ex1.生贄を持ち帰ってしまった
最初は、冗談だと思った。
家の近くにある村が災害に見舞われたときに、何度か、手助けした記憶はある。
最近だと、50年程前だろうか。
確かに、以前助けた際には、お礼として、食料や日用品を貰った。
それが、何故、生贄を奉げるという話になっているのだろうか。
・・・たぶん、昔話として語り継ぐだけで、当時の誰も文書にしなかったのだろう。
しかも、今までに何人か奉げられたという。
私の家に、村の人間は訪ねて来ていないし、助けも請われていない。
生贄となった村人たちは、別の場所に逃げていったのだろう。
私だって、そうする。
けれどリズは、倒れるまで歩いた。
なんと、危うい子どもだろう。
幸い、彼女は魔女になっていて、私の庭に入り込むことができた。
そうでなければ、森の中で一人、息絶えていたことだろう。
リズを家の中へ運んだあと、すぐに、おばあ様に連絡を取った。
新たな魔女である彼女の今後を、任せてもらう予定だった。
すると、「あんたが拾ったんだから責任を持って育てなさい」と言われた。
犬猫じゃないんだからと思うと同時に、背中を押してくれたんだとも思った。
その後、落ち着いたタイミングで、『トラベル』で王都に向かった。
テルに会わせるためだ。
彼の執務室で、非公式に会わせたのは、特に意味はない。
その方が、いいようにしてくれるだろうと、無意識に思っていたのだろう。
その夜、マイズから連絡があった。
「あんた、新しい魔女の師匠になったんだって?」
「テルから聞いたの?仲が良いわね」
「は、はあ?別に、普通だし!それより!何かあったらすぐ教えろよな!」
忙しい合間を縫って連絡してくれたのだろう。
すぐに、終わってしまった。
・・・全く二人とも後任に譲って、さっさと結婚すればいいのに。
リズの魔力量は、歴代でトップだった。
あの水晶玉は、おばあ様の魔力量が上限として設定されている。
なぜなら、その量を越すことはないと思われているからだ。それほどまでに、おばあ様の魔力量は群を抜いている。
その水晶玉が、爆発した。
この事実を知った祖母は、大爆笑だった。
山を崩壊させたことは、想定外で、気にすることはないと言ってくれた。
魔法について、覚えるのが早く、さらに好奇心から自分で黙々と進むため、想定よりも早いペースで講義が進んでいる。
魔力の調整についても、天性なのか、細かな調整も難なくこなしている。
・・・調理器具が爆発しなくて、本当に良かったと思う。
リズと過ごして、半年になる。
・・・彼女と過ごすのが、当たり前になっている自分に驚くし、戸惑っている。
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