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暴走聖女と魔術学園  作者: 今晩葉ミチル
様々な思惑
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もう一人の幹部

 ブライトが犯罪組織ドミネーションの動きを懸念する頃に。

 大陸の南に位置する国で大きな動きがあった。

 もともとは温和な人々が平和に暮らしていた国だった。もとの名前はブレス王国という。

 しかし、犯罪組織ドミネーションの襲撃を受けて滅ぼされてしまった。王家も王家を守る血族の大多数が命を落とし、国の有り様を保てなくなった。

 生き残った人々の中には、抵抗した人もいたが、強力な魔術師たちを相手に歯が立たなかった。

 現在は、犯罪組織ドミネーションの幹部である女の意のままに行動する人間だけが生き残っている。

 その女は、今日は金髪を結い上げたドレス姿をしている。ドレスは白を基調としているが、見る角度によって美しく色彩を変えるレースを掛けてある。そのため、女に動きがあるたびにドレスは色とりどりにきらめいた。

 女の肌は抜けるように白く、お人形さんのように整った顔立ちをしている。絶世の美女と言っても過言ではないが、どこか人を見下しているような冷酷な目付きをしている。

 女の名前はエリスという。

 エリスは気まぐれで綺麗好きである。気分を害する人間がいれば、すぐに魔術で殺してしまう事も珍しくない。

 本人は、特別な才能を持って生まれた人間の特権だと考えている。彼女と長く付き合うには、高度な魔術で身を守るか、心が読める必要があるだろう。


「今日はどんな奴隷が手に入るのかしら」


 王室の窓の傍に立ち、外を見ながら上品に微笑む。強制労働をさせられている人間たちを眺めるのが日課だ。

 王室には数人の使用人が配置されている。どの人間も緊張した面持ちであった。

 エリスの楽しみは目まぐるしく変わる。奴隷として買った人間を可愛がっていると思えば、急に虐待したりする。

 どの人間のどんな表情を見たいのか、その日のうちに変わる事もある。

「どんな人間が私に関われて幸せになれるのか、楽しみね」

 今のところは上機嫌である。

 そんな彼女が覗く窓に、白い小鳥が止まる。


「あらあら、神の啓示ね」


 神の啓示とは、犯罪組織ドミネーションのトップからのお知らせを意味する。何かと行動を求められる事が多い。

 エリスは小鳥を中に入れる。小鳥の両目は見開かれ、光る。虚空に映像が浮かび上がる。

 シェイドとセレネが、世界警察ワールド・ガードの護送用の馬車に乗せられる場面であった。

「ふふ……ふ、ふふふ」

 エリスは笑いがこみ上げて抑えられなかった。


「あの男がついに捕まったのね」


 映像は消える。小鳥は窓から飛び去った。

 エリスは突然に歩きだした。軽やかな足取りで、羽が生えているかのようだ。

「これからは私の好きにするわ」



 緊急を告げる大鐘が鳴り響き、大広場に人々が集められる。

 人々はどんな知らせが来るのかと怯えていた。大鐘による呼び出しの後は、ロクな事にならない。

 しかし人々は逆らえない。逆らえば命がないと長年刷り込まれている。

 そんな刷り込みを行った人物が人々の前に立った。

 エリスである。犯罪組織ドミネーションの幹部である。

 エリスはつややかな声を響かせる。

「あなたたちを呼んだのは、ドミネーションの存亡の掛かった一大事があったからよ。私たちの同胞であるシェイドとセレネが、世界警察ワールド・ガードの手に落ちたの」

 どよめきが起こる。嘆く人もいた。

 エリスは特に何も感じた様子もなく続ける。

「彼らが生きて帰る事は期待できない。でも、私たちは立ち向かわなければならないわ。ドミネーションの君臨する正常な世界のために」

 エリスは両手を青空に向けた。

「正しく美しい世界のために! 戦わなければならないの!」

 エリスが語調を強めた。

 呼応するように、人々は雄叫びをあげた。

「世界のために!」

「神のために!」

 雄叫びを耳にしながら、エリスはうっとりとした表情を浮かべた。

「ホーリー家も、ブレス王家の生き残りも滅ぼして、私の理想の世界を作るわ」

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