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打ち砕くロッカ   作者: ジェームズ・リッチマン
第四章 輝ける姿
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杁011 飛び散る火花

 時間がくれば、あとはあっという間だった。


「よろしくお願いします」


 ルウナが胸に手を当て、ピシリと腰を折った。

 その手には既にワンドが握られている。


「よ、よろしく」


 雰囲気に呑まれ気味な私は、呑まれるままに礼を返した。


 第二棟最上部にある闘技演習場。

 私とルウナは、その壇上で向かい合っている。


 以前ナタリーとここに立った時ほどの盛況具合ではないにせよ、今回の観覧席も賑わっているように見える。ざっと横目に伺って、席の半分以下といったところだろうか。


「がんばれー」

「今日も楽しませてくれよー」


 前のような、罵倒混じりの声援が聞こえてこないのはありがたい。

 誰を応援するでもない、ただただ賑わうような声の集合体が、私とルウナを取り囲んでいた。

 人が多いのは緊張するけど、今日の壇上は幾分気楽だ。

 逆に、ちょっと誇らしいかもしれない。いい気分になってきた。


「今日は来てくれてありがとう、ウィルコークスさん」


 ルウナは闘志を燃やした強気な目をそのままに、口元だけで微笑んだ。

 けど、真顔でいられるよりもずっと怖い。


「まあ、なんだ。約束したからね」


 これは勝負だ。

 勝負の約束をつけておきながら逃げるなんて、それはさすがにあえりえないとも。


 そう、ありえない。

 ありえないのだから、気合を入れていこう。


「本気でいくからね、ルウナ」

「ありがとう。むしろ、そうでないと困るもの」


 私も鑽鏨のタクトを取り出して、ルウナに微笑みかけた。

 私達の間に、穏やかな火花が弾けた気がする。

 ところが観覧席側から渋い壮年の導師が間に割り込んだことによって、火花は一旦収まった。


「そろそろ開始となる。二つ名に変更のある者は?」

「え?」

「ロッカ=ウィルコークス、君は新しい二つ名に変更するのか」

「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど」


 思わぬところで青い瞳に問い詰められ、焦ってしまった。


「二つ名って、変更できるん、ですか」

「できる。変更は自由だ。自分の得意魔術を二つ名にする者は多いが、得意魔術も一定ではないからね」

「あ、そっか」


 それもそうだ。

 自分が頻繁に使う属性を変えてしまえば、使う魔術も大きく変わる。

 炎に関する二つ名を持っている奴が水魔術を得意としているなんて、そんなのは可笑しいもんな。


「変更はないね」

「はい」

「私もありません」

「この闘技演習は中級保護だ。ちょっとした怪我を負う前に転移が発動するため、重傷を残すことはほとんどないだろう。しかし、途中棄権は恥ではない。継戦不可能と思った場合には、すぐその意志を示すように」


 こっちの文言は前回同様に聞き流しておいた。

 上級保護でだって、自分から負けを認めるのはありえないことだ。

 中級なら、意地でも最後まで戦ってやる。


 私達が闘技演習への集中を深めていくのを察知したか、導師は観覧席側へと歩きだした。

 そろそろ始まる。私達も所定の位置につき、二十メートルの間合いを確保する。


 ……長い。

 二十メートル。

 遠距離攻撃の手段を持たない私にとって、やっぱりこの距離は、キツい。


「これより、“ストーミィ・ルウナ”および“クランブル・ロッカ”による、中級保護の闘技演習を行う!」


 黒い盤上に手をかざし、盤も白い床石によって飲み込まれる。全ての準備が完了した。

 後は合図をうけ、ただ闘うのみ。


「ふッ」


 左手に握った鑽鏨のタクトを、大きく真横に振る。

 魔術ではない。ただ気合を入れたかった。それだけだ。


 目を凝らし、遥か向こうのルウナを見やる。

 あちらもあちらで、錫杖(ワンド)を振りかぶっている。

 お互いに戦闘態勢は万全ということだ。


 合図がくれば、ルウナは杖を振るだろう。

 振った杖から何が来るか。それは、無学な私にとってはあまりにも未知ではあるが、遠くから使ってくる魔術ということは、すなわち何かを飛ばす術であることはまず、間違いない。

 私には遠くからの攻撃手段がないのだから、その対処をまず、真っ先に求められる。


 回避か、防御か……。


 観覧席の緊迫したざわめき。

 息を呑む聞こえざる音。

 一拍をおいた導師の長い“溜め”が、鋭い静寂を作り出す。




「闘技演習、開始!」


 始まる。


「“キュー(水よ)ディア(襲え)”!」

「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 二人の魔術は同時だった。




 鑽鏨の杖で突いた床からは石柱がせり上がる。

 五メートル。小さくも心強い壁が、闘技演習場の中央に顕れた。

 それと共に、ルウナが放った水も床に激しく打ち付けられる。

 巨大な水球は私とルウナの丁度中間に着弾して、大きく潰れて爆ぜた。


 “キュー(水よ)ディア(襲え)”。

 ナタリーとルウナの闘技演習の際には、ルウナが何発も使用した魔術だ。

 その効果は、杖を振って水の塊を飛ばす、至ってシンプルなもの。

 要するに小さな水流というだけなので、直撃しない限りには、威力自体はさほどでもない。


 しかしこの魔術の怖さは知っている。

 ルウナは床を浸した水を利用する戦法で、あのナタリーを追い詰めていった。

 風を操り水を巻き込んで、小さい嵐のようなものを作り出す攻撃。

 冷気を吹き付けて水を凍らせ、相手の脚の自由を奪う攻撃。

 どちらも、まともに受ければ致命的な魔術だ。

 私は床を侵食する水を上手く避けながら、ルウナと戦わなくてはならない。


 それは、昨日のうちに考えた。

 でも考えだして、すぐに壁に頭を打ち付けてしまった。

 当然だ。私にはそれらの術に対抗するための手段がないのだから。

 結論を出すのは容易だった。

 つまり、このルウナとの闘技演習。私はどう立ち回り、ルウナと闘うのか。

 答えはひとつ。


 術を使われる前に、勝つ。

 それしかない。


「おおおッ!」


 私はまっすぐ、ルウナに向かって駈けだした。

 ナタリーとの時のような、守りを固めながらの戦いではない。

 相手が強い術を使う前に、近づいて殴る。それで勝つ。それしかないのだ。だから走らなければならない。


 最初に生み出した石柱は、いわば保険。

 ルウナは開始前からワンドを構えていたので、ひょっとしたら最初から、回避すら難しいような強い魔術を使ってくるかも、という懸念があったのだ。

 しかしそれは杞憂に終わった。ならば、もうあとは何も気にすることはないだろう。

 避けて避けて、走って、殴る。


 悪いなルウナ、だけどこれでも私は本気なんだ。

 参考にならなくても、恨むなよ。


「接近戦! けど、させるもんですか! “キュー(水よ)ディア(襲え)”!」

「!」


 距離を詰め始めた私に対し、再びワンドが振られる。

 空中に生み出された透明な液体が、風を受けて広がりながら向かってくる。

 水は派手な音と小さな飛沫を上げながら、私に直撃するよりもかなり手前に着弾した。

 勢い良く咲いた一輪の水溜り。

 その直径は、およそ四メートルほどか。

 進行方向をちょっと斜めに切り替えるだけで、念を押して踏まずに横切ることは可能だ。


「へっ、そんな術じゃ――」

「“テルザム(風よ)コヘテル(逆巻け)”!」


 水溜りを過ぎ去ろうとした私の動きを読んでいたかのように、ルウナは迷いのない目つきでワンドを振るっていた。

 飛沫のせいではない、理由のない悪寒が走る。

 私の勘は当たるのだ。体は拒否すること無く、すぐに応じて動いてくれた。


「っうお!」


 咄嗟に一歩跳び下がると、目の前を飛沫嵐が掠めていった。

 向こう側の景色を完全に霞ませるほどの水を孕んだ、真横からの突風。

 そのまま走っていれば風は直撃し、私は壇上に転がされていたことだろう。

 そうなれば、あとは劣勢のまま猛攻を受け続けていたに違いない。

 私の額を流れる雫は、ルウナが生み出したものではなさそうである。


「……」


 ルウナがワンドを構えながら、ゆっくりと横に歩いてゆく。

 どうやら、少しだけ距離も取られているようだ。

 あらかじめ出現させておいた水溜りを私との間に挟み置くようにして、自分の立ち位置を修正している。


 ……ルウナは、自分に有利な状況を作っている。

 魔術こそ使っていないが、このままの相手の動きを見過ごしては、少しずつ不利になっていくだけだ。


「まだまだ!」


 風によって押し広げられた水溜りを構わずに、私はそのままルウナへの接敵を敢行する。

 相手は堅実だ。

 多少の被弾は仕方ないという考え方で挑まなければ、堅実な相手には勝てないもの。

 無鉄砲が邪道だとはわかっている。けど、勢いこそ喧嘩の基本というものだ。

 恐れるな、走れ。


「防御壁は生み出さない? 何か裏でも……いや、どの道好都合。愚直に来るなら、相応の手で返させてもらうわよ、ウィルコークスさん」


 ルウナがワンドを振りかぶる。

 左手側に溜めたワンドを低く構え、持ち手側へ振り上げる。

 投擲杖術、“逆横振り”の振り上げだ。

 何が来る。

 いや、なんだって構うものか。根性で避けてみせようじゃないか。


「“キュールズ(瀑布よ)ミドヘテル(渦巻き)”・ディアモット(襲いかかれ)”!」


 まず最初に危機感を悟ったのは、耳だ。

 聞いたことの無い詠唱。当然、対処法などの選択肢は浮かばない。

 あるとしても、勢い付いたこの身体でできることは限られてしまう。

 直感とセンスで乗り切ることは、覚悟した。


「はっ!?」


 強引に突っ切る覚悟はしていたのだが、飛来する魔術を見て脚が止まる。

 もちろん、心の中じゃ何度も止まりたくはない。

 ルウナへ接近する時間が長引けば、相手の手数が増えて、さらに攻め難くなってしまう。

 床が浸水していけば、それだけで不利だ。


 だが、こちらへ飛んでくる巨大な真球の水弾のサイズは、直径はそれだけでもおよそ四メートルはあるだろう。

 高速で渦巻きながら球形を保つそのエネルギーに巻き込まれれば、ただ“水が当たった”では済まされない結果になるのは目に見えている。

 ギリギリに避けたところで、着弾した際の飛沫から逃れられるかもわからない。


 気付けるものなら、詠唱で気付きたかった。

 これは間違いなく、ルウナが放つ最大規模の水攻撃魔術だ。




 襲い来る水の塊。

 私の体が出した答えは、至ってシンプルだった。


「ふっ!」


 姿勢を限りなく低く、真後ろに跳ぶ。

 さらに距離が開く。一進二退。そんなむず痒くなる言葉が頭を掠めても、今を乗り切らなければ次は来ない。

 タクトの先を地面に押し当てながら、呪文を紡ぐ。


「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 避けられないなら、防げば良い。私は魔術を発動させ、床を妖しく光らせた。

 しかし、それだけに留まるわけにはいかない。

 ルウナの放った魔術の破壊力は未知数だ。いや、見た目には、容易く私のアブローム(石柱)を破壊してしまいそうである。

 ならば、ひとつの防御だけで安心してもいられないだろう。


「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 石柱に水弾が直撃するのを見る前に、さらに後ろへ飛び退いて、同じように石柱を生成する。

 距離を置いた、縦二本の石柱の防御。

 どんなに強い水だろうと、さすがにこれなら防げるだろう。


「んッ」


 とは思いつつも、私は二本目の石柱の陰に隠れながら、その背面を右手で押さえる。

 向こうから一本目の石柱が倒れてくれば、丁度よくこの二本目にぶつかってくるのだ。

 連鎖して二本目の石柱まで倒されては、防御壁として役に立たないだろう。

 前は見えなくて不安だけど、防御なので仕方ない。


 石柱を腕で抑えた直後、向こう側から爆発と喩えても良いほどの音が轟いた。

 少なくとも、水が発する音ではない。人の身が受けて良い音でもない。


「ぐっ!?」


 私の推量を裏付けるように、押さえる右腕に強い衝撃が走った。

 石柱に岩石が倒れこんできたのだ。


 倒れた岩が砕け散る。同時に、石柱の左右から物騒な勢いで水が迸ってゆく。

 砕けた石の破片が二本目の石柱の裏側にいくつも衝突する音が、腕の感触で伝わってきた。

 私は堪らずに、両腕と更に肩まで使って石柱を支え直す。体全体にのしかかる水弾の威力の高さに、歯噛みする。


「まだ流れてやがる……!」


 水流は収まらない。

 あの球体に、一体どれほどの水が詰まっていたというのか。

 石柱の両脇のひざ下辺りで、水が勢い良く流れていく。

 膝下辺りの水であっても、その勢いを押さえるためにはかなりの力を要した。


 体感的にはとても長い。実際の時間は短かったのだろう。

 水流が無限ということはなく、すぐに落ち着き、水位も床の上を舐める程度にまで下がった。

 水の音が鳴り止む頃には、観覧席から歓声の声が聞こえてきた。

 今の私の防御は、見せ物としてはなかなか盛り上がるものだったのだろう。

 私もそっちに回って、他人面して楽しんで居たいもんだ。


「……チッ」


 石柱から顔を出すと、ルウナは既にワンドを振る構えだった。

 私が水弾を防いでいる間に、第二波を放つ猶予は充分にあっただろう。


 畜生、私が顔を出す瞬間を見計らっていやがったな。


「“テルス(北風に)クォラル(凍えよ)”!」


 何が来るのか、わかったものではない。

 当然、顔は引っ込めた。


「うわっ」


 風が水溜りを叩きつけ、床を覆うだけだった水が跳ね上がる。

 刺々しく飛沫いた水溜りは瞬時に凍てつき、そのままツララを上向きに固めたような氷像となって、固定された。


 石柱の両脇から、私の左右を固めるように配置された氷の棘。

 その高さは膝下辺りだが、踏み越えることも、跨いてゆくことも難しい、絶妙な高さと幅を持っている。


 左右に続く氷の花壇。ちょっとした怪我でも敗北となる中級保護の闘技演習では、無視することのできない厄介な設置物だった。


「身体強化があればこんなの、どうってことねえのに……!」


 正面には石柱があるが、根本は結構な高さまで氷で凍てついているのが見えた。

 倒すにいつも以上の労力を使いそうだ。その隙に攻撃を受けてはまずい。


「ちっくしょ……」


 もどかしい気持ちを小さく吐き捨てて、私は氷で飾られた数メートルの退路を通ることにした。


 ルウナの思い通りに、戦いが進められている。

 ナタリー戦の鉄針ような見えざる布石ではない、わかりやすくそこに存在している“水溜り”。

 戦場を侵食してゆく相手の優位を見て、私の心は平静でいられない。


 ルウナは風で水を巻き上げる。冷気で氷を固めてくる。

 風を使った水の噴射は速いし、一撃で決着はつかないだろうが、威力もある。

 冷気によって水が膝くらいの高さで凍てつけば、容易には踏み越えられなくなるだろう。


 ただ避けて近づくだけの戦い方が、とてつもなく困難だ。

 水を操り、水を配置し、敵を全く寄せ付けない。


 これが、近づかせずに遠間から倒す、魔道士本来の闘い方か。

 ルウナ、もしかしてナタリー以上に厄介な相手なんじゃないか。


 ……いや。ナタリーは、私との戦いで油断していたんだ。

 意図しなかったことも起こりはしたが、あの時の闘いではナタリーが油断したからこそ、私が勝てたのだ。


「さすがですね、ウィルコークスさん。まさか私の“霊柩の瀑布”が防がれるとは思わなかったですよ。あれで、一気に決着をつけようと思ったのですが」


 間合いは、さらに遠のいた。

 距離は十五メートル近くになっただろうか。初期位置からほんの少しだけ踏み出せた程度で、私は立ち往生している。

 目の前にはルウナが生み出した水溜りが多数配置され、行く手に浅く立ちはだかる。


 ……どう進むか。

 水溜りの面積も広くなってきた。これを避けて進むべきか、そのまま突っ切るべきか。

 水溜りを走っている間にルウナの魔術を使われるのは危険だ。まさに、敵の領域に自ら踏み込むようなものである。

 それでも、これ以上水を避けながら戦えるかといえば、そんな自信はない。


 ルウナは水溜りを弾くことによっても、私を攻撃できる。

 風を側面から叩きつけることによって巻き起こる飛沫の突風は、かなり広範囲までカバーできる魔術だろう。

 ちょっと避けた程度で意味がないのであれば、無理に水溜りを避ける必要はない。


 弱気になるな。

 最初の勢いのまま、もう一度まっすぐ、相手に向かって走り抜けろ。

 

「いくぞ……!」


 私は水溜りを踏みしめ、雫を跳ね上げながら走りだした。

 ルウナは杖を掲げている。

 でも、構わない。一々相手の挙動にビビってられるかよ。


「“キュー・バル(水達よ)ディア(襲え)”」


 ルウナが杖を振るい、魔術を発動させてきた。

 空中に現れる、横長の水の塊。

 左右に広く展開された水を回避するのは至難の業だ。鉄のつぶてや、鉄針を避けるのとはわけが違う。


「避けられないなら、何度でも……!」


 私はギリギリを見極めて走った後、杖を握り直して濡れた地面にぶつけた。

 膝を曲げ、急停止。アブロームを出現させて、もう一度防いでやる。


 相手が魔術を発動させてすぐに防御をしたのでは、相手に追撃の機会を許してしまう。

 だからギリギリで攻撃を防ぎ、すぐに切り替えして、接近を再開するのだ。

 そうすれば相手も、闘いを一方的に有利な方向へと勧められないはずだ。


 根比べだ。

 徐々に距離を詰めて、殴ってやる。


「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 私はタクトに魔力を注ぎ込み、切れそうな息を無理やり繋いで詠唱した。

 杖を傾げた延長線上に、驚いたようなルウナの表情が見える。


「え」


 すぐそこまで迫った水の塊を見上げながら、私は異変に気付いた。


 石柱(アブローム)が、発動しない。


 風呂をひっくり返したような大質量の水が、私の顔に降り注ぐ。


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