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赤い髪の傷の人2

 


 ───────……






「流石、とでも言えばいいか?気配は消したんだがな」



 サキのえらく物騒な攻撃の後。

 そのただ者とは到底思えない傷の男は、悠々と重低音のバリトンボイスを響かせた。横柄な態度、有無を言わず上に立つ者のオーラを身に纏うこの人は荒々しさの中に覆せない王者の気質を備えていた。



「今すぐ去れ」



 サキは静かだけど、確実に攻撃体制に入っていて刺すような視線を向ける。氷河と灼熱がぶつかったような幻覚が見えた。色んな意味であたしも限界かな。


「去るつもりは貴様の毛程もない。この場に紛れたのは不本意だが、貴様に会うとは思いもよらなかったぞ。何年───いや何十年振りか。変わらんな」


 スと目を細めた琥珀の瞳は、そこまで言い終えると、今までの殺気を押し殺していただけのように解放した。

 ブワリと大気が揺れる。油断したらぶっ飛びそうだった。

 っていうか、何この超展開。サキ知り合い?こんなムキムキな人、歩いてるだけでも人殺せそうだよ?あ、ていうかサキもその指先、有り得ないからちょっとしまおうか。うん。


 とりあえずサキのおなか程までしかない身長を必死にジャンプさせる。はっっ!あたしの身長とサキの足の長さが同じじゃね⁉︎

 今更気付いたんだけど!く、屈辱……うう、しかしこの破壊兵器の指先を封じなければ!

 数える事十回目のジャンピングであたしはついにサキの手を捕獲した。


「…ルー、何をしておる?」


 首を傾げたサキの瞳は氷河期を終えて、少し困惑しただけど優しい色に変わっていた。


「ケンカはよくないよ。先に手を出したのはサキだし」


 あのさ、私は別に空気を読めない子ではないのだよ。取り込みそうなら風となってこの場を去ってもいいんだけどさ!そしたら自分の小ささを今更実感しなくても良かったんだけどさ!でも、あの破壊光線、まともに受けたら普通死んじゃうぜ?

 あの人真っ向から受けたみたいだけど、自分の体を虐めぬくドMな肉体派で余計なお世話なのかもしれないけど。


「我は悪くない。あやつが先刻から覗き見をしていたのだ。不愉快であろう」


「そんな事であんなの放っちゃ駄目でしょ!」


「ルーはこの前湯呑み中に我が無断で入った事に酷く怒っていた」


「それ当たり前だからね⁈」



 ……いや、サキのあの場合、あたしがお風呂に入る間、煮物が沸騰したら火を止めてね、って頼んだから、『煮え立って泡を吹いている』と伝えにきたんだ


 ……サキ、それが沸騰だよ。頼んだあたしが馬鹿だったんだよ。だが、しかし、裸体を見てよいという理由にはなりはしない。




「ハッ───」



 息を抜くように笑ったのは、傷の男。砕けた表情は今までの崩さない硬質な気高い物じゃなくて心底楽しそうだった。



「成る程。面白いものが見れた。こうまで毒気を抜かれると見事だな。《アファカーン》」


 ククと歪めた顔は、威圧感は感じなかったけれど逆にあたしを戸惑わせた。


「《アファカーン》?」


 なに?初めて聞くなんとも妙な響きに首を傾げる。


「…ああ、今は《サキ》と呼ばれたか、名まで与えるとは余程そのガキが可愛いと見える」



 鋭い眼差しがあたしに向けられて体が震えた。なんだ、コイツ。ガキ、とか言ってる割に向ける視線が好奇心の塊だ。コレ絶対面倒くさいやつだ。














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