう。


「9900年以上前、魔法文明が存在したことはご存じかな?」

「魔法文明……」


 呟くシェードに、ルンガー艦長とグレーニャ・エルがピクリと反応した。前者は驚き、後者はかつての自分との関わりから。


「ええ、アポリト帝国という国があったとは聞いています。大帝国の兵器は、その文明のものが多く使われている……」


 ちら、とシェードは、グレーニャ・エルを見た。彼女は俺を見て、何か言いたそうな顔をしている。……こっちが振るまで黙ってなさい。


「エルから聞きましたか? 彼女も、そのアポリト帝国の生き残りで、風の女神巫女であるという話を」

「資料は読みました」


 シェードはじっと俺を見た。


「あなたは、グレーニャ・エルとも何やら親しげに見えたのですが……。いや、今はセラスの話を」


 ……拗ねない拗ねない、エル。お前の話も出るから、たぶん。


「単刀直入に言えば、セラスはアポリト帝国で生まれました。彼女は、そこのレウと同じ魔法人形と呼ばれる実験体として育てられました」


 魔法文明時代の人間――その言葉に、大帝国勢は驚いた。シェードは、レウを見た。


「魔法人形とは……?」

「アポリト帝国で作られた魔神機などの兵器を扱える人間。大帝国でも人間を改造して兵器にしている部署があるでしょう? アレと同じです」


 シェードとルンガー艦長は複雑な表情になった。ぼかしたが、もしかしたら名前くらいは知っているのかもしれないな。


「セラスに魔神機の適性があったのは、そういう理由ですよ。あの時代で、リダラ・ドゥブ――黒騎士なんて呼んでいるんですが、あれを彼女が動かすのを見てますし」

「……以前、診断を受けた際に、改造を受けた形跡があると聞いていましたが……そういうことですか」


 シェードは目を伏せる。ルンガー艦長が口を開いた。


「信じてもよろしいのですか? 9900年以上も前? にわかには信じられないのですが」

「おいおい、艦長。あたしもあの時代の生き残りだぞ!」


 グレーニャ・エルが口を挟んだ。しかしルンガー艦長は――


「そう聞いてはいるが、信じているかは別問題だ」

「んだよ、信じてなかったのかよ!」


 グレーニャ・エルは頭の後ろに手を当てて、ソファーで伸びをした。シェードは俺を見た。


「セラスのこと、事実だと証明する証拠はありますか?」

「彼女が身につけている指輪がありますよね。あれは私が作った転移の魔法具なんですよ。向こうの世界で危機に陥った時、この時代へ飛ばすための。……レウたちもそうやってこの時代にきました」

「あっ!?」


 グレーニャ・エルが叫んだ。


「それ、どこかで見た気がしてたけど思い出した! センセ、それリムネも持っていた。転移の魔法具だったのかよ! なんであたしにはくれなかったのさ!」

「数が足りなかったんだ、すまんな」


 というか、ちょっと黙ってなさい。


「この時代に飛ばす魔法具……」

「私の作りが甘かったのか、あるいは転移の時に、何らかのファクターが加わって転移場所と時間が狂ってしまったのか……。彼女が記憶がないのは、それも影響しているかもしれません」


 俺はレウに合図する。彼はお守りとして持っている転移の指輪をテーブルに置いた。シェードとセラスはそれをじっと見つめる。そしてセラスは自分の持っている指輪と見比べる。


「同じもの、みたいです……」

「ふむ……」


 セラスとシェードはそれっきり黙り込む。頭の中でこれまでの情報を整理しているのだろう。


 やがてシェードは言った。


「セラス……彼女の本当の名前は?」

「私はアリシャと名付けました」


 俺は正直に答える。


「あなたと同じです。私が彼女を、いや魔法人形の少年少女を保護した時、みんな名前ではなく番号をつけられていた」


 だから、本当の名前はわからないのだ。レウも瞑目した。


「よろしいでしょうか?」

「何でしょう、ええと、ルンガー艦長」

「失礼な質問なのですが、あなたはいったい何者ですか?」


 ルンガー艦長は問うた。

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