変なのに出会いました2
「…我に刃向かうか」
相変わらず水面に立つその人が、一切の表情を持たず、ミキオ君を見た。ビリリと空気が震えるような、尊大でいて、美しい声。
響いた音に、あたしの体に何かが走る。これは、絶対的な何かの声色だ。絹糸を紡ぐような繊細な声、それでいて、重みのあるトーン。というか、声まで良いってどうよ。
「ならば娘、我と共に生きよ」
この位置からでも見える長い睫毛が影を作って、薄い唇が紡いだ言葉にあたしは一瞬首を傾げた。
「娘よ、我の愛し子」
何、言ってんだこのお方は。
余りにも突拍子が無さ過ぎて、後半は聞き流してしまった。
だって、それよりも、
この人の、瞳は宝石みたいな紫。透き通る色は、あたしと同じ。
この世界に来て、初めて同じ瞳の色に出会ったかもしれない。
地球にいた頃の、《あたし》と同じその色。普段は黒いけれど光加減で紫紺へと色を変え、感情が高ぶるとはっきりとした紫に変化する。
それは異質で、容易には受け入れられなかった。
この異世界でも、違いはなく、奇異な目で見られる為に昼間、町に出る時は深いフードを被っていた。お母さんは『その色は特別なのよ。良いわねぇ~綺麗だし素敵~』とかキラキラした目で言ってくれたけど。綺麗、とは地球でも言われた事はあったかもしれない。だけど、特別、と言ってくれたのはお母さんだけだ。
「娘、名を名乗れ」
ああ、ちょっと瞳の色に感動してトリップしていた。とりあえず、話が通じるみたいだし、良かった。ん、良かったのか?
「あたしはルー。あなたは?」
「…ルー?そうか、愛し子よ。それは真名ではないな」
真名?あの長ったらしい名を名乗れと言っているのか?ていうか、愛し子ってなに。いつからあなた様の愛し子的存在に。私達初対面ですが。
「良い。名とは聞くものではない。視るものだ。」
……ユー何言ってんだYO!聞いたのはあなただYO!!
あたしのツッコミは軽く受け流され、その間にミキオ君が膝をついて座った。疲れたのか欠伸なんかしている。あの先程までの緊迫感は何処へ。
あたしが一瞬ミキオ君に気を取られている間に、髪がファサリと解けた。驚いて振り返ると、壮絶な美貌が近距離に。ま、眩しい。
「え、ちょっとまっ」
待って、何その瞬間移動。
「何百年待ったと思っておる。これ以上は待たぬ。」
「何だかよく意味が」
「ふむ。稀有な色を持つな。我は今歓喜に震えておるぞ」
いや、全く表情変わってませんよ。ピクリとも。
あたしの唇に凄絶美形がツと冷たい指先を這わす。ぞくりと背中に何かがまた走る。おいおい、あたしの見た目は間違いなく女児だぞ!精神年齢と実年齢はともかく!




