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罠師、獲物と対峙する

 ここ最近は健康的に昼前に起きるようにしてるけど、元ニート舐めるな。

 オンオフ問わず、徹夜でのゲームなんて日常茶飯事だったぜ。


 上に軽く1枚羽織れば夜中に外でそのまま眠れるくらいの心地よい季節。

 でも失敗した。懐中電灯持って来るべきだった。

 もっとも家に懐中電灯なんかないけどね。

 住んでる家の近くは夜でも街灯はあるし、家々やお店の明かりもついてるしで困ることがなかったけど、ここは田舎だからか周りが畑しかないからか街灯とかがなく真っ暗だ。

 まだ陽が落ちて数時間だというのに、月や星明りだけが救いだよ。


 暗い中で夕食にと家から持ってきていたおにぎりを食べ、お茶を飲む。

 あー、暇だ。

 携帯ゲーム機でも持ってくればよかった。

 任○堂DSしか持ってないけどね。

 電車乗るとみんなが眺めてるスマホなんかも家に篭って連絡取りたい友達もほとんどいないニートには必要なかったので持ってない。


「おっ!」


 土がモコっと盛り上がったと思ったら、モコモコモコって盛り上がりが一直線に進んでいく。


「モグー!!」


 罠にかかったか!?


 あそこにはバケツで作った罠が仕掛けられているはず。

 通路の通り道に仕掛けられた罠は中に入ると入り口が閉まって出られなくなる仕組みだ。


 ガタガタガタザシュッ


 ブリキバケツの中で暴れているようで、土中から音が聞こえる。


 掘り出せばいいのか?

 モグラは半日も放置すれば餓死してしまうっていうし、放置が正解か?

 でも、あの暴れ方だと罠が壊れてしまうかもしれない。


「えぇぇい!」


 軍手をはめて、手で地面を掘り返す。

 柔らかい土だし、罠を埋めてそれほど時間も経っていないので容易に土を掻き分けることができる。

 すぐに銀色をしたバケツが土の中から顔をだすが、中で暴れてるようでガタガタ揺れている。

 バケツには筋が見えるが、なんだろう。


 ザシュッ


 音と共に線が増える。


「えっ、穴が開いた?」


 切り裂かれたと思われる穴を暗い中よく見ようと顔を近づけると、キラリと光る丸いものが中に見えた。


「う、うそ……モグラと……目が合った」


 前傾姿勢だった構えが後ろにのけ反り、尻餅をついてしまった。

 いや、腰が抜けたとか腰砕けになったというべきか。

 腰や足に力を入れることができない。まるで自分のものとは思えない。

 地面についた手や上半身は動くのにいったいどういうことなんだ。


 ザシュザシュッ、ガンガン、ギギィィー


 長い筋がいくつも走り、中から罠を破ろうとしているのか嫌な音が聞こえる。

 線のような穴はどんどん幅が広がっていく。何か尖ったものが時々穴に出たり入ったりしている、その尖ったもので穴を押し広げようとしているみたいだ。

 とうとう突き破って出てきたその尖ったものは鼻だった。

 いや円錐状で角のようにも見える。

 こじ開けられた穴は徐々に広がり、今では頭部が外へと出てこちらを光る目で睨んでいる。


「ギュイィィィー」


 その頭部に幅広の四角く薄いものが上から叩きつけられる。

 それも、二度三度と繰り返される。


 頬に何かぬるっとしたものが飛んできたが、それよりもなんだ?

 力の入らない下半身はそのままに、首だけで後ろを振り返る。

 そこにはこのモグラ退治の依頼主で、この畑の持ち主のガジールさんが鍬を構えて立っていた。


「あんちゃん、大丈夫だか。こいつらは追い詰められると凶暴になるだからな」


「あ、あぁ、ガジールさんですか。どうもありがとうございます、助かりました。モグラがこんなに恐ろしいなんて思いもしなかった……」


「モギュゥゥー」


 目の前の罠とは違う場所から悲鳴のような鳴き声が聞こえた。

 別の罠にかかったのがいるみたいだ。

 中には即死級の罠なんてのも仕掛けたから、それかもしれない。

 死んでくれるなら手間が省けるというか、助かる。

 直接対峙して退治なんて真似はちょっと厳しい。


「あんちゃん、モグラを見るのは初めてだか?」


「は、はひ。この前お隣の畑に罠を仕掛けたのが罠猟の初めてで、獲物がかかったのか見に来たら既に片付けられた後だったので、モグラを見るのも初めてです」


 鍬を手にした農家のおじさん。ガジールさんがとっても頼もしく見える。

 その鍬で器用に掘り返し、ブリキのバケツは完全に土から出てきた。

 裂け目から頭を出していたモグラは叩き潰され、中に押し込まれてしまっていて、外からはよく見えない。

 心臓はまだばくばくいってるし、夜闇の中ぐろいのが目に映らないのは幸いかもしれない。


「よかったら、うちさ寄っていかねだか。二匹も退治したことだし、今日のとこは上々だべ」


「あ、ありがとうございます。寄らせていただきます」


 こんなとこには居たくない。モグラもだがバケツも見たくない。

 ガジールさんの言葉に甘えて、家に寄らせてもらった。

 木造の貧相な建物だったが、それほど気にはならない。

 今は誰かと一緒にいられることがとてもありがたい。


「モグラってあんなに凶暴なんて知りませんでした」


「あぁ、あれはスラッシュモールって畑のやっかいものだでよ」


「スラッシュモールですか」


 モグラの正式名称や特徴をガジールさんから色々と教えてもらった。





獲物レポート


スラッシュモール 土の中で生活しているため、視力は弱いが嗅覚は鋭い。

          地中の生き物を餌としている肉食であり草木やその根を食べるということはない。

          驚いた場合などは凶暴になり、自身より大きな敵にも向かっていくことがある。

          大きさは大きいものでは人族の成人男性の腕くらいに成長する。

          (ちなみにここで出たのは前腕(50センチ無い)程度)

          前足の真ん中の爪がとても鋭く、加工してナイフとして利用される。

          肉は少し臭みがあるが畑から獲れる肉として食用にもなる。


モグラは鳴くことはありますが、当然モグーなんて鳴きません。ここで出たのはモグラ型の魔物ですのであしからず。

ここでは罠で簡単に捕まえていますが、罠は仕掛ける場所が大事ですし、動物にも警戒心はありますしで容易に捕まえることはできません。

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