表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
打ち砕くロッカ   作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 弾ける爆風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/545

箕008 壁隔てる策謀

 属性科三年の鉄属性専攻、ジキルとロビナ。

 白髪の男と黒髪の女は、特異科の講義室前で向かい合い、ひそひそと話し込んでいる最中であった。


「友達と仲良く呑気にウサギ狩りだとよ。ナタリーさんをマグレで倒したくらいで、もう学園をシメた気でいやがる……気に食わねーな」

「やめようぜロビナ。マグレでもナタリーを倒したんだぞ」


 ジキルはどの立場に立っても慎重な姿勢を崩さない。それはナタリーが負けた後でも変わりはしなかった。

 対して、それまで味を占めていたロビナには譲りきれないものがある。


「たった一回、マグレで負けたくらいで鉄専攻が舐められてたまっかよ!」


 ナタリー=ベラドネスは鉄属性専攻の女子生徒達にとっては、絶対的な強さを持つボスでもあったし、慕うに値するカリスマ性も備えていた。

 同じ鉄国出身でナタリーの出自を知る者であれば、なおさらであろう。

 だからこそ彼女、ロビナは激昂しているのだが、その怒りを一身に受けているジキルは至って冷静だった。


「だがナタリーが負けたのは事実だろ。認めたくはないだろうけどな、それはもう覆せねえよ」

「うるせえ!」

「うごっ!?」


 落ち着いた調子で宥めても、八つ当たりは綺麗に鳩尾へ決まった。

 鉄の国の女性は総じて男勝りなのである。


「ナタリーさんはなぁ……ナタリーさんはなぁ、本当ならあれくらいで負けるはずがねえんだよ」

「わ、わかってるから、わかってるから暴力はやめてくれ……一応俺は協力してやってんだぞ……」

「相手が特異科だから、手を抜いてやってたのに……! だってのに、まるで、それを見透かしたような戦い方をしやがって……!」


 ロビナは件の闘技演習で、ロッカの不自然な戦術に気付いていた。

 ナタリーの戦い方や矜持に精通していなければ、あの時のロッカのような動き方はできないだろう。


 風、火、水魔術に対して一切の警戒を敷かない、対鉄魔術に限定した特殊な戦法だ。

 鉄の魔術投擲の回避に特化した身のこなし。

 鉄魔術を受け止めるためだけに習得したかのようなマイナーな鉄魔術(アブローム)

 鉄魔術への対抗措置はしっかり取れていただけに、魔術戦の知識が無かったなどという言い訳は通用しない。


「クラインが入れ知恵しやがったんだ、間違いねえ……!」


 正解である。

 また、同じ予想を心の中に立てる者は少なくはなかった。

 新入生が僅かな術でナタリーに勝利する。ということは、クラインが関わっている。思考停止に近い短絡的な考えではあれど、この一年間の数々の出来事を顧みれば、それは的の中心を射た予想であった。

 実際にその通りなのだから。


「なぁロビナ……クラインが関わっていようが関わってなかろうがよ、ナタリーの汚名を突っぱねるにはロッカを打ち負かす必要があるんだろ?」

「あたりめーだ。あの岩堀り女をぶっ飛ばさねえと、ナタリーさんの雪辱は果たせねえ」

「なら正攻法で、闘技演習場で倒さなきゃ駄目なんじゃねーの」

「馬鹿野郎! 私らが同じ場所でロッカに勝っちまったら、それこそナタリーさんの顔が立たねーだろうが!」


 ロビナは泡を飛ばしながら叫んだ。

 一切の慎みも隠密する気もないロビナの態度には、温厚なジキルもそろそろ限界である。


「じゃあどうすんだよ、わけわかんねえぞ」

「わっかんねぇかなぁ。だからお前はいつまで経ってもジキルなんだよ」

「なんだそれオイ、悪かったな、俺は一生ジキルだよ」

「ロッカが本当にマヌケな奴だと、学園中に知らしめてやるのさ。そうすりゃ、マグレって説にも魂が宿るだろーよ」


 ロビナは呂金(ろきん)製のショートメイスを軽く掲げ、鈍い銀色の輝きを見せびらかせた。


「例えば、ウサギを追ってる最中に大怪我をした、とかな」


 曇った金属の不穏な光沢に、ジキルはまた面倒臭そうな、厄介そうな役目が自分に回ってきたのだと確信する。

 正解である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ