16.みんなでお茶会です
「お城のバルコニーがいいか。リンダ、頼むわ」
マイズ様の言葉にリンダ様が「はいはい」と仕方ないという風に頷きます。
「みんなこっち」
そう言ったリンダ様についていきます。
お店の通りから更に人通りのない場所に着きました。
「それじゃあ、行くわよ『トラベル』」
魔法で直接お城と繋いだようです。
リンダ様たちに続いて、ドアをくぐります。
くぐった先は、バルコニーでした。
街を一望できるので、とても気持ちがいいです。
「それじゃあ、ティーパーティーだ!」
マイズ様の言葉に応えるように、執事さんとメイドさんが準備を始めました。
あっという間にテーブルと椅子が用意され、可愛らしいお花と先程お店で買ったお菓子たちが並べられました。
ポカンとしていると、「リズはこっちね」とリンダ様に促されました。
リンダ様から時計回りに、私、マイズ様、イワン様が座ります。
あれ?席が一か所空いています。
どなたか来るのでしょうか?
マイズ様に尋ねようとした時、「お待たせしましたわ!」と元気のいい声が聞こえました。
「いや、ちょうど準備できたとこだ」
「イズミは、僕の隣だ!」
イズミ様が席に着きました。
タイミングを見計らっていたのでしょう、メイドさんが「紅茶とコーヒーはどちらがよろしいですか?」と訪ねてきました。
「コーヒーにたっぷりミルクを淹れられますか?」
「もちろんです」
にっこり微笑み、ミルク多めのカフェオレを淹れてくれました。
「みんな飲み物はあるな?今日は六天祭に来てくれてありがとう!祭りはまだまだ始まったばかりだ。たくさん楽しんでくれよ!それじゃあ、乾杯!」
マイズ様の挨拶で、カップに口を付けます。
何だか、豪快な始まり方です。
「あっちのさ、カフェが出した新作のパイも旨いんだよ!」「ダイキったら、慌てて私を追いかけて来て。それはもう、可愛かったですわ!」「僕の国には100年に一度しか咲かない花があってな?何回か見たけど、綺麗だったぞ!次に咲いたときは、リズにも教えてやる!」
マイズ様たち3人のお話が止まりません。リンダ様と私は、聞き役になっています。
お話を聞きながら、お菓子たちを口に運びます。
餡で作られたお菓子は食べるのが勿体無いくらい可愛かったですが、意を決し口に入れると、思っていたより甘さ控えめで、すぐに食べきってしまいました。
リンゴのショートケーキも頂きました。クリームの甘さとリンゴのさっぱりとが合わさって、これもすぐに食べきってしまいました。
リンダ様に優しく微笑みかけられました。
私は少し恥ずかしくなって、くすぐったい気持ちになりました。
こんなに素敵な日々を過ごしていていいのでしょうか。
・・・時々、これは森の中で見ている夢なのではないかと思う時があります。
本当の私はリンダ様に会えず、そのまま力尽きて、自然に還っているのではないかと。
※
お茶会が終わり、一度解散することになりました。
今から街へ降りてもすぐに夕食の時間になってしまうので、メイドさんに今日お泊まりする部屋に案内してもらいました。
リンダ様の隣の部屋でした。
中へ入ると、大きなベッドと一人用のソファーが二脚、机と椅子が配置されていました。
床には、紺の生地に赤と金で刺繡が施されたカーペットが敷かれ、天井には華美ではないシャンデリアが下がっています。
先程まで皆でいたからでしょうか。
少し寂しいです。
ベッドに横になり目を瞑ると、頭の中に色んなことが渦巻きます。
神の使徒。侵略。歴史の真実。聖樹ヴェルフの役割。聖地エベネイズが移動し続ける理由。世界の綻び。私の役目。
・・・どうなってしまうのでしょう。私は、どこへ向かうのでしょうか。
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