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暴走聖女と魔術学園  作者: 今晩葉ミチル
魔術学園グローイング
12/112

闇に紛れる者

 学園長室でグリームは溜め息を吐いた。

 グリームは魔術学園グローイングの学園長である。学園最高の魔術師と謳われ、別格の扱いを受けてきた。

 そんなグリームは分厚い白髭をいじりながら思案していた。


「……フレアの力が大きすぎるな」


 フレアに関して幾つもの報告があがっていた。

 教室の天井に穴をあけ、森の一部を焦がし、実習室の床や壁やテーブルも破壊したという。

 さらに練習場にクレーターを作った。

 たぐいまれなる才能と言って誤魔化すのに限界がある。教師陣はもちろん、生徒たちの間で噂になっているという。

「知られるのは時間の問題か?」

 グリームは自分の呟きに対して、首を横に振る。

「フレアの事を知られれば犯罪組織ドミネーションの動きが活発化してしまう。何としてでも隠さなければならぬ」

 窓の外を見る。月と星が輝き、夜の学園を照らしている。

 グリームは自らを鼓舞するように、一人で語る。


「知られてはならぬのだ。ブレス王家の生き残りがいるという事実を」


 この時に、グリームは気づいていなかった。


 窓の外で、黒い鳥が闇に紛れていた事を。

 その鳥がとある魔術師の元へ情報を持ち帰っていた事を。


 黒い鳥は、今日も予め命令された場所へ飛んでいく。

 魔術学園からさほど遠くない山の中腹に洞窟がある。入口は蔦や木々に覆われて、気づかずに通りすぎる人間がほとんどだ。

 黒い鳥は迷いなく蔦をクチバシで払い、洞窟の中に入っていく。

 洞窟の奥には、一人の男があぐらをかいていた。長身の痩せた男で、長さのそろわない銀髪を生やしている。肩より上の部分も、腰まで伸びる部分も、秩序なく入り混じっている。

 ボロボロの黒いローブには、よく見れば血の跡がある。あまり丁寧に洗っていないのだろう。

 男の名前はシェイドといい、悪夢の魔術師と呼ばれる。世界警察ワールド・ガードにも、犯罪組織ドミネーションの中でも恐れられていた。

 シェイドは半笑いを浮かべて人差し指を伸ばす。

「おかえり。面白い情報はあるか?」

 黒い鳥が言葉を返さないのは知っている。そんな余計な能力は付けていない。

 黒い鳥はシェイドの指にとまり、両目を見開いた。

 虚空に映像が映し出される。学園長室で、グリームが独り言を呟いていた。


 シェイドは愉快そうに両目を細める。


「ブレス王家の生き残りか……」


 映像を映し終えると、黒い鳥はクチバシと尾をくっつけて円を描く。そして虚空に吸い込まれるように、ひとりでに消えた。

 シェイドは含み笑いを浮かべて立ち上がった。

「カリキュラムが変わっていなければ、明日は迷宮探索のはずだ。クロスもいるみたいだし、楽しみだぜ」

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