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白い迷鏡  作者: 川之一
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1-1. 薄暗い館内



 北にある"大国シェマノーの首都クレイザ"の東にある森の中に、廃墟となっている一軒の館がある。


 "迷館(めいかん)"と呼ばれている廃墟の館の中で、一人の青年が永遠に彷徨い続けていた。



 「ん〜」

灰色のウルフヘアの青年は眉間に皺を寄せながら薄暗い館内を歩いていた。黄金色の瞳はジッと陽の光が差す廊下の先を見つめる。



 黒い服を着た青年の名は、"シクライ"。



 迷館に閉じ込められてから一度も外に出られずにいる。閉じ込められてからどのくらいの月日が経っているのかは自分でも分からなかった。館内の窓は何故か鍵も掛かっていないのに全て開かない。館内から出られずとても暇なので、三階でのんびり散歩をしていた。

「あっ!」

劣化からなのか僅かに開いている窓があることに気付き急いで駆け寄った。開いている窓の隙間から外を覗く。だが、内側の窓から見えている筈の青空と枯れた木々に囲まれた森の中の景色はそこにはなかった。


 外には何もない赤黒い空間だけが広がっている。


 〈……うーん、どうしよう。試してみようかな〉


 ──ピッ


 右手の人差し指を開いている窓の隙間から赤黒い空間に近付けた瞬間、人差し指は自分の後方へと飛んでいってしまった。小さな笑みを浮かべながら右手を見つめる。

「もし、飛び込んでいたら身体はなくなっていたかぁ。フフ、ボクに相当な恨みでもあるのかな? 彼等は」

床に落ちた人差し指を拾い、もう一度右手につけなおす。

「面倒だな。ボクが邪魔ならさっさと殺せばいいのに」

右手に人差し指がしっかりと繋がったか、手を握って開いてを繰り返しながら確認をする。人差し指が落ちそうな様子はないのでしっかりと繋がったようだ。



 自分は"死喰らい(しくらい)"と呼ばれる死後の生き物の魂を食べる者達の仲間らしい。



 「……」

長い時を眠り続けていたように感じる。目を覚ました時には、既に自分は人間ではなくなっていた。人間を死に追いやり魂を食べなくてはならないという定めに自分は抗っている。人間を助けてしまった自分を裏切り者と呼びながら、死喰らい達は迷館に自分を閉じ込めた。いずれ自分を消さなければと考えて逃がさないようにしているつもりなのだろう。


 亡き女性との約束をまもる為に、自分は生き続けている。

〈約束……まもれるかな〉

小さな笑みを浮かべながらゆっくりと目を閉じた。


 外に出たいとは思わないが、何もしないでいるのも退屈だった。誰かが迷館に来てくれたら自分は外に出られるかもしれない。だが、化け物がいる廃墟の館として有名になってしまっているようで誰も来る気配はなかった。


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