ex2.孫の弟子が巻き込まれたようだ
大人であるキソラの視点です。
「それで?詳しく聞かせてもらえるんだろうね?」
マイズ達が気を利かせリズを連れて部屋から出た後、戻ってこないことを確認し、ダイキに問いかける。
「ああ。君たちの質問に答えよう。神様からは許可が出ている」
先程までの雰囲気とは打って変わり、真剣に表情になる。
「猶予はどのくらいですか?」
カトレアが質問する。
「あと、10年は大丈夫だろう。それ以上は、聖樹の魔法だけでは足りなくなる」
「リズが聖樹を補助する形にはできないのですか?」
「できない。あれは神自身が用いた奇跡の一つだ。それを人の身で行使するはできない」
「僕らだけでは対応できないということでいいかい?」
「そうだ。今度は国が亡ぶ可能性がある」
「1つ?」
「それ以上だ」
テルの質問に対する回答に、皆の表情が曇る。
「それをリズ一人が増えたところで対応できると?舐められたものじゃないか」
「その一人増えるのがどれほど大きいか、君たちなら理解できると思うが?」
悔しいが、ダイキの言っていることも分かる。
私たちは王だ。
守るべき国がある。
その中で、自由に動ける存在がいる。それだけで、取れる対応も変わる。
しかもリズは、私以上の魔力量を誇る。
「それでも、リズの負担が大きすぎるのではないかの?」
「そうだね。スケールの言う通りだ。だからこそ、この10年でリズにできる限りすべてを教え込んでほしい。無茶は承知の上だ。よろしく頼む」
ダイキが私に頭を下げた。
※
リンダから、私以上の魔力を持っていると連絡を受けた時は、到底信じられなかった。
実際に会ってみると、まだまだ子どもだった。
それでも、魔法に関する関心は高く、私にも教えを乞うてきた。
数日間だけだが、教えることにした。
リズは、すぐに理解し、疑問をぶつけてきた。
質問の内容を聞けば、どの程度理解しているか、どこに興味があるのかが分かる。
リズは、優秀な子だ。
丁寧に教える時もあれば、考える時間を与える場合もあった。
もちろん、リンダがリズの師匠であることには変わりない。
それは、リズも分かっていた。
リズには、追々この世界のことを話そうと思っていた。
それだけの力を持っている。
だけど、神様から突然「神の使徒」という無理難題を与えられてしまった。
さぞ驚いたことだろう。
だからこそ、この世界に生まれた先達として、できることはやらなければならない。
※
「・・・分かった」
私の言葉に、ダイキが頭を上げる。
「助かるよ。大変な役目を押し付けてすまない」
「構わないよ。その代わり、協力を惜しむんじゃないよ?」
「もちろんだ」
話は終わりだ。
席を立ち、部屋を出る。
すでに頭の中は、これからのカリキュラムを組むのでフル回転している。
さあ、忙しくなってきた。
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