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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

私はハクア

作者: HaKuA
掲載日:2022/10/11

私はハクア。

私はハクア以外の何者でもない。

「ハクア~どこにいくの?」

この人はクロテン。

クロテン以外の何者でもない。

その声はどこか懐かしく、温かい。

私はクロテンの質問など気に取らず手を引っ張ったまま、歩き続けた。

道は荒れ狂い、空は赤く、かつて栄えてたであろう街の残骸が続く。

「ねぇ。クロ。ここって何なんだと思う?」

私はクロテンの事をクロと呼んでいる。

猫っぽくてかわいいからだ。

「昔、獣が作ったって聞いてるけど?」

「獣?」

「ハクア、ほんとに覚えてないのか?」

「私は、私じゃないの?」

「あ・・・、いや。お前はお前だ」

クロは少し戸惑っているようだった。

そうなのだ。

私はここ最近いや、生まれてからの私の事を思い出せないのだ。

 私はハクアそれ以外の何者でもない。

私たちは歩き続けた。

1日中歩いた。

その間、クロは忙しそうだった。

周りの人たちがどっきりプレゼントをたくさんくれていたからだ。

子供たちからは爆発する弁当箱。

大人たちからは歓声と打ち上げ花火。

こんなに近くで見れる花火は他にはない。

うってつけにはあちらこちらで花火が上がっている。

「たのしそうね」

「お前マジで言いてるのか?」

「え?」

「こいつらが、獣だぞ」

「けもの?人じゃないの?」

「人?もうそんな呼び方してるやついないって」

「どうして?」

「昨日、人は死んだんだよ」」

「意味わかんない」

「昨日、俺たちは殺されかけたんだよ。人に」

「私たちが?どうして?」

「あーーー」

クロは話すのが嫌そうだった。

「俺たちが人じゃないから」

「あ、たしかに。私はハクアだし。あなたはクロテンだもんね」

「違う。そういう意味じゃない」

「じゃあ、どういう意味?」

「お前は…」

「はい!」

「お前は、悪魔なんだよ」

 その後も、クロはいろんな事を教えてくれた。

私たちは、人ではないこと。

さっきもらった声援は、怒号や悲鳴と呼ぶこと。

爆発する弁当箱や人の近くで見る花火などないこと。

そして、私は白悪、クロは黒天であること。

意味は白き悪魔、黒き天使どちらも人がつけた名前だということ。

私とクロで世界を滅ぼせるということ。

ほんとにいろんな事を知った。

でも、私はほとんど信じていない。

というより、理解ができない。

「ありがとう。クロ。私を守ってくれてるんだね」

「違うんだ。俺はお前を、殺さないといけなかったんだ。でも、できなかった」

「今ならどう?できるんじゃない?私、いろいろ知ったら自分が怖くなっちゃった。私独りぼっちだし、必要とされてないし、何なら死んだ方がましだと思われてる。そんな自分嫌だ。・・・殺して…」

「無理だ。無抵抗の相手を殺すことなんてできるわけがない」

「じゃあ、あそこの獣ころす!」

落ちている、がれきを手に取り、獣の方へと走った。

すぐにクロが私の前に立ちはだかる。

「やめろ、お前が近づくだけで獣は死んでしまう」

クロの背中の後ろで、また、声援が聞こえた。

「これは、嗚咽だ。お前は、白悪だ。獣におそれられた生き物だ。それにはそれなりの理由がある」

「ころして」

私は、もう、どうでもよくなっていた。

自分が何者であるか。

人とは何なのか。

獣とは何なのか。

滅ぼすとは、悪魔とは、天使とは、白、黒…。

「殺せよ!なんなんだよ!わたしはよ!」

「落ち着け」

クロは私の肩を持った。

「はなせよ!私は一人なんだ。一人ぼっちなんだ。誰からも愛されることもない、それどころか全世界からの嫌われ者だ。なんなんだよ。私が何をしたって言うんだ。存在するだけで、人を殺し、動物を殺し、街が壊れ、木々は焼け落ち、空は濁り、地は荒れ狂う。私がいるだけで世界は終わる。クロ、二人がいたら世界を滅ぼすんじゃないんだろ?お前が、私を…私を止めなければ、殺さなければ世界が滅ぶ、そういう事なんだろ。」

クロは黙ったまま、話そうとはしない

「お前、なんで、黙ってんだよ!」

「白悪、少し、思い出してきただろ?」

「あ?」

「いま、お前は黒く見える」

私の体は白かった。髪も、服もすべてが白かった。

今は、違う。すべてが黒かった。

目の前まで真っ暗で、黒かった。

「ごめん。ハクア。お前のいれる世界を作ってあげたかった。世界が滅べば、二人でいればずっと一緒にいれると思っていた。ごめん。でも、独りぼっちはつらいよな。みんなから嫌われるのはつらいよな。ごめん。最後までお前の事悪者にして。でもありがとう。ハクアといられた日々は楽しかった。」

 私はハクア、それ以外の何者でもない。

世界から見た私は、悪魔だった。

それでも、私は私。

私はハクア。

私は私の道を歩く。

死ぬ時も私が決める。

世界には選ばせない。

私が一人だと思ったら一人なんだ。

私が嫌だと思ったら嫌なんだ。

私が幸せだと思えば幸せなんだ。

でも、ほんとはまだ世界を知りたかった。きれいな街を見たかった。

きれいな空を、人を、笑顔を、歓声を、きれいな花火も見たかったなぁ。


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