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暴走聖女と魔術学園  作者: 今晩葉ミチル
新たな動き
24/112

打開策

 学園長室は物々しい雰囲気になっていた。

 学園長のグリームが分厚い白い髭をいじって歯ぎしりをしていた。悩んでいる時の癖が出ているし、傍目でイラついているのが分かる。

「もはや一刻の猶予もないというのに……」

 窓の外を見ながら、グリームは苦々しく呟いた。魔術学園グローイングを一望しながら思案していた。

 ブレス王家の生き残りがいる事が犯罪組織ドミネーションに知られた挙句に、世界警察ワールド・ガードのエースであるブライトが戦闘不能に陥っている。冷静になるべきだと頭では分かっていても、焦りにかられてしまう。

 そんなグリームの心情を悟ってか、グランドは豪快な笑いを控えていた。


「お主も大変じゃのぅ」


「これからもっと大変な事になるだろう。しかし、まともに備える事ができぬのだ」


 犯罪組織ドミネーションの動きは神出鬼没だ。組織内の魔術師に力量の差があるのは分かっているが、今回のように突然幹部が動く事がある。

 未知の恐怖。

 これが犯罪組織ドミネーションの最も恐ろしい部分だ。対策をたてようがない。

「魔術学園グローイング崩壊の危機と言っても過言ではない」

 グリームの言葉に、グランドは頷いた。

「そうじゃのぅ。打開策を考えてみたが、効果があるかは分からぬのぅ」

「打開策じゃと?」

 グリームがグランドに視線を移す。両目が希望で光っている。藁にもすがる想いなのだろう。

「すぐに聞かせてくれ」

「情報を集めるのじゃよ。これまで儂らは情報が集まらないせいで踊らされていた。相手の事が全く分からないから対策の打ちようが無かったのじゃ」

 グランドの話を、グリームは何度も頷きながら聞いていた。

 グランドは続ける。

「残念ながら世界警察ワールド・ガードの信頼は地に落ちている。そこで、儂らとは関わりのない人間が情報収集にあたる事を提案する」

「例えば誰じゃ?」

 薄々感づいているが、グリームはあえて尋ねた。思い込みにより齟齬が生まれるのを避けたい。

 グランドは一呼吸置いてからゆっくりと答える。

「クロスとフレアじゃ」

「クロスは分かるが、フレアも?」

 グリームは意表を突かれた。

 一方で、グランドは当然のように頷いた。


「クロスは元ドミネーションのエージェントじゃ。おそらく情報収集は得意じゃろう。フレアはクロスと行動を共にする必要がある。ブライトが動けない今は、彼女の暴走を抑えられるのはおそらくクロスだけだからのぅ」


「なるほど」


 グリームは真顔で頷いた。

 フレアの数々の破壊活動は痛いほど耳に入っている。

「いいじゃろう。イーグルに二人をここに呼んでもらおう。念入りに作戦を話し合ってくれ」

「学園長室に呼び出しなんてやったら目立ってしまう。二人は保健室で待機しているから、そこで話しておく。内容は後で必ず報告するから待っていてくれ」

「部外者に聞かれないか?」

 保健室はどんな教師や生徒にも開放されている。

 グリームの懸念は最もだ。

 しかし、グランドはニヤリと口の端を上げて、巨大なハンマーを軽々と振ってみせた。

「誰かに聞かれそうになったら、長年の経験で悟ってみせる。心配するな」

「分かった。任せるぞ」

 グリームは髭から手を放した。迷いが消えて、信用する事にしたのだ。

 グランドは親指を立てて学園長室を歩き去った。彼が歩くたびにズシンズシンと振動していた。

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