超人対決を見た日
ルー視点に戻ります
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一体何が起こっているのか。
あたしは腕を組んで、首を捻る。
今まで真面目に生きてきた。基本的に貧乏性なあたしは物を壊すなんて事はしなかったし、贅沢な暮らしをしてきた訳でもない。《地球》で生活していた前世だって、つましく、ボランティア活動にだって精を出した筈。天国に行こうとは思わないまでも、次に産まれ変わるなら穏やかに生活したいと望んだのは高望みだったのか。
────ドゥォォォォン!!……ズコッ
突如いきなり突風が吹いて、あたしの頭を木の枝が直撃した。最後の間抜けなズコッはその音だ。かなり痛いよ。たんこぶ出来たよ絶対。
あたしの意識を逸らした所で、目の前では物騒過ぎる光景が繰り広げられている。
なに、この超人対決。
思わず口から魂抜けそうになったのは大目に見てね。
だって。
今目の前では猛々しい紅い炎が静寂な青い光に食ってかかっている。その道筋はモーゼのように風圧の道が出来、巻き起こるのは熱風に似た熱さ。闘気ってゆうのかな、コレ。ゼンらしき紅い塊はいつのまにか身の丈程もある大剣を片手に悠々と従え、びゅんびゅんと音を立ててサキらしき青白い光を攻撃している。周りの空気が一段と重く、堪え難い威圧。ここだけ色々重力無視ですね、分かります。
対するサキは、青白い光を纏って、その全ての攻撃を紙一重でかわしている。そのスピード、あたしの変人じみた動態視力を持ってしてもついていかない。
なんか、二人とも見事なのは分かったよ。
だけどさ、さっきからね、飛ぶんだよ、髪が。
グルグルに巻き付いてサナギみたいになってるよ。ついでに木の枝やら葉っぱやらがバンバンあたしに向かって飛んでくるさ。ええ、時にそれは刃物よりも危険なんです。
あたしがこの場所に来たのは理由がある。姿の見えなかったサキも丁度出てきたみたいだし、あの大飯ぐらいのゼンと伴におやつの時間にしようと声をかける所だったんだ。
……もういいや。帰ろ。
沸々と言いようのない呆れを堪えてあたしは背中を向ける。見なかったことにしよう。ビバ、平穏。
最初の一歩を踏み出そうとした時、カコーンと良い音がした。
あたしの頭を、家の横に置いてあったビスが直撃した音だ。めちゃくちゃ痛い。
……堪えろ、堪えろあたし。頑張れ自分!
意識が遠くなりかけたのを必死で奮い立たせる。
けれど、家の前に山積みにしてあった保存用の食料達がガタガタと原形なく散っていくのを目にした瞬間、ぷつりと何かの音がした。
「とりあえず、やめんかーーーい!!!」
あたしは力の限り叫んだ。
そのゼェゼェハァハァな渾身の声に振り返ったのは、サキだ。
「……ぬ、ルー何を遊んでおる?」
その凄絶な美貌をイチミリも歪ませず、放った言葉はあまりにも見当違いだった。
「小娘、なんだ酷い有り様だぞ?用があるなら格好を整えろ」
その精悍な顔に乗る眉を僅かに歪ませて、放った言葉はあまりにも失礼だった。
二人は距離を変えず、あたしを発見すると、同時に言葉を発した。
落ち着いた風がざわりとあたしの長い髪を下から持ち上げる。
「なにいっとんじゃーー!!」
そしてあたしは再び力の限りに叫んだ。




