01.魔女様の生贄に選ばれました
魔女と少女ののんびりとしたお話ができました。
ハッピーエンドになる予定なので、良ければ読んでもらえると嬉しいです。
魔女様の住んでいるという森をさまよって、三度目の夜を迎えます。
まだ、魔女様に会えていません。
村は大丈夫なのでしょうか。
・・・・もう、疲れてしまいました。
まっすぐ歩いているつもりでも、足がもつれて、転びそうになります。
そういえば、この森に入ってからは、飲まず食わずでした。
一度意識してしまうと、足がズンと重くなり、歩けなくなってしまいました。
少しだけ、ほんの少しだけ、休みましょう。
休めば、また、歩き出せる。そうすれば魔女様に会える。
そう自分に言い聞かせます。
深く眠らないよう、木の幹を背もたれにして、目を閉じます。
ああ、これは、もう、ダメかも・・・。
※
今まで生きてきた中で見たこともない豪雨が村を襲いました。作物は全滅し、家畜まで流されてしまいました。さらに、この村へ続く唯一の道が、土砂崩れで途切れてしまい、他の村や町に助けを呼ぶこともできなくなりました。
このままでは、冬を越すことができません。
村の大人たちが村長の執務室に集まって、対策を練っているようでした。
1時間ほど経った頃でした。
村長に呼ばれて、執務室へ入りました。
なぜ呼ばれたかわからない私に説明するように、村長が口を開きました。
「今までこのような災害が起きることは、何度かあった。それでもこの村は廃れることはなかった。何故だかわかるかね?」
私が戸惑いながらも答えを口にします。
「森にいる魔女様が助けてくれているからでしょうか。両親からそのような話を聞いたことがあります」
「そうだ」と村長が頷きます。
「しかし、何の対価もなしに魔女様も助けてはくれまい」
誰も声にしませんでしたが、その視線は私に集まっていました。
それだけで、わかってしまいました。
「わかりました。私がその役目を担います」
大人たちの「すまない」という謝罪の言葉とは裏腹に、ホッとしたような雰囲気が部屋に拡がりました。
「村長。今までありがとうございました。早速、森へ向かいます」
そして私は、魔女様への貢ぎ物として、生贄に選ばれました。
※
パチッと木の爆ぜる音が耳に届き、ハッと目が覚めました。
体を起こします。
ここは、リビングでしょうか。
私が眠っていたソファーの前には、暖炉があります。
辺りを優しい明りで照らしています。
カーテンが閉められ、部屋の外は見えませんが、どうやら夜のようです。
周りを確認するため、立ち上がろうとした時、後ろから声をかけられました。
「あら、目が覚めたのね」
聞いたことのない声に驚き、振り向きます。
そこには、マグカップを二つ持った女性がいました。
「あなた、森で倒れてたのよ。私が通りかかってよかったものの。どうしてこんなところにいたの?」
その疑問に、自分の役割を思い出します。
「あ、あの、村が危なくて!それで、魔女様に助けを求めようと!私が、その生贄に選ばれて!そ、そうです。ここはどこですか?魔女様に会いに行かないと!」
「お、落ち着いて。まずは深呼吸よ。吸って―吐いて―」
女性に言われるがまま、深呼吸します。
「これもどうぞ」とマグカップを渡されました。
「は、はい。ありがとうございます」
甘い匂いが鼻に届きます。中身はホットココアでした。
一口飲みます。
程よい甘さが、体に染み渡っていきます。
「どう?少しは落ち着いた?」
「はい。先程はすみませんでした」
「いいのよ。それより生贄って?」
さっきの言葉が気になっていたみたいです。
私は、村長たちとの話を説明します。
「はぁ・・・」
深いため息をつかれてしまいました。
今度は落ち着いていたから、ちゃんとできた気がしてたのに。
「ち、違うのよ。あなたのせいじゃなくて、むしろ、私のせいというか」
私が落ち込んだことに気付いて、慌てて訂正してくれました。
え?私のせい?
「ごめんね。あなたの探してた魔女って、わたしなの」
生贄なのに、お持ち帰りされてしまいました。
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