03.弟子になったようです
この世界には色んな種族の方がいます。
獣人、人魚、有翼人といった魔族。ドワーフ。魔物でも知能が高く、共存している方も珍しくありません。
その中でも魔女という種族は特別視されます。
その理由は、他の種族と異なり、急に発現するという特徴を持っているからです。
発現する確率は非常に低く、50年に一人とも、100年に一人とも言われています。
どうやら、親族に魔女の方がいると発現しやすいということが分かっていますが、何故そうなるかは解明されていません。
私の親族に魔女の方がいたという話は、両親からも村長からも聞いたことがありません。
両親が話していなかっただけかもしれませんが、二人とも亡くなっているので、確かめようがありません。
村長に確認しようとすればできるのですが、あまり気が進みません。
※
「それは本当かい?」
私もリンダ様の方を見ます。
「ええ。彼女、私の家の敷地で倒れてたの。私の敷地ってね、邪魔が入らないように一定以上の魔力がないと入れないように魔法をかけてるのよ。ああ、招いた場合は別よ?」
「なるほど。そこに倒れていた時点で、その条件を満たしていたということか」
「リズ。料理するのに不便はなかったでしょう?」
急に話を振られました。
戸惑いつつも、思い出しながら答えます。
「はい。何なら、便利な道具がたくさんあって、いつもより料理しやすかったです」
リンダ様は、「そうでしょうね」と頷きました。
「あれね、魔道具なのよ。だから、リズが無意識に自分の魔力を使って火加減とかを調整してたから、いつもより料理しやすかったんだと思う」
なんと!?
全然、気づきませんでした。魔女様の家にあるものだから、いいものを使っているとばかり・・・。
「それで、弟子にするとは?」
王様の言葉に、ハッと顔を上げます。
そうでした。リンダ様は、弟子にしますと言っていました。
「そのままの意味よ。こんな巡り合わせも滅多にあるものではないし」
「そうか。・・・キソラ様には伝えたのかい?」
「もちろんよ。あなたに任せますって返事も来たわ」
「なら、何も心配することはないな」
「ええ。今日来たのも、あなたに報告するためよ」
「わざわざ、すまなかったな」
私を置いて、どんどん話が進んでいきます。
「リズと言ったか。これからよろしく頼む」
「わ、私なんかがお役に立てるとは思いませんが」
「何を言う。君はこれからリンダの弟子になるんだ。立派な魔女になるさ。
「は、はい。頑張ります!」
「それに、僕たちのように、これから長い時を過ごすことになる」
そうでした。魔女になったということは、これから、数百年も生きていくことになります。
全然、実感が湧きません。
「さあ、紹介も済んだし、買い物に行きましょうか」
リンダ様が立ち上がりました。
私も慌てて、立ち上がります。
「次はもう少しゆっくりするといい」
「ええ。それじゃあね」
「リズも、またね」
「は、はい。ありがとうございました」
「ごめんね、急に」
退室して、廊下を歩き始めると、リンダ様が謝ってきました。
「い、いえ。・・・まあ、驚きましたけど」
「そうよね。私も驚いたわ」
それもそうでしょう。まさか、自分の庭に魔女が倒れているなんて、予想できません。
「さあ、買い物して帰りましょう」
「はい!」
この日は、ローストビーフとプリンを作りました。
調理器具を意識して使ってみると、確かに、私が考えている通りに調整されていました。
あと、私の中から、何かが流れているという感覚があることにも気づきました。
リンダ様に言うと、それが魔力ということでした。
この時、魔女になったのだと実感しました。
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