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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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41/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 41

「…私が、羨ましい?…」


 私は、繰り返した…


 そして、考えた…


 目の前の夫を見て、考えた…


 夫の葉尊は、長身で、容姿端麗…


 頭もよく、大金持ちの、御曹司…


 にもかかわらず、私が、羨ましいと言う…


 冗談ではなく、心の底から、言う…


 これは、謎…


 この矢田には、解けぬ謎だった…


 なぜなら、この矢田は、六頭身…


 美人でも、なんでもない…


 巨乳で、童顔の159㎝の35歳の女に過ぎんからだ…


 しかも、これまで、一度も言ったことがないが、かつて、


 「…動くぬいぐるみ…」


 と、言われたことがある(涙)…


 それは、私が、六頭身で、太っているから…


 いわゆるデブではないが、巨乳だから、だ…


 ハッキリ言って、日本人、いや、アジア人で、太ってなくて、胸が、大きな女性は、いない…


 いわゆるスレンダーで、胸が、大きな女は、いない…


 いるとすれば、それは、整形…


 豊胸手術をしたから、胸が、大きいのだ…


 しかしながら、この矢田トモコ…


 豊胸手術は、しなくても、胸が大きかった…


 つまり、生まれつき、胸が大きかったわけだ…


 それゆえ、少しばかり、太っている…


 いわゆる、ぽっちゃり体形だ…


 だから、胸が大きいのだ…


 だから、


 「…まるで、生きている、ぬいぐるみみたい…」


 と、言われたのだ…


 そして、そんな、この矢田を、頭脳明晰、容姿端麗で、大金持ちのお坊ちゃんが、羨ましいという…


 冗談ではなく、心の底から、羨ましいという…


 だから、信じられん…


 信じられんのだ(笑)…


 が、


 その一方で、世の中、そんなものかも、しれんとも、思った…


 よくあるのが、やはり、ルックス…


 例えば、いかに、金持ちの家に生まれようが、ルックスの良くない、男女は、多い…


 すると、金持ちの家に生まれなくても、いいから、


 「…ルックスが、良く生まれたかった…」


 とか、


「…美人に生まれたかった…」


とか、


 「…イケメンに生まれたかった…」


 と、いう人間が、少なからず、いるだろう…


 ないものねだりと、言ってしまえば、それまでだが、自分にないものを、欲しがる人間は、多い…


 誰もが、身近なところでは、背の高い男が、小柄な女と、結婚した実例…


 背の高い男は、自分が、背が高いから、小柄な女を、可愛いと、思い、小柄な女は、自分の背が低いから、背の高い男に憧れる…


 つまり、互いに自分にないものに、魅力を感じる…


 そういうことだ(笑)…


 真逆に、背の低い男が、背の高い女に憧れるのも、同じ…


 背の低い男は、自分が、背が低いから、背の高い女に憧れるし、背の高い女は、背の高いことに、コンプレックスを抱いていることが、多いから、自分より、背が低い男を受け入れる…


 そういうことだ…


 これも、また、同じ…


 同じだ…


 ただ、皮肉を言うわけでは、決してないが、背の高い女は、可愛くはない…


 なぜなら、当たり前だが、背の高い女は、カラダが大きいから、一つ一つのパーツが、大きい…


 だから、身近に、見ると、手の大きさ、一つとっても、デカい(笑)…


 だから、可愛くは、ない…


 可愛い=小さいからだ…


 この矢田は、身長、159㎝だから、165㎝以上の女を、直近に見ると、正直、デカいと、感じる…


 とりわけ、その女が、美人だったり、スタイルが、良かったりすると、つい、男の気持ちになる…


 なぜなら、男が、憧れる気持ちがよくわかるからだ…


 ただし、やはり、近くで、見ると、可愛くは、ない…


 今も言ったように、可愛い=小さいからだ…


 だから、大きい=可愛くないからだ…


 たしかに、少し離れた場所から、見ると、背が高く、スタイルの良い女は、キレイだったり、カッコイイと、思ったり、するが、直近で見ると、


 …デカい!…


 の一言だ…


 これが、女が、水着を、着ていても、同じ…


 少し離れた場所から、見れば、胸も大きく、お尻も大きく、スタイル抜群…


 だから、


 …カッコイイ!…


 とか、


 …セクシー…


 とか、言えるが、直近で見れば、


 …デカい!…


 の一言…


 以前、エリエール王子こと、井川意高氏が、いみじくも、語ったが、若い頃に、身長175㎝の東欧美女と、付き合かったが、ベッドの上では、


 …重い!…


 の一言だったという(笑)…


 自分も身長が、175㎝で、女と同身長だったが、やはり、ベッドの上では、相手が、重かったそうだ…


 つまり、現実と、理想の違いというと、おおげさだが、やはり、現実は、そんなものだろう…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 そして、そんなことを、考えていると、葉尊が、


 「…父も勝負に出たな…」


 と、呟いた…


 私は、思わず、耳を疑った…


 …勝負?…


 …勝負って、なんだ?


 考えた…


 考えたのだ…


 しかしながら、当たり前だが、わからんかった…


 だから、素直に、目の前の葉尊に、


 「…勝負って、なんだ?…」


 と、聞いた…


 直球に聞いた…


 「…リンの正体ですよ…」


 「…リンの正体?…」


 「…リンは、台湾で、おそらく、今、一番有名です…ですが、色々、噂の多い、人物でも、あります…」


 「…噂の多い人物?…」


 「…C国のスパイとも、政界や財界の枕とも、言われています…」


 以前、葉問が、言ったことと、同じことを、言った…


 「…でも、それが、かえって、リンの魅力になっている…」


 「…なんだと? 魅力になっているだと?…どうしてだ?…」


 「…男でも、女でも、謎があった方が、モテます…ずばり、ミステリアスの方が、モテます…」


 「…なんだと?…」


 「…女の裸を見れば。それが、わかります…」


 「…どういう意味だ?…」


 「…良く、一昔前は、グラビアで、水着を見せていたアイドルが、売れなくなって、ヌード写真集を出したでしょ?…」


 「…それが、どうした?…」


 「…実は、ヌード写真を出すと、話題になるのは、最初だけで、それを、きっかけに、さらに、売れなくなる事例が、多いんです…」


 「…多い?…どうしてだ?…」


 「…すべて、見せたからでしょう…」


 「…どういうことだ?…」


 「…水着を着ていれば、その水着の奥は、見えない…想像するしかない…」


 葉尊が、笑う…


 私の夫が笑う…

 

 「…でも、脱いで、裸になってしまえば、それまで…読者は、すべてを、見たから、今さら、見たいものが、なにも、なくなる…」


 「…」


 「…リンもそれと、同じです…自分が、色々噂を立てられていることが、自分でも、よくわかっている…そして、それを、利用している…」


 「…利用?…」


 「…ホントのところは、どうなんですか?

 と、知りたい男は、多い…それを、ネタにして、自分の人気に使っている…自分の人気をさらに、高めている…」


 「…」


 「…実に、したたかな女です…」


 葉尊が、言った…


 私の夫が言った…


 正直、そんなことは、考えたことが、なかった…


 私は、単純に、リンという女が、


 …C国のスパイ…


 とか、


 …政界や財界の枕…


 とか、評されることに、驚いていた…


 ただ、驚いていたのだ…


 しかしながら、今、葉尊が、言ったように、それを、自分の魅力にする…


 そんな噂を逆手に取って、世間で、自分に注目を浴びさせる…


 そんな発想は、なかった…


 なかったのだ…


 そして、同時に、思った…


 アムンゼンのことだ…


 あのアラブの至宝のことだ…


 あのアラブの至宝は、リンに夢中…


 あのアラブの至宝の博物館のような私邸に、リンを描いた絵を描いていた…


 偶像崇拝を禁止する、イスラム教徒だから、直接、リンの写真を飾ることは、できない…


 だから、壁に、絵を描いた…


 誰が、見ても、一目で、わかるように、リンを彷彿させる絵を壁に描いた…


 まるで、天女のように、描いた…


 それを、一目見れば、誰もが、この家の主は、リンに夢中だと、気付くように、描いた…


 リンのファンだと、わかるように、描いた…


 描いたのだ…


 が、


 しかしながら、これは、真逆に、言えば、わかりやす過ぎる…


 なにしろ、一目見れば、リンとわかる絵を描いているのだ…


 誰が、見ても、台湾の人気チアガールとわかる絵を描いているのだ…


 あのリンを知っている者が、見れば、誰でも、わかる絵を描いているのだ…


 いわば、露骨過ぎるのだ…


 だから、もしや…


 これは、罠…


 あのアムンゼンの仕掛けた罠かも、しれんと、気付いた…


 なにしろ、あのアムンゼンは、食わせ者…


 一筋縄では、いかん…


 真逆に言えば、一筋縄で、いく人間が、素直に、自分の感情を、周囲に明かすわけがない…


 ホントの自分の感情は、隠すものだからだ…


 なにを考えているか、わからないように、周囲には、隠すものだからだ…


 それが、誰の目にも、わかりやすいように、リンの絵を描く…


 ということは、どうだ?


 やはり、罠?…


 あの絵は、周囲の目を欺く罠かもしれんと、気付いた…


 気付いたのだ…


 なにしろ、あのアムンゼンは、普通ではない…


 普通の人間ではない…


 ホントは、30歳にも、かかわらず、小人症だから、外見は、3歳にしか、見えん…


 それを、逆手に取って、セレブの子弟の通う、日本の保育園に身を隠した…


 自分が、3歳の幼児にしか、見えんことを利用したのだ…


 しかしながら、30歳の大人が、3歳の保育園児に交じって、生活することは、できない…


 頭が違い過ぎるからだ…


 年齢が、違うから、人生経験が、違い過ぎるからだ…


 だから、できない…


 普通は、誰が、考えても、いっしょにいることに、耐えられない…


 3歳と30歳の大人が、同じ立場で、いっしょにいることは、普通はできないからだ…


 だが、


 あのアムンゼンは、それに耐えた…


 その一事を持っても、あのアムンゼンは、普通ではない…


 普通の人間ではない…


 常人なら、決して耐えられないことを、耐える…


 それは、並大抵の精神力の持ち主でなければ、できないからだ…


 そして、そんな精神力を持つ、あのアムンゼンが、素直に、自分が、リンのファンだから、自宅にリンの絵を描かせたと、言っても、それを、信じることはできん…


 正直に言って、その説明は、眉唾物…


 到底、信じることは、できん…


 できんのだ…


 私は、あらためて、あのアムンゼンに疑問を感じた…


 正直、アムンゼンを疑った…


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