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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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44/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 44

思考停止状態だから、どう反応して、いいか、わからんかった…


 どう、答えて、いいか、わからんかった…


 私は、銅像のように、立ち尽くした…


 立ち尽くしたのだ…


 そんな、私を救ってくれたのは、意外な人物だった…


 その人物は、なんと、お義父さんだった…


 私の夫の葉尊の父の葉敬だった…


 葉敬は、笑いながら、


 「…なんだ? そうだったんだ?…」


 と、言った…


 私は、呆気に取られて、お義父さんを見たが、それは、リンも同じだった…


 私と同じく、リンも呆気に取られた表情で、お義父さんを見た…


 お義父さんが、なにを言い出すか、知りたかったからだ…


 「…葉尊が…私の息子が、そんなにモテるとは、思わなかった…それなら、いっそ、私が、葉尊になりたかった…葉尊と代わりたかった…」


 と、笑った…


 そして、それを、見た、周囲の取り巻きのひとたち、すべてのひとが、苦笑した…


 まさか、声を立てて、笑うわけには、いかないから、苦笑いを浮かべた…


 この葉敬の発言で、一気に、この場の空気が、和んだ…


 リンの発言で、一体、どうして、いいか、わからん、緊張した空気が、一気に和んだ…


 葉敬は、さらに、


 「…しかし、残念だ…私が、葉尊だったら、キミと、結婚できたかも、しれないんだろ?…」


 と、続けた…


 リンは、一瞬、戸惑った表情を浮かべたが、すぐに、


 「…ええ…」


 と、答えた…


 「…だったら、大損だな…こんな美人と結婚できたかも、しれないのに、チャンスを逃すなんて…」


 葉敬が、笑いながら、言う…


 しかしながら、それは、誰の目にも、リンにお世辞を言っているのは、明らかだった…


 リンの機嫌を損ねないように、リンにお世辞を言っているのは、明らかだった…


 そして、それに、当然のことながら、当のリン本人も気付いた…


 「…いえ、今からでも、遅くありません…なんなら、葉尊さんでなく、会長でも…」


 と、笑みを浮かべながら、リンは、葉敬に言った…


 葉敬に、迫った…


 が、


 ここでも、葉敬が、一枚上手だった…


 「…これは、光栄ですな…」


 と、一段と、声を高めて、楽しそうに、笑った…


 リンの誘惑を軽くあしらった…


 リンは、一瞬、物凄い形相で、葉敬を睨んだが、それは、一瞬…


 一瞬だけ…


 すぐに、笑顔を見せて、


 「…こちらこそ、光栄です…」


 と、笑った…


 笑ったのだ…


 が、


 言い終わった後に、悔しそうな表情で、葉敬を見た…


 いや、睨んだ…


 わずか、一瞬だが、物凄い形相で、葉敬を睨んだ…


 あらかじめ、ネットで、このリンという女を、調べたが、そんな表情は、どこにも、載ってなかった…


 ネットには、チアリーダーの姿で、いつも、ニコニコと笑っていた姿しか、載ってなかった…


 いかにも、楽しそうに、笑っている姿しか、載ってなかった…


 が、


 現実は、見ての通り…


 ネットで見た姿とは、全然、違った(爆笑)…


 ネットで、見た姿とは、まるで、違ったのだ…


 実物を見て、思わず、


 「ウソォー」


 と、叫びたくなるほど、違った(笑)…


 が、


 誰でも、同じかも、しれん…


 芸能人なんて、誰でも、同じかも、しれん…


 要するに、芸能人としては、別の人格を、演じているのだ…


 本来の自分とは、別の人格を、演じている=売っているのだ…


 自分とは、別の人格で、売り出しているのだ…


 おとなしい感じの女が、皆、おとなしいことは、ない…


 皆、おとなしいことは、ありえない…


 見かけは、おとなしく見えても、おとなしくない女は、大勢いる…


 優しそうな外見にも、かかわらず、中身は、全然、違う女も多い…


 いわゆる、ヤンキーだったりする女も、多い(笑)…


 要するに、外見と中身は、違うということだ…


 これは、男も同じ…


 同じだ…


 これが、一番よくわかる事例は、いわゆるヤクザ…


 高名なヤクザでも、今は、一見して、おとなしく見える人間も、多い…


 昔は、ヤクザ映画さながらに、一目見て、ヤクザとわかる人間が、多かった…


 考えてみれば、ヤクザを演じていたものも、多かったのだろう…


 それが、昨今では、ヤクザを演じる必要が、なくなった…


 そういうことだろう…


 なにしろ、一目見て、ヤクザと誰もが、わかる外見では、警察に通報されかねない(爆笑)…


 いわゆる、時代が、変わったわけだ…


 だから、おおげさに言えば、素のまま…


 おとなしい外見のものは、おとなしい外見のまま…


 無理やりコワモテのヤクザを演じる必要は、ない…


 だから、素のまま…


 しかしながら、それは、外見のみ…


 中身は、ヤクザで、なにも変わらない(笑)…


 ただ、外見を演じる必要が、なくなったわけだ…


 それと、違って、芸能人は、芸能人であることを、演じる必要がある…


 おとなしい外見の女なら、まずは、それを売りにする…


 おとなしい性格で売る…


 実際は、バリバリのヤンキーをしていたにも、かかわらず、それを、無視して、おとなしい性格で売る…


 要するに、見た目を最大限重視するわけだ…


 そして、それは、このリンも、同じ…


 同じだ…


 このリンは、おとなしい…


 外見は、おとなしく見えるから、性格もおとなしく売り出した…


 それだけだろう…


 老若男女に限らず、誰もが、普通は、おとなしい人間が、好かれる…


 一目見て、派手な人間は、あまり好まれない…


 一目見て、男女を問わず、イケイケの人間は、好まれない…


 そういうものだ…


 だから、このリンも、おとなしく売り出した…


 しかしながら、それは、外見だけ…


 いわゆる見た目だけだ…


 中身は、変わらない…


 おそらく、バリバリのヤンキーとまでは、いわないまでも、物凄く気が強い…


 いわゆる、勝気…


 本来、勝気な人間が、チアガールとして、成功して、台湾で、爆発的な人気を得た…


 それゆえ、本来、勝気な性格が、余計に勝気になる…


 成功したのだから、当たり前だ…


 そして、それが、この姿に現れている…


 このド派手な姿に現れている(爆笑)…


 余談になるが、成功して、調子に乗らないほうが、難しい…


 成功すれば、誰でも、多かれ少なかれ、調子に乗るものだ…


 わかりやすい事例でいえば、東大に合格すれば、誰もが、有頂天になり、調子に乗る…


 自分は、頭がいいと、調子に乗る…


 自分には、前途洋々の未来が開けていると、調子に乗る…


 当たり前だ…


 誰もが、調子に乗って、おかしくはない…


 調子に乗らないほうが、おかしい…


 が、


 あまりにも、調子に乗るものが、いれば、それも、おかしい…


 何事も限度があるからだ…


 だから、おかしい…


 しかしながら、それを、目の前のリンに当てはめれば、それも、おかしくはない…


 なにしろ、リンは、今、台湾中で、知らぬものが、いないほどの有名人…


 チアガール=芸能人として、成功した…


 あるいは、成功し過ぎたからだ…


 だから、調子に乗るのは、当たり前…


 当たり前だった…


 私は、今、リンを目の当たりにして、そんなことを、考えた…


 考えたのだ…


 すると、いつのまにか、リンは、立ち上がっていた…


 マリアと同じ目線で、最初は、話していたのに、立ち上がっていた…


 それを見て、葉敬が、


 「…さあ、行きましょう…」


 と、言った…


 当たり前だった…


 いつまでも、空港にいても、仕方がない…


 すると、真っ先に、リンが、


 「…ハイ…」


 と、返事した…


 大きな声で、返事をした…


 私は、


 …調子が、いい女だ!…


 と、思った…


 きっと、お義父さんに、気に入られるように、大きな声で、返事をしたに違いないからだ…


 私が、思っていると、私と同じように、思っている女が、一人いた…


 マリアだった…


 3歳の幼児のマリアだった…


 3歳の幼児だから、


 「…このお姉さん…調子がいい…」


 と、すぐに、言った…


 すぐに、口にした…


 周囲を、気にする必要が、ないからだ…


 子供だから、そんな発言をすれば、リンが、どんな反応をするかまで、考えないからだ…


 当然のことながら、リンは、マリアの発言が、聞こえた…


 近くに、いるからだ…


 私は、リンが、どんな反応をするのか?


 興味があった…


 そして、それは、おそらく、この場にいる全員が、同じだった…


 皆、一様に、リンの反応に、興味があったから、リンを見た…


 皆の視線が、リンに集中した…


 そして、それに、リンもまた、気付いた…


 間違いなく、気付いた…


 が、


 リンは、したたかだった…


 わずかに、一瞬、動揺したような素振りは、あったが、それも、一瞬だった…


 すぐに、


 「…そうよ、お嬢ちゃん…女は、皆、調子が、いいのよ…」


 と、笑いながら、言った…


 わずか、一瞬で、笑いに変えたのだ…


 次いで、


 「…お嬢ちゃんも、大人になれば、わかるわ…」


 と、笑って、付け加えた…


 私は、それを、見て、震撼した…


 文字通りブルッた…


 こんな女、見たことがなかったからだ…


 ここまで、図々しく、調子のいい女は、これまで、会ったことも、見たことも、なかったからだ…


 これは、強敵…


 この矢田トモコにとって、強敵になるかも、しれん…


 とっさに、そう思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、それに、気付くと、この矢田トモコのカラダが、震えた…


 恐怖のためだ…


 この矢田の身長159㎝のカラダが、小刻みに震え出したのだ…



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