居眠りして夢を見る。
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さてさて、今日のあたしはやる気が違う。この鬱陶しい程伸びた髪も今日は竜のマルちゃんと、空飛ぶグピーくんに手伝ってもらってトップで纏めた。量の割に軽い髪の毛で助かる。服装も、お母さんの着ていたワンピースを仕立てあげた物だ。若草色のスレンダーなワンピースは中々お洒落。
「よーし、じゃそろそろ行こっかあ!」
本日は未開発の泉北部周辺を散策です!
お供にミキオ君を連れてあたしは調子良くスキップして家を出た。
続く緑は本当に綺麗だ。虹色の空も幻想的で、何年この場所に過ごしても目を奪われる。あたしの記憶にある世界では考えられない美しい色は、その色素自体が言葉では言い表せない。毎日変化していくそれは毎日新しい驚きをくれるんだ。
だけど、流石に、
「つ、疲れた」
どれだけ歩いても走っても、景色に変わり映えが無い。いい加減、汗も滲んだし、はっきりいうと美しい景色にも微妙に舌打ちしたくなるし。
へとへとになって泉近くに辿り着くと、地面に大の字に寝転んだ。気持ち良い。
澄んだ空気が肺に行き渡ってフーと吐くとスゥと胸が軽くなる。
そうすると、睡魔が訪れて気怠い体にゆっくりと浸透していく。今朝は早起きだったもんなあとか緩い事を考えてひとつ欠伸をした。ミキオ君が甘えるように鼻を鳴らして擦り寄る。んぅ、可愛い。可愛い過ぎるよキミ。思わず頬擦りしそうになったけど、その鋭い爪が光ったからやめとくね。
それにしても、穏やかで何の音もないこの場所は安らぐ。
重くなってゆく瞼に逆らわずあたしは思考を手放した。
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────────
───「…き、…ゅ」
…ん、なに、
ああ、なんだ、これ、夢見てるのかな、だって懐かしい顔。
「何寝ぼけてんだ?」
低い優しい声。それよりも、あたしを見つめるこの瞳が、胸をキュウとさせる。
ゆっくりとその人はあたしの短い髪を掬って、サラサラとその感覚を楽しむように小さく笑った。
「なんで、」
そう口を動かせた筈なのに、声にならず重たい体を動かせもせず、あたしはぼんやりした狭い視界だけを見つめる。
「また、そんな顔して。」
その人は寂しそうに眉を曲げる。
「泣くな」
落ちる声はどこまでも優しくて、体中が悲鳴をあげた。
ねぇ、どうして、
もう《あたし》は要らないと、そう言って欲しいのに、
あなたは微笑んでくれるのかな。
嫌だ、イヤだ、と子供のように叫んでも、事実は何も変わらない。ただ、もしかしたら少しだけ、心が楽になったのかな。間違いなく後悔しただろうけど。
こんなに臆病な自分が嫌だよ。
どこまでも揺れて、立ってられない、弱さが悔しい。
伸ばしたい腕が、縛られているかのように動かない。
深い
深い孤独に沈んでゆく。




