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デイビス・クレイ創世伝  作者: 太郎
第一章 始まりの呼び声編
1/4

#1_物語の始まり

該当アーカイブ読み込み完了。


 ――この物語は、既に始まっている。



「行ってきまーす!」

 

 星の一つも見受けられない闇黒の空の下、一人の青年が明るい声を響かせながら、同じく不思議にも明るく照らされた純白の雪の上を駆けて行く。

 歳は十六程、黄金小麦色の目を持ち、傍から見れば周りの雪と同化してしまうような見事な灰色の髪を持つ青年は、ある場所を目指し一心不乱に足を前へ前へと進めている。

 

 青年の名を、デイビス・クレイという。

 

 デイビスは母親と共に二人で暮らしており、女手一つで育ててくれている母親の為に手伝いは欠かさず行っている。今、デイビスが雪原の上を走っているのも、薪置場に薪を取りに行くという手伝いの為であった。

 デイビスたちが住むこの村、シルバーチェは、雪が頻繁に降り、常に太陽が昇らず、稀に吹雪すら起こるなど、環境は寒冷地そのもの。よって薪は、この村においてとても重要な資源なのである。

 

「よし、もう見えてきたぞ」

 

 デイビスは長年の薪取りによって鍛えられた俊足で、あっという間に薪置場へ到着した。この薪置場は、特定の村民が割った薪達が置かれており、村民はここから自由に家庭に薪を持っていく事が出来るのであった。

 

「よお、デイビス。また今日も走ってきたのか!」

 

 薪を取ろうとしたデイビスに声が掛けられる。声がする方向には、この地に見合わない薄着で、更に逞しいヒゲを生やした筋骨隆々の大男が居た。

 

「うん! 早く家に帰らないと、母さんが寒くて凍えちゃうからね」

「ガハハ! 確かに、そりゃぁ早く帰らんとだな! ほら、重いから気を付けて運ぶんだぞ!」

 

 大男のその言葉にデイビスは感謝すると、薪を持って先程自身が走って来た道を戻って行く。少しして振り返ってみると、大男が自身に対して大きく手を振っており、口角を緩めながらデイビスも同じように手を振り返すのだった。

 

 

 ……✲……✲……

 

 

 ひたすら走り、デイビスの自宅が見えてきた。自宅は沢山の丸太が横になって積み重ねられた壁と、傾斜の急な屋根を持っており、寒く雪が降る環境に最適なものであった。

 

「ただいま……!」

 

 木で作られた重みのある自宅の玄関を大きく開け放ち、少し呼吸を荒げながら声を発すると家の奥から返事が聞こえ、玄関に居るデイビスの所まで、その声の主がやってきた。

 

「おかえりなさい、デイビス。今日も薪を取ってきてくれて本当にありがとうね」

 

 その声の主はアーリ。デイビスの母親であり、見た目は若く二十代中盤の年齢、目は赤黄金色をしており、白銀桃色のロングヘアーを編み込んでハーフアップにしている。喋り方はゆったりとしていて、聞いているだけで心が落ち着くような声であった。

 

「でも、デイビス。転んだりして怪我したら大変だから走らないでって言ってるでしょ。何も言わなくても、分かりますからね」

「うわ、バレちゃったか」

 

 デイビスはやってしまった、といった顔で落胆している。

 

「気持ちは嬉しいけど、今度からやめてね。……よし! そうしたら、薪取りに行ってくれてる間にご飯が出来たから。温かい内に食べましょう」

 

 アーリは、気を取り直したかのようにまた動き始める。合わせてデイビスも持ってきた薪と荷物を置いて、アーリを手伝い始めた。暫く経てば、先程まで何も乗っていなかったテーブルの上には、目を引くような数々の料理が乗せられていた。

 自家製のパンから、野菜のスープ、焼かれた肉、そしてベリーのパイなど、デイビスはアーリの料理に目が釘付けだった。

 

「では、いただきます」

「いただきます」

 

 二人が食材に感謝すると、食事が始まった。食卓際の窓から覗く外の景色は、段々と暗くなっていき、常に真っ黒な空の下、不自然に明るかった筈の雪原や風景も今では暗闇に包まれている。

 たった今、シルバーチェに夜が訪れたのであった。

 

「母さん、明日は朝早くから薪を取りに行ってくるよ」

 

 先程まで食器同士が当たる音しかしていなかった食卓に、パンを片手に真剣な面持ちでアーリを見据えるデイビスの声が響く。

 

「どうしたの、急にそんな顔してそんな事言いだして」

「いや、今度は料理を手伝いたいなって思って。母さんは、父さんが居なくなってから一人で何でもやってる。だから、少しでも力になりたいんだ」

 

 デイビスが飲み干したスープのおかわりを入れるために立ち上がったアーリが、続けて口を開く。

 

「あの人が居なくなってからどれくらい経ったと思ってるの? 記憶があやふやになるくらい、顔すら覚えていないくらい昔の事よ。今更気を遣わなくても、もう慣れた事だから大丈夫よ」

「でも……!」

 

 コトン とデイビスの前におかわりのスープを置き、アーリは再び自身の席に戻った。

 デイビスの父親は、デイビスが生まれてまもなく行方がわからなくなっており、アーリとデイビスはその名前や顔すらも記憶からほぼ完全に抜けてしまっている程であった。

 

「明日も好きなように過ごしなさい。薪はまた夕方頃に取って来てくれたら嬉しいわ」

「……分かったよ」

「あなたの事を想って言ってるのよ?」

「分かってるって」

 

 いつも薪を取りに行く夕方は丁度、アーリの料理の時間と被っている。そのため薪を取りに行けば、料理を手伝うことは不可能であり、デイビスは少し不服そうにしながらも、アーリの言葉に従うことにした。

 

「……ごちそうさまでした」

「はい。少ししたらベッドに入って寝なさいね、おやすみなさいデイビス」

「おやすみ、母さん」

 

 そう言うとデイビスは食卓から移動し、二階にある自室の扉を開けた。そこに広がった空間は無機質で、生活に必要な、椅子やテーブル、ベッド以外に物が一切置かれていなかった。

 

「ふぅ……」

 

 ベッドに横たわり、アーリに自分の申し出が断られた件について再び考える。自分を育ててくれている恩に報いたい、その一心で様々な手伝いをしたかっただけなのに。

 親心が分からないデイビスはその様に思い耽りながら、また一日を終えるのであった。




「……おはよう母さん」

「おはようデイビス」

 

 いつもの挨拶。

 

 そしてまた安寧の一日が始まる。空は依然として黒一色のままだが、確かにその景色は明るく、それはシルバーチェに朝がやってきた事を物語っていた。

 その景色の中、デイビスは適当に散歩をし、掃除・洗濯の手伝い、既に何回も見返した家にある料理のレシピ本を読み、薪取りの時間まで過ごしている。

 

 しかし、いつもとは違い、デイビスの顔は暗い。

 

 ――やっぱり、早めに薪を取りに行こう。母さんには申し訳ないけど、母さんの為なんだ……!

 昨日の一件がまだ諦めきれていなかったデイビスはそう決心し、薪置場へと走り出す。


 その選択が、この安寧に終わりをもたらすとも知らずに。

『作者の太郎ですこれから頑張って書き切ります!

宜しくお願いしますー!』

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