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暴走聖女と魔術学園  作者: 今晩葉ミチル
様々な思惑
53/112

連行

 世界警察ワールド・ガードの雰囲気は緊迫していた。

 第一級の犯罪者シェイドとその腹心セレネを護送用の馬車で連行しているのだ。

 二人とも気を失っているし、魔力を封じられているが、油断ならない相手だ。

 世界警察の長官グランドは神妙な面持ちで髭をいじる。

「いつ目を覚まして牙をむくか」

 グランドはセレネを連行している馬車に乗っている。セレネが逃げ出したり暴れたりした時に、すぐに対応するためだ。馬の手綱は他のメンバーに任せて見張りに徹していた。

「憐れな女じゃ。悪夢の魔術師シェイドにほだされたばかりに道を踏み外してしまった。ドミネーションに属さなければ素晴らしい才能の持ち主として、世界中で尊敬されたじゃろうに」

 グランドはチラッと前を走る馬車を見る。

 そこにはブライトとシェイドが乗っている。


 ブライトは安堵の溜め息を吐いていた。

「まずは悲願の一つを達成かな」

 呟いて、シェイドに視線を移す。

 シェイドは横向きの体勢を取らされたまま意識を失っている。魔力封じの手枷をはめられたうえに、ブライトによる魔力封じも掛けられている。

 シェイドの首筋に浮かぶ小さな六芒星を見ながら、ブライトは微笑んだ。

「君も背負うものが多くて大変だったね。少しは休みなよ」

 返事はない。返事があったら、十文字槍を構えなければならない。魔術学園グローイングに通っていた時とは違う。長い間殺し合いをしてきた敵同士だ。情けや容赦を示してはならない。

 揺れる馬車に身を任せながら、油断なく見張る。

 ふと、馬の悲鳴が聞こえたと思えば、馬車が止まる。

 続いて轟音が響き渡る。

 ブライトが外を確認すると、馬車の目の前で地割れが起きていた。地割れから地獄の業火が噴き出している。

「シェイドの一味か。シェイドとセレネの身柄を取り戻しに来たのか」

 ブライトは馬車から降りて十文字槍を構えた。

「セイクレド・ライト、ブリリアント・スピア」

「フィジカル・アディション、パワー・チャージ、スピード・アップ」

 十文字槍が光ると同時に、ブライトの身体が茶色い燐光を帯びる。グランドがブライトを強化する魔術を放っていたのだ。

 ブライトは大地を蹴り、地割れに向かう。

 世界警察の面々がそれぞれ炎を消す魔術、ブライトの魔力を高める魔術を放っていた。

 地割れを飛び越えた先には案の定、二人の男がいた。

「ブライトが来たー!」

「シェイド様たちを救えないなら、美味しいものを食べておくんだったー!」

 赤髪の男も黒髪の男も、悲鳴をあげて逃げ出そうとする。

 ストリーム村に向かう時にも襲撃してきた二人だ。

 そんな二人の動きを、ブライトはしっかりと捉えていた。

「今度は逃がさないよ。セイクレド・ライト、シャイニング・ゴッド」

 まばゆい光が二人の男を包む。シャイニング・ゴッドは、まぶしいだけでなく、相手の魔力や気力を根こそぎ奪う。

 光が消える頃には、二人の男は目を回して地面に座り込んでいた。

 ブライトは冷酷な眼差しで言い放つ。

「君たちも連行するよ」

 二人に魔力封じの手枷を付ける。念のために、ブライトの魔術による魔力封じも行った。

 ブライトは天に向けて息を吐いた。

「彼らをここで止められて良かった」

 しかし懸念もある。

 二人の男が護送用の馬車に襲撃を掛けた理由は、シェイドが囚われたと分かったからだろう。

「犯罪組織ドミネーションのトップのジェノと、もう一人の幹部のエリスが何もしないとは考えづらい……」

 犯罪組織ドミネーションには強力な魔術師が多い。手段を選ばない人間だっている。

「魔術学園グローイングの防衛に力を入れた方がいいだろうね」

 ブライトは十文字槍を握る手に力をこめながら、護送用の馬車に乗り込んだ。

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