08.六王の皆様にお会いします
「そろそろ、行こうか」
朝食を食べ終え、ソファーで本を読んでいると、キソラ様が私たちに声をかけました。
まだ読みたかったのですが、しょうがありません。
本を本棚に戻します。
「リズ。その本は貸してあげるよ。帰ってきたら気になる本を選ぶといい」
名残惜しそうにしているのが、伝わってしまったようです。
キソラ様の言葉に、「はい!ありがとうございます!」と、思っていたより大きな声が出ました。
リンダ様と私は、キソラ様の近くに行きます。
「よろしい。『トラベル』」
薄く光る扉が、現れました。
キソラ様が、扉を開き、先へ進みました。私たちもそれに続きます。
扉の先は、会議室のような場所でした。
天井は高く、私が両手を広げても足りないくらい大きいシャンデリアが吊られ、石積みの壁には、六王それぞれの紋章が刺繡された、タペストリーが飾られています。
部屋の中央には円卓があり、革張りの大きな椅子が六脚用意されています。
そのうちの一脚、その後ろに小さな椅子が二脚準備されていました。
たぶん、そこがリンダ様と私の席なのでしょう。
すでに数名の方が座っており、その中にはテル王もいらっしゃいました。
こちらに気付き、軽く手を上げました。
「やあ。キソラ様が最後じゃないなんて、珍しいじゃないか。もしかして、その二人が一緒だからかな?」
「うるさいね。私が最後じゃない時くらい、何度かあっただろ」
「ハハハ、確かにそうだ。リンダもリズもようこそ」
「おじゃまするわね」と軽く返すリンダ様ですが、私は緊張して、ぺこりと頭を下げるだけになってしまいました。
「そやつが例の新米魔女か。まだ子どもではないか」
低く太い声が、部屋に響きました。
声の方に視線を向けると、立派な髭を結わえたドワーフの男性が私を見ていました。
「は、初めまして!リンダ様の弟子のリズと申します!」
「元気でよろしい。ワシはスケールと言う。ドワーフの王をやらせてもらっている。よろしくな、リズ嬢ちゃん」
「はい!」
「私も自己紹介していいかな?」とスーツを身にまとった、スタイルの良い男性が声をかけてきました。
「私はカトレア。ドラゴンの王をやっている。よろしくね」
「は、はい!宜しくお願いします!」
カトレア様にも挨拶が終わり、キアラ様の後ろの小さな椅子に座ります。
「まだ来てないのは、マイズとイワンだね」
テル様の言葉が終わるとほぼ同時に、扉が現れ、人影が二つ飛び出してきました。
「セーフ!――ってキソラがいるじゃん!?え!遅刻!?」
「おい!「まだ大丈夫だよ」って言ったのワンコだろ!大丈夫じゃないじゃねーか!」
キソラ様を呼び捨てにしている方は、私と同じくらいの身長でしょうか。
銀髪のボブで、白色のワンピースを着ています。美少女なのですが、言動のせいでチグハグな印象を受けます。
一番の特徴は、髪色と同じ銀色のふさふさした尻尾が生えていることです。
もう一方は、黒髪ショートで白のシャツに黒のズボンという、ラフな格好をしており、ボーイッシュな印象を受けます。
しかし、体が女性的なことを隠せていません。逆にセクシーです。
「まだ、時間前だよ。キソラ様が早いのは、まあ、たまたまそういう日らしい」
言葉の後半は笑いをこらえるように、テル様が二人に伝えると、「おい」とキソラ様が言いました。
「なんだよー。驚かすなよな!」
「・・・ねえ、もしかして、リンダが話してたリズ?」
黒髪のお姉さんが、私の方を見て言いました。
「はい!リンダ様の弟子のリズと申します!」
「やっぱり!」と言うと、こちらに駆け寄り、手を握られました。
「リンダの言ってた通り、可愛いじゃん!もう!リンダってば、毎回あんたの話ばっかりするもんだからさ、ずっと気になってたんだよ!」
「ちょっと、マイズ!」とリンダ様が慌てています。
私の話をしてくれているというだけで、嬉しくなってしまいます。
「私はマイズ。魔王でリンダの親友な!よろしく!」
「はい。宜しくお願いします」
勢いがすごいです。
マイズ様に圧倒されていると、銀髪の美少女が飛び込んできました。
「おー!お前が新しい魔女だな!僕はイワン!フェンリルの王だぞ!よろしくな!」
「は、はい。宜しくお願いします」
何でしょうか。
私の方が年下のはずなのに、こう、よしよしと甘やかしたくなってしまいます。
まさか、これが母性ですか!?
「ほら、いい加減座りな」
キソラ様の言葉に「「はーい」」と言いながら、お二人も席に着きました。
テル様が頷き、口を開きます。
「それでは今から、六王会議を開催する」
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