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3. 顔をうずめて匂いをかがれてしまった

よろしくお願いします。


「もう仕事辞めたい。どうして皆続けられるんだろう。神殿で治療する患者の気持ちも家族の気持ちも、どっちもよく分かる。どんなに頑張っても恨まれることもある。こんな重大な判断をしていかなければいけないなんて。俺には重すぎて辛すぎるんだ」


 ……突然重い相談がきました。これは確かに、神殿の方達には聞かせられないです。神殿の客間で、私達はリンデン様の悩みを聞いています。人に話すだけでも、気持ちの整理に役立つといいます。私は慎重に、話を遮らないように、否定的な言葉を言わないように気をつけて聴きました。

 リンデン様は神官長の長男というお立場から、お父上について人の生き死にの現場に着いていくことがあったそうです。助けられることばかりではなく、辛い決断を迫られることも多い現場だとか。どんな時も最善を目指して決断をされるお父上を尊敬されたそうです。そして、自分には無理だと思い悩んでいるそうです。

 リンデン様は、ブラックフェンリルちゃんを撫で撫でしながら、一息つかれました。


「それにしても、癒されるな」

「動物との触れ合いは、心癒されます。動物が苦手でなければですが。そうですね……患者のお世話をする所に、癒しを与える動物を置いてみるのはどうですか。もちろん動物の世話をする者もつけて」

「患者や家族の気持ちを癒すためか」

「ええ。それに患者やご家族に対して、いろいろな問題を相談して対処を行い、苦しみを予防し和らげて生活の質を改善する部署を始めてはどうでしょうか」

「治療だけでなく、相談や対処を専門に担当する部署を作るのか。いいですね! 父上に相談してみます! 俺はそれをやりたいと思う」

「よかったです。お気持ちが少し軽くなられましたか」

「ええ。ずっと悩んでいました。患者や家族の苦しみを緩和する。そして動物と触れ合い癒される。素晴らしいアイデアです。ありがとうございます。……今さらですが、残念なことをしました」

「どうされましたか?」

「ローレンス様との婚約破棄です。貴女達が眠っている間に、神殿で手続きが行われてしまった。婚約と結婚は女神ヘメレー様に誓うものです。もっと早くに貴女と話をすればよかった」

「……いいえ。私に皇太子妃は無理だったのです」


 人前で嫉妬に狂って魔力のコントロールを失うなど、あってはならないことなのだから。生まれた時から、家庭教師達の中で育ってきた。殿下には、いつも冷めた目をされていた。私を見てもらいたくて、認めてもらいたくて頑張ってきたけれど、無駄だったんだ。


「そうですか……。それならこの事件が解決したら、俺の始める部署を手伝っていただけませんか」

「……えっ? それはどういう……」

「義姉さんは、うちにずっと居ればいいから。ずっとゆっくり休んでればいいよ」

「……そうだね……」


 エルウッドは、やっぱり私から目を背けて力強く言い切りました。きっと傷物の私が出歩いたら、家門の恥になると思ったんだろうな。私は哀しくて、うつむいてしまった。その時、金色の羽がたくさん降ってきたのです。祝福の鐘のような音が鳴り響きました。


「これは……?」

「女神様からの祝福です。文献で読んだことがあります。女神様の御心に叶うことがあると、こういう奇跡が起こると!」

「リンデンの悩みが解決されたから、心の闇が消えたということですか」

「なるほど! じゃあ次は、ダンジョン討伐と浄化を行えばいいんだね」


 リンデン様の悩みが解決されたことは嬉しいです。それにしても、何故危険なダンジョン討伐と浄化を放っておかれたのでしょうか。デイジー様は、優秀な魔法使いです。学園の成績でもトップクラスでした。我が国の騎士団も勇猛果敢だと聞きます。


「王都地下ダンジョンをクリアして、浄化しなければいけません。女神様の加護を使えるので、ダンジョンクリアできれば、私が浄化できると思います」

「僕は反対だ! デイジーの体に髪の毛一本の傷をつけることも許さない!」

 

 ……デイジー様の妨害をされていたのは、殿下でしたか。


「ローレンス様、義姉さんは僕が守ります。デイジー嬢の体には、髪の毛一本の傷もつけさせません。安心してください」

「俺もダンジョン討伐に行こう。ブラックフェンリルとデイジー嬢の体には傷一つつけさせない。約束しよう」

「2人がそう言うなら。分かった。僕も討伐に参加する。多少恐い思いをさせるかもしれませんが、リリー嬢なら大丈夫でしょう」


 よかった。ダンジョンクリアと浄化もできそうです。

 ふと見ると、リンデン様はがブラックフェンリルちゃんの背中に顔をうずめておられました。匂いを嗅いでおられるようです。スーハースーハーと音が聞こえてきました。ブラックフェンリルちゃんの表情は虚無になっています。リンデン様が満足された顔で離れると、ブラックフェンリルちゃんは一生懸命体を舐めてました。体についた匂いを舐めとっているのでしょう。……ごめんね!! いっぱい我慢させてしまいました!! 今日は大好物をお腹いっぱい食べさせてあげるね!!




読んでいただき、ありがとうございます!


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