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【捌ノ伍】

作:アンジュ・まじゅ

絵:越乃かん

 あゆみ先生だ。

 駆け寄ろうとして、みかの足がとまった。

 そういえばあの日。私と相原ちゃんの前にやって来たのは、あゆみ先生……ではなかったか。

 ぐるるるる、みかは全身の毛を逆立てた。目の前に居る「あゆみ先生」は、ニセモノだ。みかの中のナニカが、そう伝えた。……思い出したのだ。あの日、あったことを。


(見てて、相原ちゃん。私が、あゆみ先生の正体を明かしてあげる!)


 ……


「えっ、始祖とおおかみが?」

『ああ、間違いない。オリジンと配下のおおかみだ。……が、様子がおかしい』


 境内に、オリジンとおおかみがいる。社務所はおじいちゃんが結界を張り直してくれている。だからオリジンをこの距離──三十メートルほど──で見ても、ひとまずは安心だ。それに、オリジンはおおかみ達のオリジナルだ。それ自体不思議なことではない。

 が、ベルが様子がおかしいと言う。

 ゆうは、気配を消して社務所の窓からそーっと覗き込んだ。

 あゆみ先生だ。小さい身長に、おっきな胸。みんなのアイドルだ。遠くからでも識別できる。

 そして相対するようにゆう達に背中を向ける形で、一頭の──比較的小柄な──おおかみがあゆみ先生を向いている。……威嚇をしているように、見える。


『あのおおかみは……!』

「みかだ」


 ゆうも新月の目を持っている。ベルより早く判別した。ゆうはかけだそうとする。


『待て、愛しいきみ。まだ結界の中にいるんだ……どうして敵対しているのか、確認してからでも遅くないはずだ』


『勇敢なのと向う見ずとは、違うよ』


 おじいちゃんの言葉が、よみがえった。


 ……


「あらあ、みかさん。そんなに怒って。先生なにか、したかしらあ?」

「先生、私思い出しました」

「ふふふ、『なんだっけ』は、なしよ?」

「きちんと覚えてます。ひと月前。先生は相原ちゃんをはじき飛ばして、私にかみついて、おおかみにしたんです! 祭の時、私は肉を食べなかったから」

「あらあら、よく覚えてるわねえ。みかさんらしくないわ」

「それからずっと、私に思い出さないようにした!」

「……それで……みかさんはどうしたいのかしら」

「相原ちゃんに言います。それで、先生をやっつけてもらいます」

「あらあ、残念だけどゆうくんじゃあ私に勝てないわ。……それに、そういうの」


 とん、と先生はみかとの十メートルを、いっしゅんでつめた。


「なんていうか知ってる?」

「あ」

「身の程を弁えない……っていうの」

挿絵(By みてみん)

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