変なのに出会いました。
────帰ろっか!そうミキオ君に告げようとすると同時に、ミキオ君が視線をあたしから泉へ移した。ピンと伸びた耳がピクピクと動いている。
「どうしたの?」
ミキオ君のシャープな横顔を怪訝に覗きこんで、まさかあっちむいてホイなんて素敵な遊びじゃないよね?とか考えてみる。
だけど、そんな思考もミキオ君はイチミリも気にした様子はなく微動だにしない。
あたしはその目線の先を追うしかなかった。
そして、息を飲む。
心臓がドクンと跳ね上がった。
────勿論、良い意味じゃない。
やばい、なんかよく分からないけどやばい気がするぞ。
これが第六感とゆうやつなのかな、というか驚き過ぎて逆に冷静だ。
視線の先、
泉の水面に立つように、ソレは居た。
まるで、一枚の美麗な絵画のようで、幻のような姿は現実とはとても思えない。
空に星を散りばめたような、眩しい青銀の美しい長髪。白い肌にスゥと通った鼻筋、薄く色付いた形良い口元。位置づく全てのパーツひとつひとつが美術品になりそうな程整った容貌。何よりもその切れ長の瞳の色に見覚えがあった。だからなのか、その人間には有り得ない美に対して、恐ろしさよりも先に好奇心が働いたのは。
どれ位沈黙が続いたのかは分からない。
「…だ、だれ」
誰に問い掛けるでもなくあたしは無意識に呟いた。ミキオ君は動かない。目の前の人、いや人なのか?この容貌も去ることながら水面に立ってるだけでも尋常じゃないよね?経験からいうけど、結構深いよこの泉。
知らず眉を寄せたあたしに構わず、動いたのはミキオ君だ。
しかも、いつもの羽の生えたフワフワした猫ちゃんじゃない。
瞬く間に体が変化して虎よりも大きな体に。一緒に変化した翼がバサリと音を立てれば、泉がザーと波を立てる。顔も、猫っていうよりも虎に近い。色が真っ白だから神秘的だ。
というか、え、なに、そのスキル。フワフワした毛をもふもふさせてくれよ。
あたしが驚いた数秒の間にミキオ君は翼を広げてあたしの前に立つ。守られてるみたいだ、と気付いたのはミキオ君からとてつもなく威圧的なオーラが泉に向けて発せられていたからだ。
どうした、ミキオ君⁈
変だよね、あの人!分かるよ、すごく分かる!だけど、
「大丈夫だよ?」
あたしはミキオ君の背を撫でる。根拠はないけど、怖いとは思わないもの。関わりたくないなぁとは思うけどね!
「落ち着いて」
体を預けても潰れない大きさのミキオ君は頼もしい。その規格外な神秘性も、やっぱりミキオ君だ。
ゆっくり撫でると、ミキオ君はゴロゴロと甘えたように鼻を鳴らした。ああ、可愛い。




