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暴走聖女と魔術学園  作者: 今晩葉ミチル
ストリーム村
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争ってほしくない

 風雨が止む気配はなく、雷は落ちる。天から光は来ず、大地は砕かれる。

 漆黒の嵐は畏怖を覚えさせる。

 しかし、フレアは声を張り上げる。吹き飛ばされそうになりながら、倒木に捕まって両足を踏ん張っていた。

「もう勝負はついているわ。これ以上の戦いに意味は無いと思うし、お互いに良くないわ!」

 フレアは必死だった。

 クロスや世界警察ワールド・ガードの面々の多くが戦闘不能に陥っている。怪我の状態が分からない人間も多い。一刻も早く助け出したかった。

「傷つけあうのはこれで終わりにしようよ!」

 フレアは真剣な眼差しをシェイドとセレネに向ける。

 そんなフレアを、二人ともせせら笑っていた。

 耳を澄ましていなければ、漆黒の嵐に紛れてしまいそうな笑い声であった。

 シェイドが心底愉快そうに両目を細める。

「先に仕掛けたのはこっちじゃねぇよ。もっと言えばあんたが魔術を暴走させたのもいい事じゃねぇよな」

 指摘されて、フレアはどもった。

 フレアの魔術が暴走して、ストリーム村を危険に晒したし、小屋の屋根を吹き飛ばしたのは事実だ。

「魔術を暴走させたのはごめんなさい。止めてくれた事に感謝するわ。お礼はしたつもりだけど、足りなかったよね」

「あんたがエリクサーを作ってくれたのは良かったと思うぜ。おかげでセレネが助かった」

 セレネはムッとした表情を浮かべたが、シェイドに頭をポンッと軽く叩かれて、口を開く。

「……シェイド様を苦しめたブレス王家は大嫌いですが、命を救われた事に変わりありませんね」

 視線をそらしながら言っていた。

 不器用だが、お礼を言っていたのだろう。

 そう察して、フレアに笑顔が浮かんだ。

「私はあなたの言葉に救われたわ。他に目的があったとしても、あなたは優しい人よ。殺し合うのはやめましょう」

「ドミネーションに尽くすと言わなかったうえに、仲間入りを告げても受け入れなかった時点で、あなたは敵です。ブレス王家の生き残りという時点で罪深い存在なのに、償う気も無いのですね」

 セレネの頑なな態度に、フレアは困り果てた。

「私にブレス王家という実感は無いのだけど……悪い事をしていたのなら、謝るわ」

 フレアが頭を下げようとすると、シェイドが大笑いして片手で制止のポーズを取った。

「いらねぇよ、あんたが謝った所で俺の気が晴れない。どうせ何も知らないだろ?」

「ごめんなさい……何も聞かされてないし、調べる事もしなかったわ」

「謝る必要は無いと言ったばかりだぜ。俺はもう、あんたを責めるつもりはねぇよ。けどよ、他の連中を納得させるために、敵対する意思がないと証明してほしいぜ」

 シェイドが怪しく笑う。

 フレアは大粒の唾を飲み込んで、溜め息を吐いた。


「ドミネーションの仲間になればいいの?」


「そうしてもらうか。セレネもいいな?」


 シェイドに問いかけられて、セレネは頷いた。

「シェイド様が良いのなら、私から口を挟む事はありません」

「……ダメだ、フレア。騙されるな、考えろ」

 うめくような、つぶれた声が聞こえた。

 クロスだった。シェイドの魔術に囚われたままだ。呼吸は細く、大粒の汗を流している。

 しかし、クロスは言葉を続ける。


「シェイドの冷酷さと、ブライトさんが受けた仕打ちを思い出してほしい。犯罪組織ドミネーションのせいで、略奪、人身売買、虐殺が加速している」


 フレアはハッとした。

 迷宮の戦いを思い出した。ブライトは殺される寸前だった。今ここでフレアが犯罪組織ドミネーションの仲間になったら、ブライトが傷つくのを容認するという事だ。

 しかし、ストリーム村の人たちは間違いなくシェイドたちに救われている。村人に尊敬されるのにふさわしい言動こそがシェイドたちの本性の表れなのか、ごく一部の活動にすぎなのかは、フレアには分からない。

 いずれにせよ、世界警察ワールド・ガードとは相いれないだろう。

 決して受け入れられないもの同士だ。しかし、どちらの立場も一定の理解はできる。

 フレアは唇を噛んだ。

 解決策が思いつかない。


「……争ってほしくないわ」


 理想を口にするのが精一杯であった。

 セレネは溜め息を吐く。


「こんなどっちつかずの人なんて、居ても居なくても同じだと思います」


 フレアはショックを隠せないでいた。

 居ても居なくても同じ。

 思ってもみなかった暴言を言われて、何も言えずにうつむく。

 フレアは涙をこらえるのに精いっぱいだ。

 そんな時に、場違いな高笑いが聞こえだす。


「この私の友達を侮辱するなんて、許しませんわ! フラワー・マジック、フォレスト・マーチ」


 無駄にこだまする高笑いに応じるように、倒れていた木々がうごめきだす。

 奇怪な現象が起きていた。

 木々がひとりでに起き上がり、根を伸ばし、幾つもの足のように動かした。木々が一歩進むごとに、根は地面に突き刺さり、破壊音を響かせる。

 蔦が不自然にうねり、勢いよくクロスを引っ張り上げて、フレアのそばに乱暴に落とした。

 木々は漆黒の嵐を悠然と進んでいく。風雨に阻まれても、雷が落ちてきても、歩みを止める事は無い。

 シェイドは舌打ちをした。

「ローズ・クォーツか。めんどくせぇ奴が来たぜ」

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