文化住宅の春
薄れがかる思い出は
灰色の街に置いていく
幸せに生きてみたいとか
そういう風に生きてみよう
あの楡の木にさよならと
精一杯の愛情を
文化住宅の三度目の春は
冬の寒さに凍えて去った
別に悲しむ事でもないけど
地下鉄の匂いが
人いきれが
私の価値を拒む
遅れた列車に戸惑って
あの歌のキー、忘れた
あの楡の木にさよならと
そして最後の愛情を
文化住宅の三度目の春は
冬の寒さに凍えて去った
別に悲しむ事でもないけど
文化住宅に春は来なかったよ
根を張る物を引き千切って
裸足になった