4,金畑のカカシ
誤字脱字あればスミマセン\( _ _ )
晴也たちKGSC社が異世界に来た翌日、アトリエンの長であるドークの呼びかけで、ヴェスパルの街に存在する全ての工房のトップが集まった。中には、ドワーフや自称錬金術師も会合に赴いた。その数20名。
「ではこれより、ヴェスパル工房定例会を行う。みんな、座ってくれ」
ドークの呼びかけで長テーブルを囲んで座る工房長たち。しかし、一同の視線は、見たこともない服装に身を包んだ晴也たちに向いている。ゴツゴツとした防弾チョッキに、迷彩柄の戦闘服、そして黒光りのアサルトライフルを持った傭兵集団。そして、一人だけ銀髪の少女を膝に乗せ、質素でありながら気品がある服を着た青年。
「ドーク殿、質問よろしいかな?」
「構わん」
「彼らは何者だ?」
「そう、それが今から話す内容だ。今回みなを呼んだのはほかでもない、彼らの要望だ。彼らは異世界の武器商人、俺たちの作った武器を仕入れたいらしい」
それを聞いた工房長たちは騒然とする。
「異世界だとっ!?」
「そんなバカな!」
「その点については僕から説明しましょう」
晴也はそう言うと、祭神に黒板に日本語で字を書かせた。幸い、日本語が通じるらしく、文字の面でも隔たりがないことは確認済みである。
「ヴェスパル統合兵器廠計画?」
「えぇ……ではまず自己紹介から。僕は異世界から来た武器商人、KGSC社の社長、桐山晴也です。そして彼らは、僕の身辺警護を担う私兵です」
「けーじーえすしぃしゃとは?」
「こちらの世界でいう商会みたいなものです」
晴也は続けて説明に移る。
「今回のこの計画。単純に言わせてもらえば、皆さんで協力して作った兵器を、僕が売りさばくというものです」
「それは、俺たちに一つになれと言ってるのか?」
「はい、聞く所によれば、現在ヴェスパルの工房は、個々が注文を受けて生産する個別生産方式をとっているそうじゃないですか?それでは生産力は上がりませんし、個々の商品にばらつきが発生します。そこで、この街の工房を一つの大きな工房にして、集団生産方式ならぬ大量生産を行うと言う計画です」
説明を聞いた一人の工房長が手を上げる。
「ティーヤン兵器廠のフロストじゃ、質問よろしいかな?」
「どうぞ?」
「この計画のメリットとデメリットを教えてくれないか?」
「はい、メリットは効率のいい収入を得ることができる。デメリットは各々の個性がなくなることですね。言い忘れてましたが、この計画への参加は自由です。ですので、不参加を表明する方は今すぐ退席していただきたい」
しかし、どの工房長も退席しなかった。
「皆さんのご理解とご協力感謝します。では、次の話題に移りましょう。兵器の生産ラインの設定です。すでに、あなた方の工房で生産されている兵器は僕の手元の書類にリストアップされています。そして、その内容を統計して、個々の工房で一番作りやすい最適な兵器を割り当てようと思います」
『兵器種リスト
・刀剣「長剣・短剣・片手剣」
・槍「長槍・短槍・投擲槍」
・弓矢「複合弓」
・防具「板金鎧・小札鎧・鎖帷子」
・攻城兵器「弩砲・投石機・戦車・航空機」』
「簡単な内容ですが……」
配られた書類を目にした工房長たちは、首を傾げると晴也に訪ねた。
「キリヤマ殿、攻城兵器の欄に書かれている戦車と航空機とはなんですか?」
「今から説明します。戦車とは、字の通り戦う車。要するに、装甲で覆われた馬の中から兵士が槍を突き出すと言う光景をイメージしてください。そして航空機、これは空を飛ぶ乗り物です」
「そ、空を飛ぶだとっ!?そんなことドラゴンやワイバーン以外には到底無理だぞ!」
「とにかく落ち着いて下さい。別に、ドラゴンの様に早く飛べる兵器を作れとは言ってません。その場に停滞する乗り物でもいいんです」
「空を制するものは戦を制すだよねお兄ちゃんっ」
「よしよし、よく出来ましたねエヴァ」
エヴァを撫でた晴也は咳払いをすると、もう一枚の書類を配った。
「さて、兵器説明はここまでにして、本題に入ります。今回のこの計画、ヴェスパル統合兵器廠とは、ヴェスパルを巨大な組合にすることです。そこで、社名『東方統合兵器廠』の説明をしたいと思います。ヴェレーリナさん、説明をお願いします」
「はい。東方統合兵器廠は幾つもの工房が統合されています。そのため、部署を設立する必要があります。我々は、輸送や行商を目的としますので、営業部。社の方針を決める総務部、作業員などの人事を担当する人事部、利益や費用を管理する経理部、新兵器の開発を担当する開発部の5部に分けます。なお、キリヤマ社長は営業部の部長になります」
「では、僕は他の仕事がありますので、あとはこのヴェレーリナに代行してもらいます」
そうして部屋を立ち去る晴也、彼は武器商人であるため、会社のことはノウハウを得て詳しいヴェレーリナに任せた。彼女は祖国で一度、会社の設立を手伝ってもらっていた。
「しかし、本当に問題なのはまだこの世界の事を十分に知っていないことですね……まったく、ハラハラさせてくれるじゃないですかぁ」
晴也は口元に不気味な笑みを浮かべる。この世界は元いた世界と違う。銃が存在しない、戦車、戦闘機、駆逐艦すら存在しない中世ヨーロッパ風の世界だ。それに、魔法の存在も確認されている。彼の冒険心を揺さぶるにはそれほど時間は必要なかった。
「キャッ!」
「痛ッ?って、エレンさんではありませんか?大丈夫ですか?」
「はっ、はいっ!」
どうやら、角を曲がった所でエレンにぶつかってしまった晴也。彼は尻もちを付いているエレンに手を差し伸べる。
「すみません、僕の不注意のせいで……」
「あっ、いえっ!あ……気にしないで下さい……その……自分も走ってたので……」
手を取ったエレンは顔を赤くしてもじもじ喋り出す。
「あの……キリヤマさんっ!」
「晴也でかまいませんよ?僕だってエレンさんと呼んでますし」
「じゃ、じゃあハルヤさん……、私、親方様から魔法に付いて説明してやれと言われて……」
「ドークさんから?エレンさんが教えてくれるのですか?」
「技術屋としては見習いですが、魔法関連ではそこそこいい線に言ってますので……」
「ちょうどよかったです、僕は今、魔法について考えてたんです。よければ、基本の知識から教えてくれますか?」
「よっ、喜んでっ!」
「ここじゃなんです、外に行きませんか?」
「は、はい」
納得したエレンは、晴也と街に出かける。
こんな感じでいいかな……
異世界転生無双モノにならぬよう注意が必要だな(^^;;