どうにか生きています。
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「プリンちゃん、水運んできて」
『ブヒ』
「あ、ヨーコちゃん丁度良かった、ビスがそろそろ収穫出来るんじゃないかと思うんだよね、見てきてくれる?踏んじゃ駄目だよ?」
『キュルル』
「ミキオ君!!それは食べちゃ駄目って言ったでしょ!」
『ッフギャニ!!』
毛を逆立てて飛んでいく猫もどきのミキオ君を見てフゥと息をつく。あ、猫もどきっていうのは猫に良く似た姿をしてるけど羽が生えてたり、プリンちゃんは豚に似てるけどフサフサの尻尾を持ってる。それにヨーコちゃんは体が余裕で普通車一台分の大きさがあるトカゲに似たウサギ?だ。
他にも、空飛ぶモグラのグピー君とか犬の吠え方をするペンギンみたいなマルちゃんとか、変則的な動物達が沢山いる。
あ、名前はわたしが勝手につけちゃった。それ位させてね?
わたしはルー。本当の名前は引くくらい長い。この変則的な森に住む至って普通な女の子、色々説明がつかない事はありますが、普通っていう所是非強調させて。
この間十六歳になった筈が、ビックリする程の幼児体型……いや小さな体は、今のわたし。
うん、何だか難しいけど、わたしにはこの体になる前の記憶がある。
だから、初めは、あのファンタジー小説でよくあるトリップってやつなのかと思ったけれどもそうでもないらしいんだな。
記憶がある、ただそれだけだ。
転生、というやつなのかもしれない。
その記憶が時々胸を酷く締め付けて、真っ黒な孤独感を占めて、自分自身を否定してしまう要因であったとしても、わたしの一部だと受け止めるしかない。
わたしの記憶が正しければ、地球での最後の景色は、真っ黒。いや、何人かの人間の顔、それから悲鳴。真っ赤に落ちる鉄の味、それを意識して、目覚めた時には此処にいた。
交通事故、だったんだと思う。衝撃でよく覚えてない。
だから、死後の世界って本当にあるんだって思ったんだよねぇ。
だって、広がるのは優しい緑。青い空は無いけど、幻想的なオーロラのような虹色が頭上には広がって、更にこの場所を囲うのは、透明過ぎて深いエメラルドグリーンに見えるキラキラした泉。
世界は、わたしの知っているものとは形を変えて、記憶さえも曖昧になっていく。
母親、という唯一の存在がいつも寄り添ってくれていただけわたしは幸せなのかもしれない。