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赤い髪の傷の人1

 誰に、何を言っているんだろう、その疑問はすぐに解決する事になる。


 ───ザッザッと土を踏む豪快な音がした。


 靡いた赤い髪は炎のように煌めく。


 身に纏う甲冑は、サキの波動を全身に受けた為かそれとも以前からなのか亀裂や綻びが見えるけれど、見事な物なのだとはすぐに分かる。

 頭から覆い被さるような猛々しい空気。全身から発せられるオーラを隠そうともせず、その人は真っ直ぐこちらに歩いてきた。

 彫りの深い端正な顔立ちに乗る琥珀の瞳が僅かに細まる。

 右目にざっくりと何かの爪痕が黒い線を引き、その痛々しい傷痕すら彼を彩る豪快な飾りにさえ見えた───────












 ***


 ウチは元々お母さんと二人で住んでいたし、そんなに広くない。実用性や機能を重視しようとしたあたしと反対にお母さんはピンク色を基調としたメルヘンチックなカントリー調を愛していた。

 自然に装飾も陶器のウサギちゃんだとかハートの形をした観葉植物だとか、可愛い物が多い。それに小柄なお母さんと言うまでもない幼児なあたしに視線を合わせた家具は全体的に小さい。

 トランプの記号を象った木目調の椅子は、クローバーとハートにスペード、ダイヤそれぞれの形の背もたれになっていて、お手製のフカフカ座布団付きでそれはそれは座り心地がよくて、無理をしたらあたしが二人分は座れる位の余裕がある椅子だ。お母さんがいなくなってからはそれに腰を預ける人がいなくなってどことなく寂しそうだった。




 だけど今。




 四つある椅子の三つは主人を持ち、ギシギシと重みを表す悲鳴をあげている。


 嬉しいのか?それとも嫌なのか?相手が椅子という無機物な為にいまだ疑問は解消されない。


「小娘、スープはまだあるか」


 重低音のバリトンボイスは確かに疑問文の筈だけど、空になった皿は早く次を入れろとばかりに既にあたしに向けられていた。

 殺気を隠そうとしないサキ、あたしは首を振ってサキを抑える。



 溜息を飲み込んで、皿を手に取った。



 なぜにこうなった。



 パステル色の強いこの住居にまるで似合わない大柄で長身な男が二人。可愛らしさとは対極にある筈の容姿はそれを最大限に生かした椅子に窮屈そうに腰を下ろしている。


 一人は目に映すのも困難であろう凄絶な美形。

 長い睫毛は今不愉快そうに下を向けているけれど、その下の紫の瞳はアメジストというよりも、紫がかったオパール。線の細い体は重労働なんてした事ないだろうなと思わずにはいられない艶やかぶりで息を吐く仕草さえも高貴だ。


 そして、もうひとり。

 並べられた簡易な料理を次から次に豪快に口に運び、見事な食べっぷりは見ているだけで爽快感さえ思わす。筋肉評論家がこの場にいれば太鼓判を押すであろう筋肉質な体は男性的で、彫りの深い顔立ちは美形というより男前、と表したい。


 あたしはスープを注ぎながら、先程飲み込んだ溜息を今度は思いっきり吐き出した。



 だから、なぜに、こうなった。



 その疑問文はさっきからエンドレスに頭に回っている。

 思えば、サキと出会ってからの数週間色んな事が起こった。サキとの出会いから始まり、驚愕の事実の連続。果ては、この明らかな肉食男の登場だ。まだそんなに会話をした訳じゃない。だけど、あの人は自己中俺様主義な肉食系男子だ。絶対。


 スープに焼きたてのパンを添えてあたしはこうなるまでの過程を思い出す。少し頭痛がした。











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