表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 18

 この葉尊と、結婚して半年経つが、これまで、葉尊のこんな姿は、見たことがなかった…


 ここまで、雄弁に語る姿は、見たことがなかった…


 これまで、この葉尊は、いつも、私に対して、控えめだった…


 いや、


 控えめというより、いつも自分を殺していた…


 自分の主張を極端に抑えていた…


 少なくとも、私には、そう見えた…


 そう、見えたのだ…


 だから、むしろ、今の葉尊の方が、安心した…


 おそらく、素の姿を見せたのだろうと、思ったからだ…


 ひとは、誰でも、そうだが、四六時中、誰かを演じることは、できない…


 どこかで、素の姿を見せることがある…


 問題は、そのタイミングだ…


 おそらく葉尊は、結婚して、半年も経ったから、つい、油断して、素の姿を、私に見せたのかも、しれない…


 あるいは、気付かずとも、油断して、素の姿を見せたのかも、しれない…


 が、


 しかしながら、それが、嬉しかった…


 いわゆる、演技ではない素の葉尊が、見えたことが、嬉しかった…


 やはり、いっしょにいて、誰かを演じていていては、いくら、私に文句を、なにひとつ言わずとも、居心地が悪いというか…


 ホントは、なにを考えているか、わからない…


 そう、思っていたからだ(苦笑)…

 

 だから、片鱗といえども、素の姿を見せてくれたのは、嬉しかった…


 嬉しかったのだ…


 そして、それが、私の表情に出たのだろう…


 「…なんですか? お姉さん…なんだか、嬉しそうですね?…」


 と、葉尊が、言った…


 私は、いつもの、


 「…なんでもない…なんでもないさ…」


 と言う、口癖を言いながら、ご飯を食べた…


 なぜか、いつもより、夕食がおいしく感じた…


 単に、気分がいいからだろう…


 だから、ご飯もおいしく感じる…


 実に、単純なことだが、世の中、そういうものだ…


 なにか、気分が悪くなったりすることが、あると、どんなにおいしいご飯を食べても、おいしく感じないことがある…


 それと、いっしょだ…


 病は気からという言葉があるが、まさに、その通り…


 その通りだった…


 葉尊が、少しとはいえ、素の姿を私に見せてくれたのは、嬉しかった…


 実に、嬉しかったのだ…



 そして、夜、寝ながら、私は、考えた…


 バニラに会わねば、ならんと、考えた…


 あのバニラは、私の宿敵…


 正直、考えただけで、胃が痛む存在だ…


 ハッキリ言えば、殺しても、殺したりないほど、憎い相手では、あるが、会わなければなるまい…


 なぜなら、バニラの娘のマリア…


 マリアが、必要だからだ…


 アムンゼンのために、マリアが、必要だからだ…


 だから、会わねば、ならん…


 ならんのだ…


 私は、寝室で、ひとり寝ながら、考えた…


 私と葉尊は、寝室は別…


 同じ部屋に寝ない…


 なぜ、寝室は、別なのか?


 別に理由はない(笑)…


 葉尊と結婚して、最初は、別居婚…


 三か月して、いっしょに、暮らし始めた…


 そのときから、寝室は別…


 つまり、最初から、寝室は、別だった…


 が、


 これが、私には、心地よかった…


 そして、それは、葉尊も同じ…


 同じだ…


 なぜ、心地よかったのか?


 それは、寝室は、究極のプライベートだからだ…


 私は、一人っ子…


 ある程度、物心つく歳になってからは、ずっと一人で、寝ていた…


 だから、正直、隣にひとが、いると、寝られない…


 ぶっちゃけ、同じ部屋で、誰かと、いっしょに、寝るのは、無理…


 できない相談だった…


 そして、それは、また葉尊も同じ…


 同じだった…


 なぜなら、葉尊もまた、私と同じ一人っ子…


 幼いときは、一卵性双生児の弟の葉問が、いたが、葉問が事故で、亡くなると、葉尊は、一人だった…


 だから、実質、一人っ子…


 それゆえ、私同様、隣にひとがいては、寝られない性質だった…


 だから、二人で、いっしょに、暮らし出したときに、寝室は、別と、聞いて、ホッとした…


 それは、おそらく、葉尊も同じだったろう…


 私は、今、35歳…


 葉尊は、29歳…


 共に、決して、若くはない(笑)…


 例えば、生涯抱き合って、生きて行こうなどと、口が裂けても、言えない…


 なぜなら、それは、中学生や高校生が言うセリフだからだ…


 恋に恋する中学生や高校生が、言うセリフだからだ…


 だから、言えない(笑)…


 それは、さておいて、あのバニラのことを、考えると、正直、胃が痛んだ…


 アイツは、バカなくせに、私に盾突く…


 いや、


 バカだから、この矢田に盾突くのか?


 ともかく、ホントは、あんなバカに会いたくは、なかったが、仕方がない…


 アムンゼンのためだ…


 アラブの至宝のためだ…


 アムンゼンに会うためには、マリアに会う必要がある…


 バニラの娘のマリアに会う必要がある…


 臥薪嘗胆…


 泣いて馬謖を斬る、だ…


 私は、仕方なく、ケータイを取り出し、ベッドに寝ながら、バニラに電話をした…


 ルルルルル…


 ちっとも、出んかった…


 相変わらず、バカな女だ…


 せめて、留守電にでも、すれば、私も、こんなに電話をせずに、すむのに…


 留守電にでも、すれば、メッセージを入れるだけなのに…


 つい、思った…


 つい、不満が、出た…


 ようやく、


 「…もし、もし…」


 と、眠そうなバニラの声が聞こえてきた…


 「…もしもし、どなたですか?…」


 「…バニラ…私だ…矢田トモコだ…」


 私は、言った…


 名前を名乗った…


 「…お…お姉さん?…」


 バニラが、絶句するのが、わかった…


 「…そうさ…私さ…矢田トモコさ…」


 私は、名乗った…


 同時に、頭の中で、


 …相変わらず、バカな女だ…


 …何度も、私に名前を言わせるんじゃないさ…


 と、思った…


 が、


 さすがに、それを、口に出すわけには、いかなかった…


 すると、だ…


 「…なに? なにか、急用?…」


 バニラが、電話の向こう側から、心配そうに、聞いてきた…


 「…急用? …そんなことは、ないさ…」


 私は、言った…


 「…だったら、なんで、こんな時間、今、夜の十一時を過ぎているわ…」


 「…いや、単に、寝ていたら、急に、オマエに電話をかけなければ、ならんと、気が付いてな…まあ、気にするな…私は、なにも、気にしないゾ…」


 私が、言うと、


 「…」


 と、なにも、聞こえて、来なかった…


 一切、なにも、聞こえて、来なかった…


 私は、心配になった…


 「…どうした? …バニラ…なにか、あったのか?…」


 私は、大声で、聞いた…


 バニラは、バカだから、嫌いだが、まさか、私と電話中に倒れでも、したら、困るからだ…


 なぜなら、もし、バニラの身になにか、あれば、この矢田のせいにでも、なったら、困る…


 理由は、それだけだ…


 だから、聞いてやった…


 大声で、聞いてやった…


 すると、


 「…そんな用事で、こんな時間に、電話を、かけてくるんじゃねーゾ…クソチビ!…」


 大声で、怒鳴り返してきた…


 こともあろうに、この矢田トモコ様に、怒鳴り返してきた…


 私は、頭に来た…


 せっかく、この矢田が、わざわざ、バニラごときに、電話をかけてやっているにも、かかわらず、この態度…


 頭にきて、当然だった…


 「…ふざけるんじゃ、ないさ…この矢田が、わざわざ、オマエごときに、電話してやるのさ…感謝してもらわなくちゃ、困るさ…」


 「…なんだと! クソチビ…夜中の十一時に勝手に電話をかけてきて、その言い草は、なんだ? オマエ、何様なんだ?…」


 「…私は、矢田トモコ様さ…ふざけて、もらっちゃ、困るさ…」


 「…こんな真夜中に、電話をかけてくる、オマエが、ふざけてるんじゃ、ねえのか!…」


 バニラが、怒鳴った…


 まさに、正論…


 ド正論だった…


 しかし、謝るわけには、いかん…


 たとえ、100%、私が、悪くても、このバニラごときに頭を下げるのは、死んでも嫌だからだ…


 だから、謝るわけには、いかんかった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…聞いてるのか、クソチビ!…」


 と、まだ、電話の向こう側から、バニラが、怒鳴っていた…


 「…そもそも、なんで、テメエは、こんな時間に、私に…」


 と、怒鳴りながら、聞いてくるから、つい、


 「…いや、アムンゼンに頼まれてな…」


 と、小さな声で、ボソッと呟いた…


 途端に、バニラの怒鳴り声が、止んだ…


 ピタッと、止んだ…


 私は、心配になった…


 まさか、怒鳴り過ぎで、頭に血が上り、倒れたかも、しれんと、思ったからだ…


 バニラは、まだ23歳だが、これは、年齢ではない…


 誰しも、起こりうることだからだ…


 だから、私は、


 「…おい、バニラ…大丈夫か? 気をしっかり、持つことさ…」


 と、聞いてやった…


 まさかとは、思うが、心配になったのだ…


 が、


 返って来た声は、


 「…やだ…お姉さん…殿下からの要請なら、最初から、そう言ってよ…」


 と、言うものだった…


 猫撫で声…


 まさに、君子豹変す…


 見事なまで、豹変す…


 その見本だった(爆笑)…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ