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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第1051話、古代樹の森攻防戦・三日目


 大帝国軍エルフの里攻撃軍、陸軍前線司令部。


 天幕が張られた野戦司令部にいた、フェール陸軍中将は、飛び込んでくる報告に苦虫を噛み潰したような顔になっていた。


 エルフとシーパング軍――彼らはシーパングの軍勢だと思っていた――による度重(たびかさ)なる襲撃は、帝国陸軍に出血を強いている。


 ここはエルフのテリトリーである。待ち伏せや奇襲など、当然想定されていた。だからエルフの軍を圧倒できる数と、機械兵器を前面に押し出したが――


「損害が多すぎる!」


 当初の予想を遥かに上回る損害が、すでに報告されていた。特に前線に配備された魔人機やゴーレムの損害が大き過ぎた。


 エルフなど蹴散(けち)らせる、シーパングの人型兵器が出てきたとしても数で潰せる……その結果が、こちらの機械兵器の大損害である。


「にもかかわらず、敵に与えた損害が微々たるものでは話にならん!」


 そうなのだ。巧妙(こうみょう)な待ち伏せがあろうとも、結局のところ戦いは数である。奇襲から立ち直り、反撃に出れば、敵にも少なからずダメージを与えられるものだ。


 だが、前線の報告では、味方の損害ばかりが目立ち、襲撃してきた敵の撃破数は、かなり少なかった。


「しかし、将軍閣下」


 エルフの里攻撃軍の幕僚(ばくりょう)たちは言った。


「損害は多いものの、現実として我が軍は世界樹近くまで部隊を進出させており、明日には世界樹もろともエルフの里を攻撃できます!」

「実際に追い詰められているのは、エルフどもの方です。現在の兵力でも、我が軍は敵を圧倒しております!」

「……敵はジン・アミウールがいるという話だぞ」


 フェール将軍は、口をへの字に曲げる。


 ここまで敵軍に対して一矢報いているシェード将軍から聞いた話だ。エルフに協力している敵の指揮官は、死んだと言われていた英雄魔術師ジン・アミウールだという。


 果たして押しているなどと、本気で考えていいものかどうか。


「閣下、相手がもしジン・アミウールならば、軍の頭脳である司令部を奇襲してくるのでは……?」


 幕僚のひとりがそう言った。


 連合国との戦争、ジン・アミウールが猛威をふるっていた頃、あの神出鬼没の魔術師は、大魔法で指揮官ごと本陣を吹き飛ばすことを得意としていた。


 帝国が押しているという戦況をそのまま受け取るならば、一発逆転を狙ってここ司令部を襲撃してくるのではないか――


「その司令部叩きに備えて、シェード将軍から魔神機を借りているのだ」


 シェード遊撃隊の風と土、そして水の魔神機が守りについている。生半可な兵力ならば、返り討ちである。仮にジン・アミウールお得意の極大魔法と言えど、魔神機の防御障壁は操縦者の魔力によるブーストと合わせて阻止できると考えられていた。


 その時、天幕の外が騒がしくなった。そして通信担当士官が急ぎ足で現れる。


「将軍閣下、緊急報告であります!」

「何事か?」

「前線に展開中の第十五旅団、敵の襲撃を受け……か、壊滅(かいめつ)しました」

「!?」


 幕僚たちの表情が固まった。


 二日目までの前線にいた部隊を下がらせ、代わりに前に出した第十五旅団。ほぼ無傷のこの部隊は、明日のエルフの里攻撃の主力となる予定だったのだが、やられたという。


「旅団が壊滅だと? そんな馬鹿な!」


 二個連隊を有する戦力が撃破されたという。エルフ・シーパング連合軍が総力を上げて、決戦を挑んできたというのか? それでも敵兵力は、第十五旅団の半分以下と予想されていた。それで旅団が壊滅するなど考え難いことだった。


「いったい何があったのだ? 敵はどんな手を使ったのだ?」

「それが……」


 通信士官は、報告の紙に目を落とし顔をしかめた。


「信じられない話なのですが――」

「構わん、報告しろ!」

「はっ! 沼が出現した、と……」

「沼だぁ……?」


 フェールは耳を疑った。幕僚たちも同様だ。


「沼とはどういう意味だ?」

「言葉通りの意味です。古代樹の森の中に沼が出現し、第十五旅団は泥沼に足を取られ、エルフら敵軍の攻撃を受けたとのことです!」

「寝ぼけるな! 沼が出現などするものか!」


 主席参謀が叫んだ。


「木じゃあるまいし……湧いてきたとでもいうのか」

「……」


 通信士官は、だから嫌だったのに、という顔になる。


「報告では、そのように」

「……魔法、か」


 フェールは、幕僚団にいる魔術参謀を見た。


「確かに地形を泥濘(ぬかるみ)に変えて、敵の足を止める魔法はあります。しかし……」


 言いよどむ魔術参謀に、フェールも頷いた。


「そうだ。旅団ひとつを丸々動けなくするような魔法など、想像できない」

「これも、ジン・アミウールの仕業でしょうか……?」


 幕僚団は押し黙る。エルフの里を目の前にしながら、攻撃の主力となる戦力を一挙に失った。まだ兵力があって、おそらく敵兵力を上回っているが、不安が尽きない。


「……シェード将軍を呼べ」


 フェール中将は、唸るように言った。


「我々は、何としてもエルフの里を攻略せねばならない。皇帝陛下の御命令を果たさねばならんのだ」


 そのためならば、如何なる手段を用いようとも勝たねばならない。敵がかの英雄魔術師なら、大帝国軍が誇る常勝将軍と謳われたシェードの頭脳が必要だ。



  ・  ・  ・



 大帝国の正面戦力を泥沼にはめて、動けなくなったところを射撃武装で撃破する。


 エルフ・テリトリーである古代樹の森を、大破壊攻撃で吹き飛ばすわけにもいかず、じゃあ、損害なく帝国軍を減らすにはどうすべきか、考えた結果がそれだ。


 古代樹とその周りを除いて、地形を泥の海に変えてやれば、大帝国の兵は足をとられた。


 特に大型盾や重甲冑をまとう連中は、泥沼にはまり動けなくなった。さらに魔人機やゴーレムなども、その重量からズブズブとはまって、こちらも戦闘能力を大きく削がれた。


 俺とディーシーによる地形変更――ダンジョンコアのテリトリー操作の魔法が炸裂(さくれつ)である。


 動けなくなった敵に、エルフアーチャーが矢を放ち、ウィリディス兵がライトニングバレッド魔法銃や迫撃砲を駆使して、泥の範囲の外からひたすら射撃した。


「足場は大事だ」


 しっかり踏みしめる地面があってこそ、まともに戦うことができるのだ。


 三日目、ここでも大帝国軍侵攻軍の戦力を大きく削ることに成功した。これで、残す敵は、ウィリディス・エルフ連合軍の2倍程度となった。


 陸戦での勝ちも見えてきた。


 ただ気がかりはある。これまで敵司令部の防衛に張り付いている魔神機の存在だ。明日、敵が進撃を断行するなら、魔神機も投入してくる可能性がかなりあった。

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